第2話 本名

 歌い終わって、裏に下がった。

 普通だった。可もなく不可もない。

「お、最初に歌う人間さんだ」

 準備の人に遮られる。

「えっ」

「後でな」

 うそ。私よりも後に歌うの。最初に歌う人間じゃないじゃん。最後のほうに歌う人間じゃん。

 せっかくなので、脇にそれて歌を聴いていた。私を次の場所に連れていくはずのマネージャの先生は、なぜか来てない。

「うおお」

 良い曲だった。というより、人の曲なんてほとんど聴かないので、たまたま聴いて良いと思っただけなのかもしれない。

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