繊細な心

誰もが知るであろう童話の「白雪姫」を繊細な筆致で描かれている。作者の細やかな感受性によって息を吹き返した、ほろ苦い味わいをした童話となっているな、と感じた。

「白雪姫」を題材とした作品は多くあり、また姫ではなく妃に焦点を当てたものも枚挙に遑がない。しかし、この作品を包み込む妃の女性的な優しさと悲しみには、強く惹かれるものがある。

魔女として強かに生きる妃像とはまるで違う。そこにあるのは深い悲しみと諦めである。沈んだ瞳をして森をさまよう妃の姿はヒロイックで胸を打つものがある。女性的な傷つきやすい心を持つ妃の姿からは悲愴の色がありありと浮かんでいる。

そういった細やかな背景に日本的な情緒を感じさせられるのは何故だろうか。障害をはねのけてまでして生きる強さというよりは、諦観によった彷徨という感すらある。そんなことをつらつらと考えさせられた。