07

*


昨日に引き続き、先行書類の出来上がったことを電話すると、またしても紅林さんが取りに来た。

大島さん、どうしたんだろう?


紅林さんはというと、相変わらずの無表情。

だけど会話をするときはきちんと目を見て話す。

真面目な人なのかなという印象。

意思の強そうな鋭い目付き。

決して睨んでいるわけではない、ただ凛とした、その目に吸い込まれてしまいそうだ。


書類を持って帰ろうとする紅林さんを、思わず呼び止める。


「あのっ、大島さんどうかしたんですか?」


私の言葉に、紅林さんはピクリと眉を動かした。

怪訝な表情にさえ見える。

あれ、これ聞いちゃいけなかったかな?

そう思って、慌てて言い訳のようなことを言って取り繕う。


「いえっ、いつも取りに来られるのが大島さんだったので、どうしたのかなーと思って。」


「…大島はインフルエンザで休んでいるんだ。」


「えっこの時季に?大変ですね。」


冬でもないのにまさかのインフルエンザ。

大島さん、どこで貰ってきたんだろ?


紅林さんは帰ろうとしていた体をしっかり私の方に戻すと、言った。


「だから今週は俺が取りに来るよ。」


マジですかー!

驚きと喜びがぶわっと押し寄せてきたけど、ここではしゃいだら変な子に思われてしまうのでぐっと我慢。

至って平静を装いつつ返事をする。


「わかりました。お待ちしてますね。」


平静を装ったつもりだったけど、完全に顔は嬉しさでいっぱいのニコニコ顔になっていたと思う。

そんな私に、紅林さんは少しだけ表情を緩めてくれる。


「ありがとう。」


いつもの電話越しの優しい口調で。

そう言って、図面管理課を出ていった。

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