第39話 試合開始!

 僕はAブロック担当の鳥取とっとり先輩から試合開始を告げられた。

 僕たちの対戦相手は1年A組同士のペア、石橋いしばし わたる君と相思想そうしそう あいさんのペアだ。


 ルールにより最初のジャンケンはコートの位置決めだ。勝った方が審判から見て右側、負けた方が左側だ。僕と先輩の間の約束事で、コートの位置決めは僕がやる事になっているから僕は黙って右手を出し、相思想さんも右手を出した。


「「最初はグー!ジャンケンポン!」」


 僕はチョキ、相思想さんはパーだから、僕たちは右側のコートに決まった。

 最初のサーブ権もジャンケンと決まってるけど、先輩が黙って右手を差し出し、石橋君も右手を出した。


「「最初はグー!ジャンケンポン!」」


 先輩はパー、石橋君はグーだから、最初のサーブ権は僕たちの方だ。

 その後は僕と先輩のジャンケンだ。この大会のルールにより、互いに勝った方が先にサーブ・レシーブと決まっていて、サーブする側は自分たちに得点が入るたびにサーブ者は入れ替わるが、レシーブ側は自分たちに得点が入るか、相手に2回連続でポイントを取られない限り同じ人がサーブを受ける事になる。僕たちの最初のサーブは先輩、レシーブは相思相さんだ。つまり、最初は女の子同士だ。

 先輩は左手に持ったピンポン球を軽く浮かせ、それを右手に持ったシーフードで叩いた!


“カツン”


 先輩のサーブは僕たち側の机でワンバウンドした後、ネット代わりの人名辞典に当たり自陣に戻ってしまった。本来なら石橋君たちのポイントになるのだが、特別ルールによりノーカウントだ!

 先輩は再び左手で持ったピンポン球を軽く浮かせて、それを右手で持ったシーフードで叩いた!今度はあちら側の机に入った!僕と先輩は約束通り時計回りで交代し、僕が前へ出た。

 相思想さんは普通にピンポン球打ち返してきたが、僕は最初から勝負に行った!

 右手をわざと腰より低い位置で構え、相思想さんが打ち返したピンポン球を小細工せずに真っすぐに撃ち返した!石橋君は逆ハンドで打ち返そうとしたけど、ピンポン球は石橋君のコップヌードルに触れる事なく飛び抜けて行って、早くも僕たちが1ポイント先取した形になった。

 僕たちのサーブは続く。次のサーブは僕だけとレシーブは相思想さんのままだ。

 僕は左手に持ったピンポン球を軽く浮かせ、それを右手に持ったコップヌードルで叩いた!手前の机で一度バウンドしたピンポン球は対角線の机に見事に入り、それを相思想さんは打ち返したけど、力み過ぎなのか、どの机にバウンドする事もなく飛び抜けて行ったから、今回も僕たちのポイントだ。

 3連続のサーブだけど次は先輩の番だ。レシーブ側も交代だから石橋君に変わったけど、今回は先輩も一度で決め、石橋君も打ち返して、そのまま互いにラリーの応酬となった。

 だけど、それが4回続いた時、先輩の打った球が弱く広辞苑に当たってから相手陣内に入った!相思想さんは机に上体を預けるようにして打ち返したから、その衝撃で全ての辞書がバラバラに倒れ、英和辞典は机から落ちた!しかも2階にいた男子から一斉に大歓声が上がったほどだ!!(すみません、僕も思わず黒い物が見えてしまいましたあ!)

 辞書は全部僕たちの机の上で倒れてるけど、相思想さんが机に残ってるから逆にチャンスだ!

 僕は素早くピンポン球を打ち返した!そのまま相思想さんの頭に当たって右に大きくピンポン球は弾かれたから、石橋君は茫然と見送るしかなかった。特別ルールにより机に体が触れている以上、相思想さんは机扱いだから的が大きくて狙いやすい!

 結局、僕と先輩のペアは11-2で3回戦に駒を進めた。

 僕と先輩は右手をグーにして互いに軽く打ち合ったけど、すぐに笑みがこぼれた。只管ひたすらさんが喝を入れてくれたのか、僕も先輩も昨日とは気迫が全然違う!

 石橋君と相思想さんはアッサリ負けた格好になったけど、何故か二人ともニコニコ顔なのだあ!何しろ今まで一番大きな歓声が上がったのは相思想さんが机に突っ込んだ時なのだから、今の段階で投票が行われたら間違いなく『ベストパ〇チラ賞』いや、『ベストカップル賞』だろうからね。

 僕と先輩はタオルで軽く汗を拭くと、用意しておいたアクアリウムを飲み、腕にも軽くだけどボンテリンをスプレーして、次の試合に備えた。これも昨日までは全然考えてなかった事だけど、こういうところにまで注意が向くという事自体、只管ひたすらさん効果なのかもしれない。


 僕たちの初戦は終わったけど、小ホールのモニターでは予選で最高の注目を集めているCブロックの机が映し出されていた。試合は雪佐せっさ先生と壱語いちご先生のペア対益須えきす とら先輩と多田野ただの 茂府子もぶこ先輩という2年生同士のペアだ。さすがに教師が制服を着る訳にいかないから、今の壱語先生はフレアパンツのスラックスで少し(?)損した気分だけど、元国体出場同士だけあって2年生ペアを圧倒している!というより、先生方がラケットの代わりにコップヌードルを使って卓球のをやっているかの如き、圧巻の試合運びをしている!優勝候補筆頭の呼び声通りだとしか言いようがない!

 因みに・・・Hブロックの論寄君と雀愛すずめさんのペアは、帝振ていぶる先輩と多津木たつき先輩のペアに0-11という屈辱的ともいえるストレート負け。しかも本人たち曰く「サーブを11回打ち返しただけ」で5分もしないうちにアッサリ負けて逆にサバサバしていた程だ。当たり前だけどパ〇チラどころの話ではなかったようだ。

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