第42話 そういえば・・・
火曜日の放課後になった。
この日の机の数は2つしかない。
決勝トーナメントは2試合同時に開催され、3位決定戦と決勝のみが1試合だけで行われる。
僕と先輩は決勝トーナメント1回戦の第8試合だから、4回目に登場する。
昨日の予選が終わった後に小ホールは一度片付けられているから、今日は新しく並べ替えられた机が2つだけあるけど、僕たちは通称B机を使う事は分かっている。
当然、辞書の並び方は昨日とは全然違う!
僕が立っている位置から見て、右から英和辞典、和英辞典、漢和辞典、人名辞典、古語辞典、逆引き辞典、和独辞典、ことわざ辞典になってるから、倒れにくい(?)広辞苑がない!
既に第6試合まで終わっていて、姉ちゃんと
えっ?どうして試合を見てる?おかしい?
あー、それはですねえ、本当なら第8試合も同時に始まる予定だったけど、最初のサーブを僕が打とうとした直前に、校内放送で
そんな訳で僕も先輩も、それに
結局、試合は15-13で卓球部ペアである帝振先輩と多津木先輩が何とか振り切る事が出来たけど、その試合が終わる直前くらいに雪佐先生が戻ってきたから、第7試合の興奮冷めやらぬ中、第8試合は始まった。
でも、試合は一方的だ。
僕の最初のサーブは雪佐先生がアッサリとリターンエースを決め、そこからは一方的な試合展開となった。素人ペアが優勝候補筆頭のペアに敵う訳なく、とうとう試合は0-10で早くも雪佐先生と壱語先生のペアがマッチポイントを迎えた。
雪佐先生が左手で持ったピンポン玉を軽く上へ投げ、それを右手のコップヌードルで軽く叩いた。ポンポン玉は雪佐先生の前の机でワンバウンドしてから辞書を飛び越え、僕たちの側の机でバウンドした。それを先輩は渾身の力で打ち返したけど、向こう側で待ち構えていた壱語先生は逆に強烈なスマッシュを打ち返した!
僕は懸命に右手を伸ばしたけどピンポン玉は掠りもせず僕のコップヌードルの先を突き抜けて行った!『勝負あり!』と思われたけど、壱語先生のスマッシュは僕たちの机でバウンドしてないからミスショットだ。
辛うじて僕たちは命拾いした格好だけど、それでも1-10で雪佐先生たちのマッチポイントである事には違いない。
次のサーブは僕だ。
本当なら雪佐先生の利き腕ではない左側を狙いたいのだが、僕も先輩も素人だから飛んでいく方向は正直言って神頼み。とてもではないがハナから素人ペアが太刀打ちできるような相手ではないのだ。
僕のサーブは既に3回、辞書で跳ね返されてやり直しになっているから次が4回目だ。『コップヌードル卓球大会』のルールではサーブは何度でもやり直しが出来るから別に問題ない。
周囲は殆ど白けムードで僕たちの試合を見てるけど、当たり前だけど僕は大真面目だ。素人ペアだけど、何とか優勝候補筆頭ペアに一泡吹かせたい。いや、負けてもいいけど何か1つ位はギャフンと言わせてから負けたい。そうでなければ、昨日の僕たちのバイトを代わりにやってくれた
でも、どうやったら優勝候補筆頭のペアに一泡吹かせてやれる?
僕も先輩も細工が出来るのはサーブの時だけだ。でも、そのサーブだって、どこへ飛んでのかは神頼みに等しい。いくら『試合の妨げになるような非紳士的行為は慎む』としか書かれてないとはいえ、超甘々な・・・
あれっ?
そういえば・・・超甘々な・・・
だとすれば・・・これはルール上、認められている筈だ!
「・・・すみませーん」
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