行間2 今日の昼休み パート2

第27話 迷うぞ!

 それは今日の昼休みの事だった・・・


 今日の4時間目は体育で、しかも跳び箱やマットの片付けをやってたから結構出遅れた。おかげで昼休みが短くなって損した気分だったなー。


 私はいつも通り、食堂のテーブルでいつもの4人組、安藤あんどう 那津なつちゃん、佐坂ささか 真穂子まほこちゃん、相須あいす 美琉玖みるくちゃんと食べていたのだが、その席で・・・


「・・・そう言えばさあ、コップヌードル卓球大会のエントリーが始まったよー」

 最初にこの話を切り出したのは那津ちゃんだ。

「F組で出る人はいるのー?」

徳富とっぷ 郁代いくよさんが去年のリベンジに燃えてるよ」

「あー、たしかにねー」

「去年は決勝でマッチポイントまで行ったのに、その時に『よっしゃあ!』とか言って右手を振った時に机にカップをぶつけて壊しちゃったから失格。絶対に今年は優勝するって豪語してるからねー」

「しかもさあ、弟の徳富とっぷ かける君と組んで出るって言ってた」

「うわっ!たしか姉弟きょうだい揃って陸上長距離のスポーツ推薦入学でしょ?しかも二人とも中学の時は県のランキング1位だったって聞いてるし、郁代さんは去年は学年総合1位だから勉強も運動もまさにトップ!」

「どうして二人とも上等高校を蹴って平凡坂高校を選んだのか、ホントに不思議よね」

「ま、そこは本人に聞かないと分かりませーん」

 へえー、徳富さんかあ。たしかに完璧超人ともいうべき徳富さんなら出ても不思議じゃあなかったなあ。彼女ならアッサリ優勝するかも。

「・・・他には情報ないの?」

「えーと、速房はやぶさ 小町こまちさんが山彦やまびこ つばさ先輩と一緒に出るって張り切ってたよ」

「うっそー!あの二人、別れたんじゃあないの?」

「違う違う。別れたっていうのがガセネタよ。翼先輩、結構人気があるから、誰かが故意にニセ情報を流して無理矢理、小町さんと別れさせようとしてたみたい」

 へえー、私も別れたって聞いてたけど、そっちの方がガセネタだとは知らなかったなあー。というか小町さん、入学して早々に付き合い始めた筈だから、かれこれ1年になるのか・・・


”ガヤガヤ・・・”

”ザワザワ・・・”


「・・・あれっ?何か急に騒がしくなったけど、あっちで何かあった?」

「・・・そういえばー、あそこにいるのは、たしか生徒会長の上似うえに先輩だ」

「一緒にいるのは論寄ろんより先輩と見田目みため先輩だよねえ。何かあったのかなあ・・・」

 たしかに那津ちゃんたちの言う通りだ。みんな騒いでるけど、一体、何があったんだあ!?


「・・・あのー、すみませーん、何かあったんですかあ?」


 嘘でしょ!?あの生徒会長の上似先輩とペアを組んで出場するのが並野君だなんて、信じられない!というか、並野君のカノジョは上似先輩だったんですかあ!?

 えっ?違う?・・・従姉弟同士!?上似先輩は仮登録?それってどういう意味なんですかあ?

 うーん・・・やっぱり本人に聞かないと確証が持てないのかあ・・・


「うわー、たしか上似先輩、男子からモテモテなのに過去2年間、ぜーんぶ誘いを蹴ってたのに今年は出るってホント?」

「さあねー。でもー、上似先輩のファンは3年生だけでなく2年生にも多いから、あの1年生、結構な数の男子を敵に回すかもね」

「でもさあ、カレシでもイトコでもいいけど、上似先輩と並野君が知り合いなのは間違いないわね」

 たしかに那津ちゃんたちの言う通りだ。並野君は、あの上似先輩がエントリーする気になる位の男子だと言うことがこれで証明された訳だ。ま、私のカレシじゃあないから、そんなに気にする事ではないけど・・・もし上似先輩のカレシだったら、素直に『ガンバレ』と言ってやろうかなー


「・・・というか那津!あんたさあ、土曜日に誰と何処へ行ったのよ!」

「そうだそうだ!わたしたちに抜け駆けして男とデートするとは何事だあ!」

 そうだそうだ!そのせいで私だって被害者だぞ!責任を取れー!!

「いやー、想像出来ると思うけどー、『コップヌードル卓球大会にエントリーしよう!』とか言って誘われちゃったんだよねー」

「「「そ、それで、あんたはOKしたの!?」」」

「うん」

「「「まじ!?」」」

「あー、でも、そのまま付き合うかどうかは分からないわよー。だってー、うちの従姉も言ってたけど、とにかくこの時期は、卓球大会に出たいというだけで女の子に片っ端から声を掛けるバカな男がワンサカいるけど、殆どは一週間もしないうちに男の方から別れ話を切り出すのがオチだから、信用しない方がいいって」

 うーん、たしかに那津ちゃんが言ってる話、私もお姉ちゃんから聞いた事がある。いわば卓球大会に出るという事は、うちの学校の生徒にとって一種のステークスホルダーに成るという事だから、男も女も、誘ってくる方は見栄っ張りの奴ばかりだってね。中には卓球大会という事を逆に利用して大真面目にコクッてる人もいるみたいだけどー、大半は期待するだけ無駄だよー・・・

「・・・で、相手は誰なの?」

「えーっ!ここで言わないとダメ?」

「どうせエントリーしたら名前が掲示されるんだから、今から言っても同じよ!」

「うーん、じゃあ、正直に言うけど、B組の名古屋なごや 外郎ういろう君」

 うっそー!去年は同じクラスだったから名古屋君の事は少しは知ってるけど、全然目立たない子で、そんな男が那津ちゃんを誘ったというのが信じられない・・・い、いや、絶対に那津ちゃんの方が強引に名古屋君を誘ってエントリーしたとしか思えない!だって名古屋君、超がつくほどの草食系だよ。そんな男が那津ちゃんを誘う方が絶対に不自然だ!

「・・・まあ、那津が正直に言ったから素直に白状するけど、わたしもさあ、金曜日の放課後に木理きり 丹保たんぽ君から誘われたからOKしたんだよねー」

 はあ!?真穂子ちゃんが木理君とエントリーするって嘘でしょ!?というか、真穂子ちゃんは本気で木理君と付き合う気があるの?絶対に見栄っ張りの真穂子ちゃんの方が出たくて、大人しい木理君を強引に誘ったとしか思えない!!

「・・・あれあれー、那津さんも真穂子さんも正直に言ったなら、わたしもこの際だから言っちゃうけど、わたしも金曜日の放課後に鳴門なると 金時きんとき君から誘われたからエントリーするよー」

 はあ!?美琉玖ちゃんもエントリーするって冗談キツイぞー!というか、私、鳴門君を全然知らない。というより、今まで鳴門君の『な』の字も会話に出た事が無い人とペアを組むって、どういうつもり?真穂子ちゃんも結局は見栄で出たいというのが見え見えだよー

「・・・ということはさあ、エントリーしないのは伊奈だけだよー」

「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」

 この3人が揃ってエントリーする以上、私だけが出ないって事なのをスッカリ忘れてたあ!!

「・・・伊奈さあ、ホントにエントリーしないのー?」

「伊奈がエントリーしないのは逆に絶対に不自然だよねー」

「そうそう、伊奈の事だから絶対にエントリーするよねー」

 ちょ、ちょっとー、あんた達さあ、自分がエントリーするのが決まってるからといって、完全に私を揶揄ってるとしか思えないわよ!去年なんかさあ、あんた達3人揃って「そうまでしてエントリーしたいのー?アホじゃあないのー」とか言って笑ってたのを忘れたんですかあ!?

「・・・あー、そういえばー、そんな事を言ってたかもしれないけどー」

「まあ、1回くらいは記念にエントリーしても神様は怒らないよねー」

「そうそう!逆に3年間で一度もエントリーしないで卒業するというのは、青春を放棄するのと同じだあ!」

 はあああーーー・・・勘弁してよー

「・・・あのさあ那津、伊奈はエントリーするよねえ?」

「うーん・・・この際、何か賭ける?」

「「「賛成!」」」

 ちょーっと待ったあ!私は全然同意してないぞ!勝手に賭けの対象にするとは卑怯です!断固反対です!!

「それじゃあー、わたしはエントリーしない方に『リング・デ・ポン』を2つ!」

「わたしもエントリーしないに『ショコラ・デ・ポン』を2つ」

「同じくエントリーしないに『抹茶・デ・ポン』を2つ」

「あれー、誰もエントリーする方に賭けないのー?」

「これじゃあ成立しないぞお」

「別にいいんじゃあないのー。伊奈がエントリーすれば総取り、しなければ伊奈が全部負担で丁度いいよー」

「「「賛成!」」」

 はあ!?あんた達さあ、私が運動超苦手、勉強超苦手なのを知ってて言ってるでしょ!これって卑怯以外の何物でもなーい!ぷんぷーん!!

 で、でも・・・エントリーすれば『リング・デ・ポン』が6つも手に入る・・・くっそー、この賭けに乗るか乗らないか迷うぞ!!

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