十二章 「魔法」

 町はイルミネーションが華やかで、すっかり冬になってきた。

 僕は君を夜景が綺麗に見える小さな丘に呼んだ。

 沈みかけの太陽は赤々と光り輝いている。

 君はグレーのニットにロングスカートという姿で、いつもより大人びて見えた。

 まず僕はありがとうと言った。

 今まで僕が生きてこれたのは、君がいたから君が助けてくれたからだ。

 そして、「僕が君を幸せにします。これから先もずっとそばにいさせてください」とプロポーズした。

 君と幸せについて色々話したり考えた。

 でも幸せはまだわからないところがある。

 けれど、君のそばで君を見届けているとそれがわかるかもしれない。

 不幸になりそうなら、全力で僕が救い出す。

 幸せが行き止まりではなく、道の途中であると君に教えたい。

 君に幸せを与えたい。

 思いの丈を伝えた。

 上手には喋れなかった。でも一言だけじゃ伝わらないことがあるから。伝わらなければ、心には届かない。僕は自分の思いを全部伝えたかった。

 君は「はい、よろしくお願いします」と涙を流しながらうなづいてくれた。

 その涙は今まで見たどんなものより綺麗だった。



 優しさという魔法にかかっていたのは君じゃなく、僕だったんだ。

 魔法にかかった僕は幸せな気分になれた。

 ありがとう。今度はあなたに魔法をかけるよ。


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優しさという魔法をあなたに 桃口 優/光を見つけた作家 @momoguti

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