とある蝸牛の野望

BrokenWing

第1話 とある蝸牛の野望

       とある蝸牛の野望



 森への小道、そろそろ陽も落ちようかという時間、一枚の葉の上で、一匹のカタツムリが考え込んでいました。


「あ~、なんで俺、もてねぇんだろ? そうだ! 俺が地味だからいけねぇんだ! 目立てば、きっと相手から俺を見つけて言い寄ってくるはずだよな?! あ~、繁殖行為してぇ~っ!」


 ちなみに、そのカタツムリが乗っている葉っぱはとっても不味いので、他のカタツムリは絶対に来ませんが、そこは突っ込まないでおいてあげましょう。彼の味覚が少しおかしいだけなのです。

 また、カタツムリは雌雄同体だったりしますが、そこも突っ込んではいけないですよ。


「そうだ! 一人で悩んでも仕方がねぇ! 誰かに聞いてみよ~っと!」


 彼は、早速相談相手を探す事にしました。


「おや、声がするかと思ったら、こんなところにカタツムリかい? そんな不味そうな葉の上で、何を一人吠えているんだい?」


 カタツムリが振り返ると、そこには、七色に光り輝く玉虫が居ました。


「お、チョベリグなタイミングじゃん! お~い、そこの玉虫君、ちびっと、相談に乗ってちょ」

「何か、途端に関わってはいけない気がして来たが、まあいい…か? それで、相談って?」


 カタツムリは玉虫に打ち明けます。


「なるほど。もてたい、目立ちたい、××したいと。君、全ての雄の持っているごく普通の欲望を、さも特別な悩み事のように話すね~」

「ま、細かい事は言いっこなしだ。で、俺にできっかな?」


 玉虫は考え込みます。


(カタツムリ界のもてる基準とはなんだろう? 背中に乗っけている貝殻の大きさか? では、ナメクジの基準は?)


 玉虫の思考は余計な方向に走っていますが、真剣に考えてあげているようです。結構いい奴のようです。


(う~ん。僕は、もてるかどうかは分からないが、目立つ…とは思う。樹液争奪戦では、いつも真っ先にどかされるし。同族もすぐに目に付く。我思う、何故我々は目立つのだろうか?)


 哲学者に向いているのかもしれません。


 玉虫が考え込んでしまったので、カタツムリは待っている間、辺りをきょろきょろと見回し、他にも相談相手が居ないか探します。

 残念ながら新たなカモは見つかりせんでしたが、道端に、一枚の金貨が落ちているのを見つけました。


「お、なんかキラキラ光ってやがる! こいつが金貨って奴か?!」


 その言葉に玉虫が反応します。


「…ん? キラキラ光る…? そうか、分かったぞ! カタツムリ君、それだよ! その金貨を食べれば、きっと君も僕達のように光り輝くだろう! ひょっとしたら、僕以上に目立つかもしれない! もてて、××できるかは分からないけどね」

「よし! これを食えばいいんだな! よっしゃぁあ~っ! テンション上がって来たぜぇ~っ! 玉虫君、ありがとなぁ~っ!」


 早速カタツムリは金貨目指して、えっちらおっちらと這って行きます。


「まあ、美味しいかどうか以前に、食べられるかどうかも分からないけど、君なら出来そうな気がして来たよ。じゃあ、頑張ってくれ」


 玉虫は厄介な相談事から解放され、ぶぃ~んと飛び去って行きました。

 実は、割といい加減な奴でした。



 カタツムリは金貨の上に陣取り、気合でその金貨を食べます。


「なっ?! かってぇ~っ! だが、味は結構いけるじゃねぇか! そして、これももてる為のへの第一歩だ!」


 相変わらずこいつの味覚はおかしいようですが、根性だけは褒めてあげるべきでしょう。


 そこへ、一人の人間の子供が通りかかりました。


「うわ~、遊び過ぎた! 早く帰らないと、お母さんに叱られちゃうよ~」


 既に太陽は、赤く焼けた雲を残し、次の大地を照らしに去っていました。


「お、なんか光ってるぞ! わぉ! 金貨めっけ! でも、カタツムリ乗ってるし」


 暗くなりかける中、金貨の輝きは、カタツムリでかなり隠れてしまっているにも関わらず、子供の目を捕らえてしまったようです。


「お前、邪魔! ポイッ!」


 無邪気な子供は金貨を摘まみ上げ、無造作に、そこに乗っていたカタツムリを投げ捨てます。


「おわっ! てんめぇ~っ! 何しやがんだ! 目から星が飛んだぞ!」


 当然、カタツムリは怒り心頭、猛抗議しますが、子供は全く聞いていません。


「よし! この金貨でお母さんの機嫌を取ろう!」


 子供はスキップしながら小道を去って行きました。

 将来、大物になりそうです。



 取り残されたカタツムリはまだ怒っています。


「あのガキ、いつか、きっちりこの落とし前をつけてやる! よし! 俺はこれから、あいつの目から星を出す為にだけ生きてやる! しかし…、どうしたらいいんだ…? そうだ! また誰かに相談しよう!」


 次の犠牲者は誰でしょうか?

 そして、どうすれば彼の復讐が果たせるのでしょうか?

 後は、読者の皆様に丸投げします。


  ~~~~END~~~~~

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