第3話 んもー!! あたしの青春を返してわなさー!!

「あたしの青春を返してわなさー!!」

 己の学業の行く末を悲観して、新子友花の渾身の……魂の叫び? 魔力開放で[マダンテ]連呼! あースッキリ!! 気分解消??


「お前、ちゃんとした日本語を使えよ。大美和さくら先生も、お前のそういう突発的な……情緒不安定的な国語力にビビっているんだぞ!」

 成績優秀で優等生の忍海勇太、すかさず渾身のツッコミを入れる。まるで、円月輪を装備した侍だ! アクセサリにリボンを付けても、強いから誰も文句無しか!?


「え? ほんと」


「ああ……」



 ――昼休みである。

 聖ジャンヌ・ブレアル学園の昼休みは、とても平和である。まあ、新子友花と忍海勇太の二人を除いてであるけれどね……。


 とりあえず、この二人のことは後に書くとして、まずは周囲を見渡してみよう――


 手入れが行き届いた学園内の花壇は、いつも花が満開である。

 見るとチューリップ。赤・白・黄色。どの花を見ても~。

 ……なんで初夏に、チューリップが咲いているのだろう? 

 ああそうか!

 たぶん、学園内のどこかにある温室栽培のハウスで育てているからなのだろう。この学園は広いから……どこにあるのかは……わからないけれど。


 花々に並列して、ベンチが設置してある――

 見渡すと、どこもかしこも花壇にベンチだ。ベンチ多いね。

 ……ああ、そうか。学園内は広いから、座る場所を定期的に設置しなきゃという、豊かな情緒を育むための学園の方針なのだ……たぶん。


 ベンチに女子二人が座って、膝の上にハンカチ、その上にお弁当を置いて、何やら楽しげな会話をしながらの昼食タイム。

 その隣のベンチでは女子数人がいて、ベンチを囲んで談笑してたり、……ん? 踊っていたり??

 更に彼女達の向かいにあるベンチでは、男子が一人で読書。

 ラノベを読みながら、売店で買ってきたサンドウィッチとコーヒー牛乳で昼食タイムをしている。


 すっかりと葉っぱの生い茂った桜の木――

 その大樹の下に設置してあるベンチでは……男子と女子が、お互いに視線を合わせようとせず…………お弁当を食べているぞ!


 彼氏と彼女の関係なのかな?



 ――そうそう、新子友花と忍海勇太の二人である。

 この二人も当然ベンチに座っている。

 昼休み、ランチタイムだからだね!


「だいたい、お前の青春って具体的に何なんだ?」

 忍海勇太が聞いた。


 落ち着いてベンチに座り、学園近くにあるコンビニで買った『特選・紀州梅おにぎり』を食べながら。

 ちなみに、『塩昆布おにぎり』と『ツナ和牛おにぎり』も買ってきている。

 んで、おにぎりをモグモグして、その合間に『微糖缶コーヒー』を飲んで……


(……おにぎりとコーヒーって、どういう組み合わせなんだ? 君は??)


「だから、あたしのことをさ、お前って言うな! 勇太!!」


 一方の新子友花はというと……見てみようか。

 忍海勇太とは真逆で、ベンチの上に立って……(立ってるぞ……)両手を腰にやって、……仁王立ちの姿だった。

(君は、御行儀が悪いよ……)


 仁王立ちしている足元のベンチの上には、オレンジ色と黄色の花柄模様の、まだ包みをほどいていない状態のお弁当箱が置いてある。


「お前こそ、俺のことを勇太って言うな。馴れなれしいからさ……」

 ……と言うと、おにぎりに一口かぶりつく忍海勇太。


「よく聞きなさい。いや、よくぞ聞いてくれた! 勇者勇太よ」

 優等生から勇者になっちゃった。

「あたしの青春ってのはね! この聖ジャンヌ・ブレアル学園で、平和に過ごすこと!!」



 新子友花の妄想劇場を、しばし……


「ジリジリ~」

 目覚まし時計の音です。

「んもー!! やだ、遅刻しちゃうじゃない」

「友花、早く起きなさい!」

 ああ、保護者の方ですね。


「んもー!! なんで起こしてくれなかったのよ~」

「あんた! 高校生になったら自分で起きるから、だから邪魔しないでって言ってたよね?」

 たぶん……学園ラブコメによくある『あんた、今日は始業式なんでしょ!』ていうやつ。


「言ったけど…………って言いながら、あたしは制服にササっと着替えて、カバンを持つ!」


「……あっ。いけない! 宿題のプリント、テーブルの上に置きっぱなしだ!!」

「友花!」

「はいはい! わかってるってば!! ……って言いながら、あたしは階段を駆け下りる」


 ベタな始まりと言えば……そうだよね。

(この物語のジャンルも、学園ラブコメですから……)



「……で? それのどこが青春なんだ?」

 ベンチの上で熱弁をふるって、時折ジェスチャーも加えて現在演技まっしぐら中の新子友花に、忍海勇太が冷静に水を差す。


「まあ聞いて! あたしはお弁当をカバンの中に入れて、行ってきまーす」

 水を差されても沸騰させて気化させる……新子友花のまっしぐら。

「そしたら玄関先で、『友花、朝食は?』って聞かれて。あたしは、『いいよ。あたし今ダイエット中だからさ』と」

「あんた! 育ち盛りなんだから、ダイエットなんて止めなさい!」


「あたしはその言葉を無視。『あははー! じゃあ、行ってきまーす』あたしは学園へ登校だ」



「で、それの、どこらへんが青春なんだ?」

 缶コーヒーを飲みのみ、忍海勇太が横目で尋ねる。



「バスに間に合ってよかったね! で、でさ~友花。昨日のカフェの時の……」

「もう! 言わないでって。あたしが乗って早々に!!」

 今度は彼の言葉を無視する新子友花。――場面は変わって、登校時の通学専用バスである。

「え? なになに?」

「いやさ、昨日の放課後にね。カフェに私と友花と一緒に行ってさ。そしたら、そのカフェのバイトの、たぶん他の学校の男の子がね、チラチラと……」

「ええー!」

「そう、チラチラと友花を見ながら、オーダーを取っていてさ!」

 左右に顔を振りながら、落語みたいに一人三役。


「んもー!! 言わないでってば!!!」

 ベンチの上でくねくねとRPGのふしぎなダンス、新子友花は両手で顔を触って赤らめる。



「はあ~。それが、お前の青春なのか……お前?」

 とうとう呆れて溜息一つ。頭をかいている忍海勇太。

 成績優秀にも理解でき難い、彼女の妄想に――




 妄想は――更にヒートアップ! もうしばしのお付き合いを……


「あたしは成績がとても優秀な女子生徒で!」

 両腕を組んで(ベンチの上に仁王立ちした状態で)、新子友花の妄想は青春恋愛モードから、清純な学園ラブコメモードへとチェンジするようですね……。



「さあ! 皆さん授業を始めますよ。席に座ってくださいね」

 と仰るのは、大美和さくら先生。

「えっと……、今日は……ここからですね!」

 教壇に立ち、ノートパッドを指でちょちょいと触りながら、

「――哀しいかな哀しいかな、一度はお互い距離をつめて寄り添おうと……でも時代がそれを許さなかった」

 小説の文章を読み始める。


「――両家の本家は、元々犬猿の仲。あんな家柄の男なんて。一方、あんな家柄の娘なんて、もめにもめて……結局二人は駆け落ち逃避行……」


「ああ、なんて哀しい2人なの?」

 スカートのポケットからハンカチを取り出して、涙をぬぐう大美和さくら先生。

……それにしても、相変わらず、どんな国語の授業なんだ? これ??


「じゃあ、この時の二人の気持ち、わかる人は手を上げてくれますか?」

「はい! 大美和さくら先生!! あたしには、その二人の気持ちが感動的にわかります」

 右手をまっすぐに高く上げて、椅子から……じゃなくてベンチの上で。

「うんうん! さすが新子友花さんですね」

 なんでそうなる?

「じゃあ……早速、答えて下さい!」

「はい! 男曰く、お前はなんで……あんな大金持ちの大男について行ったんだ。女曰く、だって……あなたの家元は厳格過ぎて、女の私には到底無理だったの」


「うんうん……。そうそう……」

 大美和さくら先生の相槌……いらないでしょ? 授業でしょ??


「でも……今は違う。あたし達の時代は違うから! もう時代は変わったんだからね!!」

「うんうん……。そうそう……。そうよね……」

 相槌はいらないでしょ? 授業でしょって??


「お互いの両家の格式は……確かに違うかもしれない。でもね。でもね……」

 新子友花がベンチからスッと降り!

 隣にいる男の両手を握った。その男は勿論のこと忍海勇太である。

「あたし達は幸せになろうよ!!」

 感極まって我を忘れる新子友花。……目から大粒の涙が見え始めたぞ!



「…………お前の青春って? 意味不明だな……。お前、キモいぞ……」

 真正面に立っている新子友花の大粒の涙に、思いっきり後ろに仰け反る忍海勇太。

「好き好き好き~!! 本当は好きだったんだから!」

 新子友花のスーパーハイテンションは、もはや止まらない!?


「…………お前」

 仰け反った状態のまま、言葉を詰まらせる忍海勇太。

 そりゃ……やっぱし引くよね。


 ――違った。

「……ああっ!! 俺も本当はわかっていた。俺も、お前が好き好きだ~い好き!!」

 ちょっと、この男もキモいぞ。

「俺は、お前が好き!!」

「いやーん! あたしもあんたが好き」

 テレテレ……(RPGのふしぎなダンスみたに)

「だから、お前ってキモいぞ」

 テレテレ……こっちも同じく。


「今は、両家とも犬猿の仲ですけれど、でも、私達は違います。私たちの愛は、決して! 決して!! 両家の古い慣習には負けません。絶対に負けません!! だから、私達は今すぐには、鴛鴦夫婦なんて求めません。求めませんけれど……。と言って、男女は肩を寄せて……こう言ったのです! 大美和さくら先生!!」

 そういえば、これ授業の問題の解答でしたね(作者も忘れ掛けていました)。



 んで……新子友花よ、解答は?


「あたし……実は…………お腹の中に……赤ちゃんが」


「大正解! 大正解ですよ!! 新子友花さん!! 凄いですね」




「はいはい……。お前、自分で言ってて何が凄いんだ?」

 忍海勇太が、ふと我に返った。[FF]で自分の周囲が見え辛い(見え辛かった)暗闇のステータスを治すために、目薬のアイテムを使ったようにである。

「……で、お前の『寿退学』のお相手が、俺なんだな?」


「こ……寿退学!? に……にゃんで、そのキーワードを勇太が……」

 キーワードを聞くなり、新子友花は条件反射的にハッと我に返り、両手で握っていた忍海勇太の手を拒絶的に離した(にゃんでって……君は猫か?)

「は? 違う違うって。なんでさ、あんたなんかと!」

 顔を左右に思いっきり振って、絶対違いますを彼に猛アピールする。

「あんた……なんかと? だって、俺しかいないんじゃない……のか?」

 物凄い自信である。その表情は至って真顔、きょととんとした目で彼女を見つめている。



「んもー!! 乙女に、これ以上、言わせないでくれる?」


「これ以上って……大演説してたのはさ、お前だろ?」




 キ~ン コ~ン カ~ン……


 聖ジャンヌ・ブレアル学園の校庭中に、もうすぐ昼休みの終わり、あと5分の予鈴よれいが鳴り響いた。その音源は、当然のこと聖ジャンヌ・ブレアル教会の鐘の音である――


 音が鳴り止むまで、しばしの沈黙が二人にあって。


 新子友花、ちょっとテンションを下げて言う。

「……あたしの青春ってのは、そう! はっきり言って大恋愛!! 由緒ある、この聖ジャンヌ・ブレアル学園に入学して友達ができて、部活なんかにも入ったりして(彼女は現在帰宅部)。――そんでもって、昼休み! あたしは友達と一緒に歩いていて……そしたら…………そしたら、擦れ違った男子と肩がギュルん!」

 ギュルんって、なに?


「あっ、あの……ごめんなさいまし……」

「だから、お前の日本語、とくに語尾がおかしいって」

 忍海勇太もさ、もう付き合わなくていいんじゃない? 否――新子友花の妄想癖にだよ。

「い……いや、お気にならぬがよし」

 新子友花は続ける。

「だからさ! 相手の日本語もおかしいってば!!」

 呆れ果てた忍海勇太。


 ――しかし、新子友花は負けじと(誰と闘ってんだ?)。

「ああ~いけません。これはいけません。――あたしは、スカートのポケットからハンカチを取り出して、彼の肩へと。そんでもって、彼はというと……ごめんなさいまし。ごめんなさいまし。あたしが飲み歩きしていたコーヒーがあなた様の身体に……。ごめんなさいまし……。飲み歩きしてよそ見していたあたしが悪いんです…………ですから……」



「もういいって、お前の俺への気持ちはしっかりとわかったから、だから、お前早く昼飯食えって!!」

 ちょんちょんと……忍海勇太が指さした先には、未だ包みが解かれていない状態の、新子友花のお弁当箱である。

「もう、昼休み終わるぞ……」


「あ……ああ! いけない!! ……あたし、まだ、お昼食べてなかったんだ!!」

 指さした先を二度見して、自分がまだお弁当を食べていないことに気がついて……自作自演の夢物語の大演説からようやく冷めて、我に返った新子友花である。

「お弁当を食べなきゃ!」

 ベンチに座り急ぎお弁当の包みを解いて、蓋を開けた。


「じゃあまあ……。結論としては、今日から俺たちは付き合っているってことで……」

 じゅる~じゅじゅ。

 忍海勇太が缶コーヒーを飲み終えて、いきなりそう言った。

 ――そう言って、ベンチから「よっこいせ」と立ち上がり、自分の横に置いていた、おにぎりの袋類を片付け始める。



「んはっ?? いや、いやや! 誰が勇太なんかと!!」



 お弁当に箸を付けようとする瞬間、忍海勇太からの大胆発言にビックリして、おもわず手を止めて新子友花は言い放った。


「しっかりと『勇太』って下の名前で、俺のこと呼んでるしさ。決まりだろ?」

「う……うるさいって勇太! あたしの青春に『勇太』は出てこないんだからさ!」


「わからん。結局、どういう青春なんだって話だ」

「だから! さっきから何度も言ってるじゃない! あたしの青春は『大恋愛』なんだってば!!」


「大恋愛、大恋愛って。大体、相手の男子がいなかったら大恋愛の“だ”の字も無いだろ。しょうがない……だから、今日から俺達は付き合っているってことで」

「アホか勇太!! いや、いやや、いやや! 誰が勇太なんかと…………」



 大恋愛、付き合う、いやや……

 大恋愛、付き合う、いやや…… あの~? もうすぐ、昼休みが終わるんですよね?

 お弁当をさっさと食べた方がいいと思うけれど…………




 それにしても『フォローボタン』を押したくなるような2人だね――――



 ――初夏の学園内の昼休みのひと時。

 並んでベンチに座ってのランチタイム。

 一人はベンチの上で仁王立ちしていたり、ベンチから飛び降りたりしているけれど。

 そんな……ほんと若々しい女の子の新子友花と、その隣で普通に座りながら昼食を食べて、まるでツッコミ役のように、彼女の相手をしてちゃんと返事している、こちらも若い忍海勇太。


 思えば――ファミコンのカセットを交換し合ったり、毎週月曜日に発売された漫画雑誌を、休み時間にクラスメイトで順番で読んだり。

 こんなことを書いたら、作者の世代がバレてしまうけれど、それは別にかまわない。


(……そういう、作者の懐かしい『青春』を思い出させてくれるような、そういう物語にしたいのです)




「もう! しつこいってば、勇太って!」

 大恋愛、付き合う、いやや………の繰り返しに、とうとう新子友花が、




 んもー!! んもー!! んもー!!




 会心の一撃で言っちゃった。

 この物語のタイトルにも採用されている言葉、これ新子友花の口癖です。

 言う時に特徴的なポーズがありまして……。

 それは、両手をグーにして肩幅と同じに垂直に下げて(両足の幅も同じく)、顔と目線を上目使いにして言い放ちます。

 ちなみに、頬は照れている!!



「んもー!! どーして、わからないのかな? あたしの清廉せいれんさを!!」

「それを言うなら凄惨せいさんだろ、お前。その妄想という愛情を、ただ俺に注いで消化すればいいだけの話じゃんか?」

 ちょっと言いすぎだと思うけど……。

 でも、さすがは成績優秀さの忍海勇太か?

 なんだか、冷静に『俺と付き合え。俺と付き合え』と言っている姿は、どんな授業の課題でも理解して、問題無く解くことができるところが想像できてしまう……。

 って、よく考えてみれば、しつこく言っているってことは、冷静じゃないんじゃなね?


 もしかして、忍海勇太のダークな一面なのかもしれないぞ。



「だから! そういう話じゃなくってさ! あたしは青春を始めるんだわさーってば!!」



 またも語尾がおかしくね? ……と、刹那。

 新子友花が言い放った拍子、彼女が忍海勇太に詰め寄ってそう叫んだ時。

 彼女の身体が、彼の膝にズズッと当たったのである。


 ……そして、忍海勇太が手に持っていた、まだ食べかけのおにぎりが、ひゅっと……

 ひゅっと……彼の手から離れてしまって。

 そしたら、おにぎりがコロコロと落ちて、更にコロコロと転がって……。


 コロコロと転がって……


 コツン。


 とある女子生徒の足元へと辿り着いて、止まったのでした――




「あら? これは勇太様ではありませんか? ふふっ……ごきげんよう!!」

 言っておくけれど、この学園は成績優秀のエリート学園ではあるけれど、御嬢様学校ではないから。

 勿論、御嬢様育ちの女子生徒もいるけれど、それほど多くはいない。

 聖ジャンヌ・ブレアル学園は一般的な私立の学校で、入試を受験して合格した、ごく普通の男子や女子の学生の方が生徒数の割合では多い。

 ――という説明を前提として……であるが、この女子は正真正銘の御嬢様なのでした。




 紹介しておこう!


 彼女は神殿愛こどのあいである。

 誰もが思い描く、典型的な御嬢様の容姿、そして性格である。

 黒髪のストレートヘアが背中のお尻の上くらいまで、まっすぐと伸びていて、前髪はというと、眉下でこれもキッチリと綺麗に揃えている。

 どうしてそんなに姿勢良く歩けるの? というくらいに背筋を正して……わかりやすく例えれば、歩くカジュアルな日本人形のような感じの御嬢様である。(余計にわからない……?)


 どういう育った環境での御嬢様なのかは、後に書くことになると思う――



「げ、神殿!」

 転がるおにぎりを目で追っていて、神殿愛の足元にコツンと……まるでアイドルのグラビア動画で足元からず~っと上半身へ映していて、おもわず視線が彼女と合った忍海勇太。

 コマンドは『逃げ出す!』……しかし、回り込まれてしまった。という心境から出た言葉だ。


「――これは勇太様。奇遇ですね! こんなところで出会えるなんて……ふふっ!」

 口元を右手で隠して微笑むその姿は、御嬢様である。



「…………誰? この女??」

 一方、この物語の主人公である新子友花の頭の上には、『?』の疑問符が現れる。



 ――初夏の学園。

 色彩豊かに花々が咲いている花壇、その隣にあるベンチに男女二人。

 爽やかな風が吹く中のランチタイム。

 気持ち良く自分の夢――青春を大演説していた中に突如現れた謎の御嬢様。

 作者も、折角『フォロー』ボタンを押したのに、よりによって第一声が勇太様。さまってのは……どういうこと?

 それに『げ、神殿!』って、どうして忍海勇太は彼女の名前を知っているの?



 う~ん……?



 はっ! なになに? これってもしかして、あれでしょ!!

 “三角関係”ってやつでしょ? ねえ? どうなの? 教えてくれない??


 ……まあ、作者が……これから書くんですけれどねぇ





続く


この物語は、ジャンヌ・ダルクのエピソードを参考にしたフィクションです。

また、[ ]の内容は引用です。

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