第31話 怪獣同士の戦い
1人のリザードマンが鎧を身に着けて、悠然と歩いている。
その前方には巨大な城壁が建造されている。
普通の城壁の二倍の大きさはあり、そして石材ではなく鋼鉄の城壁となっている。
エンペラーの1人であるマボロンは右手と左手に盾を装備しながらもただ悠然と歩いている。
マボロンにとって最強の盾は最強の鉾となるのだ。
彼は呼吸をしながら、自らの心臓があるであろう塔を目指す。
その心臓を奪えばこの地区はモンスターにより危険地区となるだろう、人々はそれを恐怖しているのだから、ならマボロンが一人残らず殺してしまえばいいのだと思う。
辺りは草原に包まれており、その草原の向こうは鬱蒼とした森で包まれている。
その森の中に突如としてあるのが鋼鉄製の城壁と言う事だ。
一本の弓矢が城壁から解き放たれた。
まるでこちらに吸い付くように正確に飛んできた矢はマボロンの鎧に弾かれた。
マボロンは右腕と左腕に力を集中させる。
彼は体を感情のようにコントロールする事で体をドラゴンのようにする事が出来る。
一部だけの力の解放も出来る。
よってマボロンの両腕がドラゴンの腕となり、地面をバネのように弾き飛ばすと。マボロンは遥か空に舞い上がる。
そのまま落下スピードに応じて、マボロンは右腕と左腕を鋼鉄の城壁に叩きつける。
その右腕と左腕には2個の盾が装備されており、そのドラゴンの鱗で作られた盾は鋼鉄の城壁を豆腐のように崩した。
マボロンは鋼鉄の城壁の上に立ち、ドラゴンの咆哮を発したのであった。
一方で鋼鉄の城壁に囲まれて、優雅に寝ている兵士達はその咆哮で起き上がった。
即座にパニック状態になりつつも、1人の男性だけは冷静沈着であった。
彼の名前はウェルフという男性であり、犬耳がある獣人族である。
ウェルフは普通の獣人族ではなかった。姿形は人間と狼を掛け合わせたような形だ。
しかし彼には狂戦士という才能があり、狂戦士とは体そのものを獣化させる事が出来る。
さらには巨大化させる事も出来るのだ。
そんなウェルフはこの地区の隊長に任命されていた。
ウェルフは元々傭兵団であり、10名の獣人族の部下がいる。そのどれもが狂戦士
なのである。
ウェルフだけが覚醒した狂戦士と呼ばれている。
人間と獣人族の和平はとても難しい事であったが、獣人族の王と人間の王と和平を結ぶ事に成功し、こうして神融合の大陸で協力しあっている。
「隊長、何か普通ではないぞ」
「これはやばいんじゃねーか」
「リキッドとバイスンは完璧の盾のマボロンの心臓を死守しろ、他の奴等はどうした」
「即座に問題の所に向かいました」
「俺も即座に向かう、リキッドとバイスンは命をかけて心臓を守れ」
「「了解しやした」」
ウェルフ傭兵団。沢山の人間の街を滅ぼした現況であり、人間を苦しめた獣人の王の配下、そして王家の血筋を引いているのがウェルフであった。
ウェルフは宿舎から出ると、そこを直視した。
そこには遥かに巨大なドラゴンがいた。
だが普通のドラゴンとは違う、二足歩行しており、なんとリザードマンのような姿、そんな姿をウェルフは見たことが無かった。
一方、エンペラーであり、完璧の盾と呼ばれていたマボロンは狂戦士の出現により少しだけ本気をださざる負えなかった。
ドラゴンの姿になるのもいいが、奥の手は取っておくものだ。
なのでリザードマンの姿でドラゴンのように巨大化した。
力は半分しか解き放っていない。
「まったく、君達獣人族までもが人間の手助けとは」
「うるせい、団長が人間と仲良くすると決めたんだ」
「だぜい」
「リザードマンは獣人じゃないのに、狂戦士化しているのはなぜだがね」
「巨大な虎に巨大なウサギに巨大なカンガルーかすごいな、ここは巨大動物園か、いや怪獣か」
「おめーが言うなよ」
「化物はお互い様だろう」
「問題なのはお互いでかくて人間を踏みつぶすことだがね」
巨大な虎が二足歩行になり、巨大な拳でマボロンの顔面を殴り飛ばす。
マボロンはビンタされたように少し顔を背ける程度でダメージはなかった。
次に兎のジャンプキックを頭にくらった。
カンガルーの拳も背中から食らった。
マボロンは怪獣達にぼこぼこにされている状態であった。
彼は心の中で爆笑していた。
彼等が狂戦士という力を持っているのは分かる。
だが覚醒していないこのような奴等にやられるほど、自分は弱い存在ではないのだと、マボロンは咆哮を発する事で答えて上げた。
その咆哮により3体の怪獣はひるんだ。
マボロンは右手と左手に盾を握りしめると、回転させる。
その回転スピードは車輪のように回り、マボロンが腰を落とし、右腕を振るった時に虎の怪獣の首が両断されていた。
虎の怪獣は何が起きたか理解できずに、巨大な頭が落下する。頭と体は次の瞬間には小さくなっていく、ウサギの怪獣は危険を察知して、後ろにジャンプしたが、マボロンは片方の盾を投げる。
それはブーメランのように回転しながら、ウサギの腹を両断する。
腹から沢山の内臓がこぼれる中、ウサギの怪獣が真っ二つになって転がり、これも小さくなる。
カンガルーの怪獣は逃げるのではなく、仲間を殺された怒りでこちらにジャンプしてきた。
マボロンはブーメランの要領で戻ってきた盾を構え、片方の盾も構える。
片方の盾でジャンプ蹴りをガードする。
そして片方の盾でカンガルーの両足を両断する。
カンガルーの怪獣は芋虫みたいに這って逃げようとするも、マボロンが頭を思いっきり踏みつぶした。
それから多種多様な狂戦士がやってくるも、8名の狂戦士を殺す事に成功する。
人間達は怪獣パニックが起きている状況で、怪獣達に希望をよせていたのだろう、だがその動物の怪獣達はリザードマンの怪獣に次から次へと殺害されていった。
マボロンは足元にいる人間達を見て、彼等をこれからどう料理しようか、そう考えていた。
しかし1人の獣人族が眼の前にいた。
彼は人間と同じ大きさで、こちらを見上げている。
仲間達の死体を見つめながら、涙を流しているようだ。
他の人間達とは何かが違うその狼人間、つまり獣人族は涙をぬぐってみせた。
そしてこちらを見て、大きな咆哮をあげる。
それは狼がする咆哮であった。
ゆっくりと狼人間は大きくなる。
そして彼が狂戦士であり、そして覚醒者だと納得する。
彼の体から赤いオーラがほとばしる。
毛は逆立ち、普通の状態ではない、赤いオーラは心臓の鼓動と一致するかのように脈動している。
マボロンはにやりと鋭い口を釣り上げてみせると、ゆっくりと全身から力を引き出していった。リザードマンの巨体ではなく、ドラゴンの形をした巨体になる。
それは四足歩行、体内から炎の力を感じる。
炎のように燃え上がる力が、ドラゴンのパワーを引き出してくれる。
「貴様はなんだ。なぜここを襲う、見た所、リザードマンであり、ドラゴンのようだ。高貴なるドラゴンよ、この地区は何も悪い事はしていない」
「僕の名前はマボロン、完璧の盾でありエンペラーのマボロンだよん」
「ま、マボロンだと、あの伝説の」
「ただ。僕は心臓を返して欲しい、どうだろう君だけは見逃すから、他の奴等皆殺しにしていいかい」
「ふざけているのか」
「ふざけてないよん、だって僕彼等にひどい目にあわされたもん」
「だからと言って殺していいわけが」
「でも、不思議、君から沢山の血の臭いがするなぁ、それもとびっきり殺してきたんじゃない」
「な、なぜ、分かるのだ」
「同類ってやつ?」
マボロンは地面を蹴った。
巨大なドラゴンが建物を破壊し、粉砕しながら怒涛のごとく1人の狼人間に向かって行く。
「自己紹介はまだだったな、俺はウェルフ、ウェルフ傭兵団の団長だ」
その自己紹介が2人の戦いのゴングを鳴らした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます