第5話 じ、実は・・・


 僕は先輩の想定外の言葉に、思わず声が裏返ってしまった!


 先輩を100円で買う?一体、どういう意味だあ?

 僕は自分でもどういう顔をしているのか、全然想像できないくらいに混乱してる!

 だけど、肝心な先輩は縮こまっているというか、少し上目使いで僕を見ている。でも、その目を見る限りでは冗談で言ってるとは全然思えないから、僕の混乱はますます酷くなっているとしか言いようがなーい!

「・・・時間100円!あー、いや、1日100円でもいいから、お願い!」

「ちょ、ちょっと先輩!何を言い出すかと思ったら、人身売買ですかあ!?いくらタイソーが100円ショップとはいえ、アルバイト店員を100円で買えって、ちょっとおかしくないですかあ?」

「そ、そんな人聞きの悪い事は言わないで!これは大真面目な相談なんだから!」

「と、とにかく、何で100円なのかは後回しにするとして、その『大真面目な相談』とやらの内容を教えてください!」


 僕は身を乗り出して先輩に迫ったけど、先輩はさっき以上に縮こまってるし、顔も引き攣っている!一体、何をしたいんだあ!?

「・・・い、言わないとダメ?」

「当たり前ですよ!だいたい、その100円の件だって新手の詐欺か、それとも県の青少年保護条例に違反するような事だとしか思えないです!そうなったら、さすがに僕もお断りさせて頂きます」

「そ、それは・・・新手の詐欺じゃあないけど・・・県の青少年保護条例に違反するような言い方かもしれないけど、大丈夫だと思う・・・」

「先輩!ハッキリ物事を言って下さい!僕だって困ってますからあ」


 僕はだんだん腹が立って来たけど、逆に先輩はますます縮こまっているとしか思えない・・・


 でも、こんな事で腹を立てているようでは大人気ない(?)と思ったから、ここで一度座り直してから呼吸を整えた・・・けど・・・ホントに先輩は何を言いたいんだあ!?


「・・・せんぱーい」

「ん?」

「担当直入に聞きます。明日、僕に何かをやって欲しいんですか?」

「そ、それは間違いない・・・」

「じゃあ、何をやって欲しいんですか?内容によっては考えますから、その内容を教えて下さい」

 僕は先輩に優しく言ったつもりだったけど、その先輩は暫く無言でいた。でも、やがて顔を上げた。その表情は、どちらかと言えば『迷っている』というように感じる表情だ・・・

「・・・い、言わないとダメ?」

「そうです。その内容によっては考えます」

「とにかく並野君!お願い!!」

 先輩はそう言うと両手を頭の上に乗せて、いわゆる『お願いポーズ』を取った。


「じ、実は・・・」

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