第15話 大木の軍勢

 それは突然起きた。冒険者ギルドの酒場で仲間達とゲラゲラ笑っている時だった。

 彼は赤いぼさぼさの髪の毛をしながら天井を見ている。

 天井に吊るされている光の元が揺れている。、

 それはまるで地震のようだった。


「ジェム、トッカあれは何が起きている?」

「団長さんは少しお酒でも飲んで戦闘狂から離れなさいな」

「団長はわたしと一緒に今日はベッドに直行でぇ、いえーーい」



 ジェムと言われた副団長はしぶいおっさんでありいつも葉巻を吸っている。 

 今は酒場で肉ばかりを食べている。

 一方でトッカはとてもナイスバディーな女性で、回復魔法の使い手として神官をやっている。

 団長と呼ばれた男性はよくトッカと寝ていた。



 外は暗闇に包まれ、1人のコックが怒り狂っている。

 彼女はトレントでありながら、この冒険者ギルドに枝を伸ばそうとしている。



 その殺気を感づいたもの達がいた。

 それが赤髪でぼさぼさの団長で【灼熱の騎士団】と呼ばれる人達であった。

 彼等の団員数は30名を超えている。

 勇者達の伝説の7人が処刑されてから、勇者達の次に強敵者と呼ばれているメンバー達だ。



「団長外で異変が起きてるぞ」

「まずいぜ、外の奴等死んでる」


「うぃお、まじか」

「回復魔法じゃ無理みたい」


「敵は枝だ。恐らく根本があるから、ジェムとトッカはついてこい、その他は人々を救出しながら城に籠城しろ」

【了解したぜ】



 部下達の約30名が快く頷いてくれる。


「掴まれ」


「うぉい」

「いぇいさ」


 赤髪の右肩と左肩にジェムとトッカが捕まる。

 この騎士団がなぜ灼熱と呼ばれるのか。

 それは赤髪のぼさぼさ団長から右足と左足に炎が吹き上がるからだ。

 それは真下にジェット噴射すると。遥か高みまで一瞬にして上昇してしまう。


「うっひょおおおお、団長のこの技スリルがあるから最高だぜ」


「ひいえええええええ、死ぬううううう」


「トッカいい加減に慣れろ」


 

 3人は雲の真下で停止すると。至る所を見渡せる。

 そして3人は気付いたのだ。


 この国だけではないという事。

 他の6個の国ですら炎と煙が吹き荒れる戦場になっている事を。



「一体世の中では何が起きているんだ?」


「だが、団長よ他の国より今は自分達の雇われた国を守ろうぜ」


「それを提案したいであります団長、今日はたっぷり一緒に寝ましょう」


「おめーは寝る事しか考えてねーのか」


「はいです」


 赤髪の団長は頭をぽりぽりとかくと、ある人物の事が脳裏に蘇った。


 彼は勇者であった。しかし処刑された。その人は自分の兄であった。

 なぜ処刑されたか謎で仕方がなかった。だから色んな国を渡って情報を集めて来た。


「まさかな」



 心のどこかで微動だにする気持ち。

 それはこの世界はどことなく腐っている。

 兄とその仲間達は命をかけて人々を守った。しかし人々は彼等を処刑した。

 おのずと見えてくる気持ち。

 それは【彼らがいつか復讐しにやってくるという事】だった。



 赤髪の団長は知っている。

 彼等の事を。彼等は団長にとって家族みたいなものだった。

 だからそれは信じたくない事だった。



「見えて来た」


「ほんれ、あの巨大なトレントじゃのう」


「恐ろしいほど禍々しい、その瘴気で他のトレント達も意識を覚醒させているわ」



「とりあえず着地するぞ」

「頼むぜい」

「任せたよ」



 3人が着地した草むらには枝の存在はいない、なぜなら山々の王国を迂回して反対からやってきたからだ。


 巨大なトレントは本体ではなかった。

 巨大なトレントの隣に小ぢんまりといたのが本体であった。



 その小さなコックトレントは後ろに気配を感じて振り返った。

 コックトレントは不思議そうな顔で赤髪の団長を見ていた。



 そのトレントは無我夢中で自分の果物を食べていた。 

 それの食べ方を見ていた赤髪の団長は不思議そうにしていた。


「その、むしゃぶりつく食べ方は、まさかあなたは」


「お前等は何ものだ。このコックが料理してあげよう」



 その時赤髪の団長の顔が迷いのない物になった。


「や、やはり」


 そう呟く前に沢山の枝がムチ打った。



「団長どうした」

「彼女はコックだナタリアというコックを知っているな」


「おう、そいつは処刑されたんだろ」

「転生したんだ。恐らく」


「団長は無駄話している場合じゃないわよ」

「トッカいいから一回退くぞ、この人と戦いたくないんだ」


「そんな事したら国から指名手配されるぞ」

「それでも構わない、敵前逃亡だとしても冒険者ギルドを追われたとしても、この人達とは戦ってはいけないんだ」

「ったく仲間達には勝手に撤退させとくからな」

「頼む」


「団長のその苦闘の顔は珍しいね」

「そうか、トッカの夜の喘ぎ声の方が綺麗だよ」

「んもう」



 30人の冒険者達が1人また1人といなくなっていく中で、赤髪の団長とジェムとトッカは暗闇の中に消えていいった。



【灼熱の騎士団】が謎の消滅を辿り、コックトレントは城の城門を破壊する事に成功する。

 至る所に隠れていた人々は次から次へと枝の餌食となり。

 逃げる事に成功しても沢山の木々がトレント化して人間達を殺害していく。


 

 冒険者達はそれなりの逃げる知識があるから逃げる事に成功する人々もいた。

 しかし一般人や普通の人は逃げる事が出来ない。



 人間達は栄養として補給されていく。

 トレントの数は数えきれない数となり。主軸となるコックトレントはひたすら城を目指す。



「コックは時にはお客様の所に行かねばね」


 

 元々は美女のナタリアコックと呼ばれた女性。

 その女性は憎しみに取りつかれていた。

 いやそれしかなかった。

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