第7話 散策と獲物探し

木漏れ日に起こされ目が覚める。

「どうやら、日の登らない魔界と言う分けでは無かった様だな。まだ、油断はならんが」


昨夜は食事の後、環状列石に魔力を注いで結界を復活させ、その中で休む事にした。

暫くは、ここを拠点に周囲の探索と、魔法の訓練をする事にしよう。


「幸い此処ここには池も有る。飲み水の心配は無さそうだが、先ずは食料の確保だな。オルトロスの肉は未だ残ってはいるが、これだけでは何日も持たんな」


辺りを散策がてら、獣でも狩る事にする。

環状列石の周囲を調べ、獣道を探し出し分け入って行く。



一応、食えそうな山菜も探しながら進む。

だが、ワラビ一つ見つからん。

毒々しい色のキノコは見つかるのだがな……。


その他に見つかるのは、巨石だ。

明らかに人の手で加工された巨石が点々としている。

相当古く苔むしているが、中にはレリーフが掘られた跡の有る石まである。

ただし、劣化が激しく、何がえがかれているか分かりそうもない。


だが、人が居ると言う証拠だ。

もっとも、この巨石を加工した者達は既にこの世に居ないだろうし、その子孫が近くに残って居るとも限らんが……。

ともかく、少しは希望を持っても良さそうだな。


「そう言えば妙だな。獣の気配がまるで無い。まさか、この森にはあのオルトロス以外の獣が居らん、と言う分けでは有るまい」

知覚を研ぎ澄ませる。


今のワシは人では無い。

このケットシーの体に眠る獣の本能を呼び起こせ。


ん、獣の匂い!

向こうか。


足を忍ばせ、風下に回り込む様に、匂いの元へ向かう。

不快に感じられるほどの強い臭気。


潜む草むらの向こうに、ヤツの巨大な姿が見える。

アレは……熊か?

いや、只の熊ではない。

前足が二対ある。

後ろ脚と合わせれば六本の足を持っている。

大きさは、恐らく立てば、ワシの四倍近くはあるだろう。


鋭い牙と、血に飢えた目。

如何にも獰猛な面構えだな。


何か獲物を貪っている様だ。

この強い臭気はそのせいか。

この辺りに獣の気配が無いのも納得できる。


ヤツが貪っている獲物は既に原型を留めてはおらんが、やはりデカい。

大きなヘラジカの様な角が転がっておる。

ワシの知るヘラジカかどうかは怪しいが、似た様な生物なのだろう。


ん?

奴が、獲物の腹から取り出したアレは、魔力結晶。

だが、そんなものを取り出して如何どうする積り……。

喰らいおった!


獲物の魔力までをも取り込むと言う事か。

成るほど、正に弱肉強食だな。


さて、如何どうした物か……戦わず去るか、それとも一戦交えるか。


そうだな、此処ここはあの環状列石と、そう距離は離れてはおらん。

いわば、ヤツとワシの縄張りが重なっておると言う事だ。


ヤツと獲物を分け合う事は出来そうも無い。

仮に今、戦わず避けたとしても、いずれは……。

それに、ヤツはワシに気付いてはおらん。

奇襲が出来そうだな。


狩るか!

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