第31話 RE:Mission-15 ¨事情聴取¨ヲ執行セヨ - 1
〜 ……ジャリンッ、ザッ、ジャリンッ、ザッ、ジャリンッ、ザッ……! 〜
ハァ…ハァ…ハァ……!
……しっかりして、■■■■……。次はきっと……良い…”ご主人様”に……会える筈ですから……!
――ここは一体、何処なのだろうか……? 見渡す限り、暗闇しかないのだが……?
〜 ……ジャリンッ、ザッ、ジャリンッ、ザッ、ジャリンッ、ザッ……! 〜
ハァ…ハァ…ハァ……!
しっかりしろ! 姉ちゃん! また
〜 ……コソコソ……見てみろよアレ……? ……クスクス……まぁ、
――台無し?
〜 ……ジャリンッ、ザッ、ジャリンッ、ザッ、ジャリンッ、ザッ……! 〜
この世に生を受け…早、百年以上……。たった数年……短い筈なのに……それよりも、圧倒的に長く感じてしまう……
〜 ……ジャリンッ、ザッ、ジャリンッ、ザッ、ジャリンッ、ザッ……! 〜
……あぁ……母なる大地よ……大いなる自然よ……! 私は……私達、家族は……
〜 ……ジャリンッ、ザッ、ジャリンッ、ザッ、ジャリンッ、ザッ……スッ…ガチャリンッ……! 〜
”お父さん”と”お母さん”が巡り合った運命ですか……!? それとも……私達が……”私”と、”弟”が……! この世に生を受け……
――
その証拠として、今の私が見ている視点というのは……以前、ボスが言っていた”
その視点から、ついさっき”両手”が挙げられたのだが……その両手には、
だが、その手枷や鎖に
ふと、目を向けた際に見えた”人影らしき
〜 ……ジャリンッ、ザッ、ジャリンッ、ザッ、ジャリンッ、ザッ……! 〜
諦めんなよ! □□□ー! 頑張れ! 諦めていたら今、何で君は歩いているんだッ!?
……ヴォンさん……!
――変わらぬ黒い世界の中……右肩側から声がする。この視界の持ち主が、ゆっくりそちらを見ると……? 何とそこには、”赤い光の球”が居たのだ……! 実に奇妙な物だ。それが声を発する度に、
〜 ……ジャリンッ、ザッ、ジャリンッ、ザッ、ジャリンッ、ザッ……! 〜
そうだよ、□□□ー! ガンバッテ! アキラめないで……!
……ヴォエナさん……!
――変わらぬ黒い世界の中……左肩側から声がする。この視界の持ち主が、ゆっくりそちらを見ると……? 何とそこには、”緑色の光の球”が居たのだ……! 実に奇妙な物だ。それが声を発する度に、
〜 ……ジャリンッ、ザッ、ジャリンッ、ザッ、ジャリンッ、ザッ……! 〜
……そうですね……。そうでしたね……! 私が物心が付いた時から……貴方達、
〜 ……ジャリンッ、ザッ、ジャリンッ、ザッ、ジャリンッ、ザッ……! 〜
この地獄のような日々の中で……貴方達は、いつも私を励ましてくれた……! この地獄のような日々の中で……いつのまにか、
この
〜 ……ジャリンッ、ザッ、ジャリンッ、ザッ、ジャリンッ、ザッ……! 〜
すみません……。……ヴォンさん……! ヴォエナさん……!
そんな事ないぞ〜? 貸している分、貰える物は貰っているしな?
も〜! ヴォン兄ちゃん! イジワルな事、言わないでよ〜! □□□ーからモラう”マナ”、いつも少なめにしよ〜って、わたし言っているでしょ〜?
〜 ……ジャリンッ、ザッ、ジャリンッ、ザッ、ジャリンッ、ザッ……! 〜
……諦めていたら……ここまで……生きては、いなかったでしょうね……。
――あまりに追い詰められ過ぎた……この視点の持ち主の”
ならば、チョッピリ話をまとめよう。この兄妹、どうやらこの”視点の持ち主”の生まれた頃から、傍にいるようで……日々に
だが現在、確実な事を言えば……先程の”手枷などの物”や、”人などの生物”が……”白い
ただ……身も
そう言った視界が、この視点の持ち主が見ている”
……おい、歩調を乱すなッ! とっとと、歩けッ!
〜 ゲシャァァァッ! 〜
――失礼。この視点の持ち主達に関する事ばかりを実況していて、失念していた。恐縮ながら簡潔だが、周囲の状況も判る限り話しておこう。
今現在、一番前を歩く”母さん”と呼ばれるロングヘアーの”女性”。一番後ろから声だけしていた”男性”と思わしき”弟”と語られていた人物。そして、その二人に”サンドイッチ”されるように歩いているのが……この”視点の持ち主”である、「姉ちゃん」と呼ばれる人物だ。
その三人が”縦一列”に並んでは、
恐らく、彼女達を連行している衛兵……いや、それにしては物々し過ぎるため、恐らく”奴隷商人”か何かの
そして前述の”音”は、姉ちゃんの真横に居た”ソイツらの内の一人”に、蹴られた音であったのだ……。そうして倒れ伏しては……力ない、か細い声でウメキ声を上げていたのだ。
姉ちゃん! オイッ!? このクソ人間がッ!
〜 ブゥゥンッ……ピタッ! 〜
――右側に動く視点。そこに姉ちゃんと同じ背丈程の、”弟”と思わしき人物が……拳を振り被りつつ、現れる……! しかし、その拳が降り抜かれる事なく……弟は唐突に両膝を突いてしまう……!
〜 ブゥォワァァンッ……! 〜
グウォワァァァァァ!? クッ…ソッ……! このッ……”首輪”…め……ッ!
――奇妙な音がしたかと思えば……唐突に両手を掻きむしるように首に当て、地面でのたうち回る”弟”という人物。”姉ちゃん”というこの視点の人物の、悲痛な思いがヒシヒシと伝わってくる……!
だが同時に、その視界には弟の首から”ドス黒い
オイッ! 毎度毎度、
〜 ゲシャァァァッ! 〜
グゥゥッ!?
――横たわり、のたうち回る”弟”という人物の脇腹に……容赦無く”ローキック”が叩き込まれ、ウメキ声を上げる彼。
■■■■ッ!? やめなさい! もう、私達のためとはいえ……逆らわないで!
――”姉ちゃん”と言うこの視点が正面へと戻る。そこには、”母さん”という人物が……”弟”という人物の方に体を向け、声を発していた。その際の
〜 グイッ! 〜
ウッ!?
……おい、歩調を乱すなって、言ってるだろがッ!? 後、コイツらは大事な商品だろうがッ!? 魔物並みに手に負えないとは言えど、下手に傷付けるなッ!
――しかし、その後に言葉は紡がれず……”母さん”という人物は、両手を首に少々苦しげなウメキ声を上げつつ、”姉ちゃん”と言うこの視点の左側へと
彼女を追ってみれば、その視界には首輪に繋がれた”鎖”を掴み引っ張る”フードの男”の頭から、
”姉ちゃん”と言うこの視点の人物の、無意識な”敵対心の表れ”なのか……あるいは、その口汚さに対する”妖精or精霊兄妹”が、そんなイメージを見せているのか……?
だが、いくら彼女らがそう思ったとしても、ヨロヨロと隊列へと戻り歩み出すしかない程……彼女達は、
〜 ギッ…ギッギッギッ……ギィィィィィィィッ……! 〜
――しばらくの間、俯いたり……
やれやれ……やっとこの”クズ商品供”を売り
そんな事言うなよ……? ”黒肌のクソ長耳”以外なんて、メッチャ美人だし……! いらねェならオレが……!
バカ、その”黒肌のクソ長耳”に殺されたいのか? アイツの所為で……オレらが何回コイツらを、お貴族様から”返品”されたと思ってんだ?
わっ、分かってるって……! ただちょっと……言ってみたかっただけだ。クソ亜人なのが、惜しいぐらいだからな……?
――”母さん”と呼ばれた人物の、更に前の方からそんな声が聞こえてくる……! 恐らく、彼女らを連行する”
ホラ、後方からは悔しそうな”
〜 ……ジャリンッ、ザッ、ジャリンッ、ザッ、ジャリンッ、ザッ……! 〜
そんなん言うなら、コイツらを売っぱらった金で……王都の
〜 ……ジャリンッ、ザッ、ジャリンッ、ザッ、ジャリンッ、ザッ……! 〜
嫌だよ、あんなチビ女……! あんな金髪女の何処が良いんだよ……!?
〜 ……ジャリンッ、ザッ、ジャリンッ、ザッ、ジャリンッ、ザッ……! 〜
おいおい……何言ってやがるんだッ!? オレのシルビアちゃんに、何て事を言いやがるんだッ!?
〜 ……ジャリンッ、ザッ、ジャリンッ、ザッ、ジャリンッ、ザッ……! 〜
ちょ、落ち着けって……! ジョー……!?
〜 ……ガチャンッ! ギィィィィィィィ……ッ! 〜
――”姉ちゃん”の視点はボヤけてはいたが……恐らく、様々な
ただ、少々ボヤけていたのは、これが”記憶”である故に……彼女の”印象に薄かった物”は、
ホラ、お出ましだぜ? 気を引き締めて売り込めよ?
――その後、御大層な
この洋館の”
ヒェ〜アレが、この”商業都市マケット”の領主……噂の
――
……ヌッ、フッフッフッフッフッフッフッ……!
――
……ククッ、ククククククククククククク……!
――鋭い目付きで、並ぶ三人を
……フッ、フフフフフフフフフフフフフフ……!
――左右の二人とはまた違う……
そうして、各々が自己紹介でもするかのように……耳障りな笑い声を上げた後、赤い服の男の頭から……
ようこそ……恐れる事はない。今日から……お前達も「家族」だ。
――そこから、この”姉ちゃん”という人物の視界は……ジョジョにかつ、一時的に
グワァァァァァァァアァァァアァァァァッ!
……ククッ、クククク……! そう騒ぐな? 後でいくらでも、お前の家族に治してもらえるだろう……?
――背景が一切見えない。だが、”弟”と思わしき人物のツンザクような声が、部屋の中に響き渡る……ッ!
長耳は良い……実に良い……! 特に回復魔法を持っている奴が……家族になれて嬉しいよ……?
――そんな
オレの
――両手に
……グスッ、ごめんなさい……! ごめんなさい……! アナタ……! ごめんなさい……ッ!
ヌッ、フッフッフッフ……! 大丈〜夫。そんな悲しまなくても〜
――背景が一切見えない。だが、”母”と思わしき人物の……
ベェ〜へッへッへッへッへッ……ッ! お・待・た・せェ〜? 待たせちゃってゴメンねェ〜?
――そんな
ベッドに仰向けに寝かされた状態で、拘束されているらしい”姉ちゃん”に向け……気色の悪い
もう、ボクちん達……家族だからね〜? 家族は、愛し合わないといけないからねェ〜? 君達が来る前……
ヌッ、フッフッフッベェ〜へッへッへッへッへッ……!
――だらしない腹をブルンブルンと振るわせつつ……酷く耳障りで粘着質な声が、”姉ちゃん”に向けられる。しかも、大変恐縮ながら……そんな、ジョジョに彼女へと伸し掛かろうとする”醜い巨体”には、
……だが、ここから先は
たった二つしかなかった”過程”……。だが、ここまで断片的かつ
嫌ッ! やめて下さいッ! どうしてッ!? どうして息子や娘達と……やめて……やめて下さいッ!
――またも、真っ暗な闇の中だ。更に言えば今まで
そう、端的に言うなら……新鮮な空気がほとんど入ってこないような……”地下的な場所”というべきか……。
やめろ……やめろッ! クソ人間ッ! 母さんを……母さんを、何処に連れて行くつもりだッ!?
――初めに聞こえた”母さん”らしき泣き叫ぶ声が響く中……それに続くように、”弟”と呼ばれる人物の、怒り泣く声が響き渡る……!
こうなってしまうのは当然だ……。貴族の間で”たらい回し”にされる事で
――そう言いつつ、優雅な足取りで”姉ちゃん”の視界に入ってきたのは、いつぞやの”初老らしき男”。奴に
だが……相変わらずその目は、見つめる”姉ちゃん”を含め……彼女達を”家族”と呼ぶにも関わらず、
だが、我々は”家族”として友好を暖めてきた……だからこそ今、ちょっとした遊び……”賭け”をしようじゃあないか?
――”初老らしき男”がそう語った時……奴の背後で続いていた
……やめて。やめてッ! ■■■■ッ! ■■■■ッ! 耳を貸さないでッ! 私は大丈夫だから、貴方達は絶対に……!
〜 ドガッ! 〜
……いい加減、静かにしろ。いつまでその、
ッ!? このドグソ野郎ッ! 母さんに何しやがるんだッ!? 殺してやるッ! 絶対にテメェをブッ殺してやるからなッ! このッ、筋肉ダルマッ!
〜 ブゥォォンッ! ゴンッ! 〜
ヴッ!?
――何らかの”小さな丸い物”が、両手首、両足首を拘束されていた”弟”の腹に飛来するッ! 鈍い音共に、彼の腹に命中したかと思えば……その後、彼はグッタリと動かなくなってしまった……!
……お前もいい加減しろ。黒肌の長耳め……! お前の世話が、お前達”家族”の中で……最も手が掛かって、厄介だと言うのに……ッ!
……殺してはないな? ヴァイオよ?
……エェ。大丈夫です
なら良い。そこの母親と一緒に連れて行け。治療をさせろ。
――”姉ちゃん”に向けられていた視線を……”ヴァイオ”と呼んだ弟らしき人物向け、話し掛ける”初老らしき男”。途中から何故か声を潜めていたようだが……この彼女、
だが、ヴァイオが”母親”をぞんざいに床に置いた後……”弟”の方に向かったのを見た瞬間、彼女からは強い”拒絶感”などが伝わって来る……!
……さて、話が
――そう言いつつ、優雅な足取りで”姉ちゃん”へと歩み寄る”初老らしき男”。彼女の視界の外からは、カチャカチャと
もう分かっていると思うが……手短に言おう。
〜 カチャン! 〜
――上記の音がした際に、”姉ちゃん”の視界は、自身の目の前でしゃがみ込もうとしていた”初老らしき男”の顔から、素早くその音の方向へと向けられた……!
だが、その光景をまじまじと見る事は叶わなかった……。自身の両頬を、握り潰されんばかりに掴まれたかと思えば、次の瞬間……! 彼女の視界に、再び全く温かみのない”冷酷な目付き”をした……”初老らしき男”顔の方へと、無理やり振り向かされていたのだから……!
……自由になりたいか?
――”姉ちゃん”は一瞬、耳を疑った。だが、続け様に言葉が紡がれる……!
……言葉は分かっているのだろう? 分かっているのであれば、何かしら反応を示せ……!
〜 ズリズリズリズリ…… 〜
――”姉ちゃん”は一瞬、戸惑った。だが、再び自身の両頬を、握り潰されんばかりに掴まれたかと思えば、”初老の男”へと視界を引き戻され……続け様に言葉が紡がれる……!
……別に答えなくてもいいぞ? それなら一生……貴様らは我が”ディシード家”の……「
――”姉ちゃん”の表情が一瞬、
私はともかく……我が
無論、貴様らも……可愛がってもらって、嬉しいのだろう?
〜 ズリズリズリズリ…… 〜
――【嬉しい……なんて……一度…たりとも……思った事は……ッ!】――ここに来て初めて、”姉ちゃん”の具体的かつ
だが……生憎にも再び、自身の両頬を……握り潰されんばかりに掴まれたかと思えば、”初老の男”へと視界を引き戻され……続け様に言葉が紡がれる……!
流石の御慈愛だ。自身の母はおろか……あの
全く……”価値無き者”を優先するなど、
〜 ズリズリズリズリ……ギィィィィ……バタン! ボッ、ボボボボボッ! 〜
――【……生きとし……生ける…もの達…全てに……
私と…■■■■の……愛を……姉弟と…しての……愛が……! 理解…なんて……ッ!】――再び、”姉ちゃん”の具体的かつ初めてとも言える激情が、私へと流れ出る……!
そして、ドンドンと確実に自分との距離が離れていく音の方向に視線を向けようともしていた。だが……生憎にも
……再び問おう? 自由になりたいか?
――”姉ちゃん”は、その音だけが見える世界の中……”初老の男”の顔の輪郭だけを、激情渦巻く心中を抱えたまま……ただ黙って見つめていた。
……フンッ。本当……
――”姉ちゃん”は、その音だけが見える世界の中……”初老の男”の顔の輪郭だけを、激情渦巻く心中を抱えたまま……ただ黙って見つめていた。
……答えたくなければ、答えなくて良い。そうなれば……貴様が、あの扉の向こうで未だ心配する、”本当の家族”と……同じ
ッ!?
……そう、例えるなら……歴史の闇に葬られるような……
――”姉ちゃん”は何を思ったのか……ジョジョにその体を震わせて行く……!
……フッ。どうした? 青ざめているぞ? 寒いのであれば、”
――”姉ちゃん”の視界が、”画面酔い”を起こしそうな程に……左右にブンブンと高速で動く……!
……フフッ。やっと反応してくれたか……? 全く、私達は親愛なる家族だと言うのに……手間を掛けさせないでくれ……。
――そう物腰柔らかに言うが……”姉ちゃん”の視界が捉えていたのは、相変わらずの”冷酷な目付き”であった……!
……では、最後のチャンスだ……。自由になりたいか?
――”拒否感”と”悔しさ”が入り混じる感情が、私に流れ込む中……”姉ちゃん”の視界が、ゆっくりと上下に動く……!
……では、私の”賭け”に応じるか……?
――再び、”拒否感”と”悔しさ”が入り混じる感情が、私に流れ込む中……”姉ちゃん”の視界が、ゆっくりと上下に動く……!
……グッド! やっと聞けましたよ……これで、ようやく愚弟達との”賭け”よりも……面白そうな事が出来ると言う物だ……!
――不適な笑い声を上げる”初老の男”。
では、賭けの内容を言っておきましょうか……?
――【お母さんと……■■■■の…ためにも……! 絶対に…勝たないと……!】――そんな決意が私に流れ込む中、彼女は真っ直ぐ……目の前の”初老の男”の顔の輪郭を睨むように見つめていた……。
明日から一週間……”
――【……え? 何で……!? お母さんは……ッ!?】――”お姉ちゃん”から一瞬、戸惑う気持ちが私の中に流れ込む……!
そして……私が放つ”追手”から、逃げ続けるのです。
――【……待って。待って!? お母さんは……ッ!? お母さんは、一週間……! どうなるのッ!?】――”お姉ちゃん”から一瞬、”戸惑い”と”強烈な拒否感”の気持ちが、私の中に流れ込む……!
そうして……上手く逃げ切る事が出来れば……貴方達を解放しましょう。親子共々、永久に……
――【……そんな、そんな……お母さん…の事が……! 一切、分からない……賭け…なんて……ッ!? 出来る…訳が……ッ!?】――”お姉ちゃん”から再び、”戸惑い”と”強烈な拒否感”の気持ちが、私の中に流れ込む……!
どうしました? 貴方はさっき……賭けに応じると頷きましたよね……? まさか……今更、
――【……あぁ、母なる…大地よ……大いなる…自然よ……! これが…これが……! 人族の……
だがある意味、それらが
……どうしました? 矢張り、私の”賭け”から……
――”姉ちゃん”の視界が、僅かに
……後悔、悔しさ、悲しさ、そして初めてとも言える……”
……グッド! 楽しくなってきましたねェ……! ムッフッフッフッフッフッ……!
――その不気味かつ嫌らしい含み笑いを最後に……この”姉ちゃん”という人物の視界は……ジョジョにかつ、
〜 ガバサァッ! 〜
「ッ!? ハァ……ハァ……ハァ……ッ!」
――眠っていた彼女が起きてしまった以上……この
「ハァ……ハァ……ハァ……?」
――おっと? まだ私は、”姉ちゃん”と
早速だが、先程の”
自身に何が起こったのか……? ジョジョに収まる息の中……そんな事を思いつつも、辺りを見回す彼女であったが、それは……
「スゥ……ニャァ……スゥ……ニャァ……スゥ……ニャァ……」
「? ……!?」
――上半身だけを起こした体で、右側を見渡していた”姉ちゃん”。彼女の視界には”光”はなかったが……実際は、ボンヤリとした薄明かりの中……その”音だけが見える世界”に飛び込んでいたのは、どれも彼女が”初めて”
見た事のない
一瞬、ここが”あの世”なのかと思っていた”姉ちゃん”だったが……ふと見た自身の”両腕”や”両手”を見て、その”仮説”が即座に間違いだと気付くのであった……!
「……ッ!?」
――一週間近く追われ続け、常に追い詰められる中……いつもギリギリの魔力量で、何度も何度も”自身”と”弟”の治療を繰り返し、逃げ続けていた筈……。それにそんな中……”食糧探し”どころか、自分達は”
なのに、汚れ
何よりも、ここが”あの世”でない確証となったのは……全く見覚えのない
〜 ……スンッ、スンスン……ッ! 〜
「……ウ〜ン、何のニオイ……?」
――そんな”姉ちゃん”が、両手を”胸の
耳が良いのか”姉ちゃん”は、その
彼女の中にある知識では……獣人とは、自身達”エルフ”のように……
「……フニャァァァァァ……ッ!」
――獣人特有の、
僅かな間にそう思っていた彼女だったが……それを上塗りする光景がまたあった。それは、獣人の少女が身にマトウ服だ。いいか?
彼女の知識よれば……獣人は、基本的に”生まれたままの姿”で生涯を過ごすらしい。そこは
だが、寝ぼけ
そんな彼女の中では、更に更に”
「……ウゥゥ〜ン……アッ! エルちゃん、オきたんだね!」
――
「ねェねェ、エルちゃん! ボクの言っている事、分かる?」
――変わらない獣人少女の呼び方に、苦言を漏らしたい気分になった”姉ちゃん”。だが、質問に対しては特に断る理由もなかったのか……大人しく
「……アァ〜良かった! ちょっとマってて! ボスをヨブねッ!」
――『ボスを呼ぶ』……”姉ちゃん”には意味が分からなかった。何故なら、そう言ったのにも関わらず……目の前の獣人少女は、この
「ボスゥ! エルちゃんがオきたよ〜!」
――なのに……まるで、目の前で話しているかのように語る獣人少女……!? そんな”姉ちゃん”の中では、更に更に更に”
「えっ? 何で”エルちゃん”って呼ぶのかって? ナマエが分からないからだよ〜。だから、ボスが言っていた”エルフ”から、”エルちゃん”……って、呼んでるのさ〜」
――多少は納得した気持ちを漏らす”姉ちゃん”。だが……機会があれば、何かしらでその呼び方をやめて欲しいという思いは、まだ残っているようだ……。
「シツレイにオモッテいるカンじはないよ〜? ……えっ、イヤ……ネてない! ネてないってばッ! ちゃんとオキて、カンビョウしてたってばッ!」
■■■ー? 詳しくは分からないけど……どうやらそこの獣人は、”何かの魔法”を使って話しているみたいだよ?
だね〜。全く見た事ない
……話したのは私じゃあないぞ? 恐らくだが……たぶん”姉ちゃん”の”
「……ウン。テントの中は、アッタカクしてるよ? ボスからモラッた”ヒバチ”にも……ちゃんと”ビンチョウタン”……だっけ? とにかく、それを入れてアッタメテるから! サムくないからね!」
……ちょっと? 勝手に決めつけないでくれるかな?
そ〜だよ! ”ヴォン兄ちゃん”の言うトオり、マチガワないでよ〜!? それに、あんまり大声出さないでよ〜! ダレカサンッ!
……エッ!?
「……ウン、ウンウン……分かった。ハナして、オチツカせてれば……イイんだね? ウン、分かったッ! 早くしてね〜? ボスゥ?」
……済まないが……ヴォンさん? ヴォエナさん?
……何だよ?
……何よ!? ダレカサンッ!?
……ダレカサンじゃあないッ! 私は……私は、そうッ! 「ミスター・N」と申す者だ。
……ミスター……?
……ナレン……?
――そうだ。大変恐縮だが、お二人さん。貴方方が大事にしているそこの”エルフ”に、私は悪影響を及ぼすつもりは毛頭ない。だから、またも恐縮だが……そちらには、うるさくて大変申し訳ないかもしれないが……! 今後は極力、私に干渉する事は……ご遠慮願いたい……ッ!
……エェ〜今もウルサイんだけどな〜?
……エェ……!? そんな事を言われてしまうと……ッ!?
……まぁ、待てヴォエナ? 一応、この”ナレンさん”のお願いを飲んでやろうぜ?
……エェ〜何で〜”ヴォン兄ちゃん”〜?
僕らが、■■■ーと一緒に……”あの地獄”にいた際、
……あっ、そっか! そう言う事なんだね! ”ヴォン兄ちゃん”ッ!
……何が、そう言う事なのだろうか……?
黙れよ、ナレンさん。アンタが俺らより”
――あっ、ハイ……すみませんでした……。(お願いする身とは言え、何で私が謝るの……!?)
……ヨシッ! じゃあ、なるべく……あの獣人と、獣人が言っていた”ボス”って奴って時だけに、喋れよ? じゃあないと……!
――分かりました、分かりましたよッ! 何か訳分からない内に、話の主導権が持って行かれた気がするけど!? 善処しますから、マスカラ、分かりましたよッ!?
……モォ〜ヴォン兄ちゃんッ! ナレンさんに、イジワルはメッ!
……アッ、アァ……ゴメンなヴォエナ? 僕が悪かったよ……。
……(この精霊さん……とんだ、
何か言ったか?
――嫌ァァァァァァ!? 何もッ!?
……本当か?
――ゔぉ、ヴォンさん!? と、とにかくッ! ホラッ! 今後は、お互い”良好な関係”で行きましょうねッ!? ジュワアッ!
おい、ちょっと待てッ!?
バイバ〜イ! ナレンさ〜ん! また、オハナシしようね〜?
「オ・マ・タ・セェ〜! リルちゃん! ボスが来るから、ちょっとマっててホシイんだって! ダイジョ〜ブ?」
――た、大変申し訳なかった……! ◯者の諸君ッ! 予想外の緊急事態”宣言”……じゃあない! 緊急事態にッ! その対処に手こずってしまっていたッ! 本当に申し訳ない……ッ! この間に、数十分もの時間が過ぎて、とっくの昔にボス達はご就寝してるんじゃあ……と思うかもしれないが、ご安心して欲しいッ!
今回は”特別措置”として、緊急事態が発覚した際から……極限まで、
だから、上記のように……オルセットの会話内容としては……ホラッ!
だから、大変恐縮ながらッ! ”私の実況”と”この物語”を、出荷直前の養豚場の豚を見るような……”冷めた目付き”などで見ず、読んで欲しいのであるッ! 確実かつ、切実なッ! 私からの”必死こいたお願い”なのであるッ!
〜 ……コクリ。 〜
「アリガトねェ〜。……ところで、エルちゃん? その
〜 ……コクリ。 〜
「……フ〜ン。じゃあ何で、さっきから……
――そう、オルセットさんよ……良く聞いてくれたッ! 私もずっと”奇妙”に思っていたのだが……。
この”姉ちゃん”と言われた人物……。先程の”
一応、明言しておくと……先程の”悪夢”の中で、彼女が喋っていたのは……全て”胸の内”。一言も、
だが、彼女の視点からは……自身を見つめつつ、小首を傾げるオルセットに続くように、彼女もまた”困り気味の気持ち”をこちらに流しつつ、首を傾げていたのであった……。
「……ノドがイタイの?」
〜 ……フルフル。 〜
「……その
〜 ……コクコク。 〜
「ナルホド〜。でも、やっぱシャベレないんだよね?」
〜 ……コクリ。 〜
「……ノドをケガしたの?」
〜 ……フルフル。 〜
「……エルちゃんのキズを、ボクがオウキュウショチしたトキに……”ポーション”をツカッタんだけど……それでも”ナオらないケガ”なの?」
〜 ……フルフル。 〜
「エッ? じゃあ、ナオッタの?」
〜 ……フルフル。 〜
「ウ〜ン、分かんないよ〜ッ! ……ホントに、何もシャベレないの?」
――両手で軽くながらもグチャグチャと、髪の毛を掻き回すオルセット。それを見た所為なのか……この時だけは、チョッピリ
だが、もう聞くネタが尽きてしまったのか……オルセットは、彼女を真っ直ぐと見つめたまま黙ってしまうのであった……!
「……あっ、そうだッ! ねェねェ、エルちゃん! ボスをマっているアイダ……オモチ、タベるゥ〜?」
「……?」
「ボスのコキョウのタベモノなんだって! ボクは見た事ないんだけど……何でも”モチゴメ”ってモノを、”ハンマー”でブッタタキマクッテ作るんだって!」
――その”オモチ”と”モチゴメ”……更にその”
そして……その取り出した袋から、またも見た事ない”
彼女の検討が全く付かないまま……オルセットはその”
「ボクがスキな”オニク”じゃあないけど……タベてみたら、オニクみたいな……クチャクチャ! ……って、ハゴタエにビックリしたんだよ! それにそれにィ〜しばらくカンデるとォ……ダンダンと”甘く”なってくるんだよ〜オモチって!
それがオイシクテね〜? イガイとボク、スキなんだ〜」
――彼女の知識か経験則なのか……”姉ちゃん”は、そのオルセットの拙い説明から”モチゴメ”は、
そして”
「アァ〜けど……ヤケルまで、ジカンがカカルから……もうちょっとだけ、マっててね? エルちゃん?」
「……フフ」
「……エッ? エルちゃん……笑った?」
――警戒していたのが馬鹿馬鹿しい……そんな思いが私に流れ込む中、”姉ちゃん”はゆっくりと首を縦に振るのであった……。
「エェ〜、ナニナニィ〜? ボクの何がオモシロかったのさ〜?」
――少々困った感情が私に流れ込む中……”姉ちゃん”は、軽く小首を傾げていた……。
「ウ〜ン、シャベレないって分かってても……やっぱ、分かんないよ〜!」
〜 バサァ……! 〜
「よぉッ! 待たせたな、オルセット?」
<異傭なるTips>
オルセットが”エルちゃん(仮称)”と呼んでいたエルフ……。彼女の知る限り知識だと、オルセットのような獣人族は、下記のような特徴があるらしい……。
(生態、思考)
・エルフと同様、自然と共に生きる種族らしい。
・端的に言えば「弱肉強食」……あるいは、「強い者が正義」。……という価値観を持つらしい。
・基本的に”生まれたままの姿”で生涯を過ごすらしい。
・それでも”自身の強さ”を誇示する証として……討ち取った強大な”魔物の皮”や、名のある
・また、争いなどで負けた者は……基本的に勝
・基本的に……神様を信じるよりかは、「己の力」と考える者が多いらしい……。
・種族全体の特徴として……主に人間よりも、”腕力”や”走力”など……様々な身体能力に
・また、種族によっては……空を飛んだり、圧倒的に長く水中に潜っていられる種族など、
・全体的に、
・ただ、使えたりする者は少なくとも……それは”火魔法”などの属性に関する魔法で、
・だが、中に
・基本的に、「強者が正義」な価値観だが……一応、
・その生涯を生まれた場所からほとんど離れる事なく……人間の社会に進出する者は、種族全体の
・また、進出できたとしても……大体は、人間からの”差別の対象”にされやすいらしい。
・更に言えば、人間者社会に進出し……一定の地位や財産を築ける者は、進出した十パーセントよりも少なくなる上に、大抵は”奴隷落ち”してしまうらしい……。
・ただ、不条理に”奴隷落ち”ばかりになるのではなく……大半は、人間が与える仕事をこなすも満足がいかず……耐えかねた末に”乱暴を働いてしまう者”が、後を絶たないらしい……。
・それでも、「愛玩動物」の如く……”人間の悪意”によって、不条理に囚われては奴隷生活を送る羽目に陥る者も、少なからずいるらしい……。
・しかも……ここ最近で、その種族の総数は……
・使用する言語は、基本的に”各地に根ざした言語”を使うらしい。(王国の付近なら「王国語」、教国の付近なら「教国語」と言う風らしい……)
・だが、非常に
・平均的な寿命は、六十歳前後。最長でも、人間よりも短い”百年”を越す者は多くないらしい。
(趣向、癖)
・主食は主に肉類。しかも、”生肉”で食べても大丈夫な頑強な胃袋を持ち……料理をするという文化を持つ部族もほぼないらしい。(参考に、地球の肉食動物が何故、”生肉”を食べても平気なのか……ザックリ言えば、根本的に、
・また、肉ばかりではなく、植
・身体能力を”誇り”や”命”にする者が多い種族故か……寝起きなどには必ず”準備運動”や、体を伸び伸びと
(伝承、噂)
・好意を示す際には……相手の頭などに、自身の頭を擦り付けるようにして、”自身の匂い”を擦り込ませるらしい……?
・基本的に、獣人族は神を信じない種族ではあるが……彼らの祖となったらしい”フェンリル”には、本能的に頭が上がらないらしい……?
・ウォーダリアの北……”人類”及び、”亜人”などの様々な多種族でも到達出来ないような、「未開の大地」には……その中で生き延びている上に、”竜をも
……だそうだぜ? ボッヨヨ〜〜〜ン! (by,噂話が大好きな奇妙な石)
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