羨望

更楽茄子

羨望

ある日、金貨が星空を見上げながらつぶやいた。


「あぁ、私もアナタの様に輝けたらよいのに…私にできるのは精々人の輝きに便乗して光るくらいで…あぁ、私はあなたが羨ましい」


そんな金貨を見ながら、カタツムリがつぶやいた。


「人の輝きで光れるだけでもいいじゃないですか、そして固い。あなたの様な硬い殻があれば、私はもっと輝けるのに。私はあなたがとても羨ましい」


そんなカタツムリを見ながら、夜空の星がつぶやいた。


「そんな事はありません。こんな広大な空で私は一人、帰る家すらありません。いつでも帰れる家を背負ってるあなたほど羨ましい方はいません」



そんな3人を見ながら、子供が新たな遊びを思い付く。


全方位に輝く星の様を、目いっぱい開いた掌で表した。


硬い金貨の様を、固く握った拳で表した。


にょきっと飛び出たカタツムリの目を、拳から2本だけ立てた指で表した。



これが後のじゃんけんの起源になった…かどうかは、空で見ていた月だけが知っている。

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羨望 更楽茄子 @sshrngr

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