第6話 RE:Mission-5 迷イ猫ヲ救助セヨ
〜ピロン!〜
【称号〖The Live〗を獲得しました】
【これより、”ザ・ストリーマー”を支援物資として投下します】
「……フゥ……」
――目の前に映る
そう
そして何故か、広場の形に
……ハァァァ……人を殺した後ってのは……こんな感じなのかぁ……。
何だろう……
――そう、彼は心の中で
……ハハッ、またかよ……。
けどまぁ……息が上がるなんて久し振りだし……。
――【……初めての
……おい。
――はい?
……お前……
……いえ? 貴方の
いや、馬鹿にしてんじゃあねェよッ!? お前ッ、
何処に居やがるんだ!? 何でオレの
……みたいな事してやがんだよッ!?
……そうは言われましても……私は、私が貴方の
いやッ!? 大迷惑だよッ!? 野球どころか、スポーツ選手にすらなった事も無いオレを何で「実況」なんてするんだよッ!? 何でオレの頭の中で話し掛けてくる必要があるんだよッ!? テメェに何のメリットがあるって言うんだよッ!?
……それなりの理由はありますが……良いのですか?
……はっ? 何だよ? 理由でも聞いちゃあいけないのかよ?
……貴方が、本当の
……あっ、ヤベッ……! 早く
……後、おい! これ以上余計な事を、オレの頭に送り込んでくるんじゃあねェぞッ!? 良いなッ!?
……そう言われましても、しない限りには”貴方の物語”は
……まぁ、ここは”彼の意見”を無視する事で良しとしましょう! そうしましょうッ!
「おいッ! しっかりしろ! おいッ!」
さて、そんな彼ですが……現在、木の幹にもたれ掛かる様に座り、意識を失っているであろう「獣人の女性(?)」に、片膝を着いて声を掛けている訳だが……。
……ピクリともせず、
そこから彼は、軽く彼女(?)の肩を叩いたり、揺り起こそうともしたが……。
……それでも彼女は、”ピクリ”とも微動だに体を動かす事はなかった……。
「……
――思わず右手で髪を
どうやら、
うっせぇなぁッ!? ドラマとかで、”医者な主人公”とかもカッコイイと思うけどさぁ! ”暴漢”とか”モンスター”とかに襲われた際に、
戦わずに逃げ回ったり、隠れてばかりなんて……
てゆ〜か!? さっき喋んなって言ったばかりだろォ!? おいッ!
……君は
大体……英雄と言っても、誰もが思うような
……
……ヤなこった! オレは、
……OK、分かった。これ以上は追求しない……。
だが、このまま私とのお喋りを
……だったら喋んなよ……! クソッ……。
――ヤレヤレだぜ……と、私も呆れたいのは山々だが、ここは我慢して私の勤めを果たして行こう……。
さて……この束の間、タメ息を吐きながら呆れ果てた彼は、気分を仕切り直そうと思ったのか……
……とは言っても、その全容は彼女(?)が身に纏っていた”黒いフード付きのローブ”にすっぽりと隠され――フード等を脱がさない限り、それ以上の容姿を拝見する事は不可能に近かったのだが……。
「フゥ……。(おっ、落ち着け……傷とかを確認するためだ……。断じて、オレの”スケベ心”の元に触るんじゃあない……ッ!)……すっ、すみませぇぇぇん……」
――”
居酒屋の
〜 ピョコン! 〜
……と言ったような”擬音”が聞こえてきそうな
……えッ? 何々、【……大佐ぁ、”耳”だ……人の頭の上に”ケモミミ”があるんだ……!】――興奮するのは良いが、何故に”
……えっ? 【どうでも良いだろッ!?】――って? あっ、そう……。
まぁ、そう抗議した彼は続けて今も
「ッ!?」
〜バッ!〜
――覗いた一瞬、彼はローブを手放し……全力で全身を背後の方向へと向けたのである。……はて? 一体どうしたのだ? まさかここで、実は「男」だった……
じゃねぇぇぇよッ!?
おっ、”彼女”と断定すると言う事は、それはそれは”たわわ”とした立派な
じゃねぇぇぇだろッ!? 何、サラッとセクハラ発言してんだよッ!?
……およおや流石、英雄を目指すというだけに非常に
……あ……あるには……あったよ……。
キレイな形の……そこそこっぽい大きさの奴が……。
ホウホウ……。
……けどなぁッ!?
……んっ? それはどういう事だ……?
いやだって!?
……んっ? 下着は?
……なるほど、つまり君が助けたのは
良しッ! 今すぐ顔を出しやがれッ!
今言った事を、盛・大・にッ! 後悔する程、ブン殴ってやるッ!
後、彼女に土下座しやがれッ! 今直ぐにだッ! クソがァッ!
……だと言う
……
ホラホラ、そんな
……ハァァ……そうだな……。
「……再び、スミマセン……ッ!」
――そう呟いた彼は、極力彼女の
結果としては、改めて見た彼女の左頬は、痛々しそうに赤く
「……うわっ、ヤベェ……!
……確か”内出血”だっけか? 青なじみが出来る原因は……?」
――
「あの人の
「……そっ、そうだ!」
――しかし、何かを思いついたのか……慌てて【えぇと……”ミリタリーバックパック”ッ!】――と”
すると……何故か、先程のように右手は光らず――代わりに、ボスの目の前に
当然、彼は新たな召喚パターンに腰を抜かして驚いてしまう。
だがしかし、”そんな事言ってる場合か!”……と即座に復旧された腰と脚もフル稼働させ、バックパックの元へと
〜 ゴソッ、ゴソゴソッ、ゴソゴソゴソゴソ……ガッ! ブゥゥンッ! 〜
「クッソォッ! 何で、
――彼が期待していた物……それは、最初のスキル獲得時に表記されていた「ミリタリーバックパックの”中身”」であった……ッ!
自身が初めて入手したスキルなのだ、それなら……ゲームなどで初めに渡される
……そう彼は期待して、バックパックを
だが、現実は違った……。
彼が物色していたバックを、思わず
医薬品は勿論、ナイフなどの”武器”どころか……缶詰など”食糧”も含め……バックの中には、何も入っていなかったのだ……。
「クッソォ……!
――先程までの”
「……ヤラれたお前らには、もう必要のない物だろ? 頼むから……”回復ポーション”とか、使える物を持っててくれよ……ッ!」
――まるで「自身を正当化する」よう、
「……クソッ! 金じゃねェんだよ! 今、必要なのは……!」
――一番初めに調べた「ザカリー」と言った男の死体からは……”
「……クソッ! 割れちまってる……ッ!?」
――次に調べた焼け焦げた
恐らく、コレが彼がお目当てにしていた「回復ポーション」だったのかもしれないが……死体が倒れた際に、割れてしまったのであろう……。
「……アァァ、クソッ!
テメェは、マトモな物すら持ってねェのかよ……ッ!?」
――最後に調べた、他の二人と違って血痕や焼け跡がほぼない「ヒャルバ」と言った死体……
「うっ、ウゥゥゥ……ンン……オレは……?」
〜 ブゥゥンッ! バキャアァッ! 〜
「アビャシィィッ!?」
〜 バタンッ! 〜
「……起きる暇があるなら、手持ちにポーションの一つくらい持っとけよ、クソ野郎……!」
……とまぁ、意識を取り戻しかけた所に彼の”顔面パンチ”により、ギリギリ死体……にはならずも……再び眠らされ、
そして、予想外な事だったのか、はたまた薬が無かった事への
比較的、3人の中で
……だが、彼はそれを行う事はなかった……。
先程から、他の二人と同様……いやそれ以上に、
……最も、それ以上に
……良いのか? 本当に?
……”ロマン”と”周囲に
そもそも、あんな”ダサい”上に”
……良かったね。他の
……要らぬ心配、ど〜もありがとう……だから黙っとけよ、クソ野郎ッ!
お〜怖い怖い……。……しかし、これは
君の思っている”本心”まで、出来る限りありありと……”○者の皆さん”に語って行かなければならないのが、私の使命……!
「……い、痛い……ウゥゥゥゥ……痛い……よう……!」
「ッ!?」
〜 ザッザッザッザッザッ! ズザァァ〜ッ! 〜
「おいっ! 大丈夫か!? オイッ!?」
――彼女の元へと駆け足で近寄り、滑り込むようにしゃがみ込みつつ、声を掛ける彼。
「痛い……痛いぃぃ……痛い……よう……!」
……しかし、彼の声に応答する事なく――彼女は、青痣となった部分を強く押さえながら
「あぁぁ……ッ! どうすりゃあ良いんだよッ!?
”回復魔法”なんてオレは使えないし! じゃあ、こんな周囲が自然豊かなら――ドラ○エの原点に戻って、”やくそう”を……って、考えてもッ! そもそもオレは山菜どころか、
――余りの自身の無力さ故に、止まらぬ
その一方で、彼女の悲痛な声はジョジョに痛々しさを増していくばかり……。
そんな姿を頭を抱えながら横目で見ていた彼であったが、一瞬目を
……このまま見捨てても……。
……しかし、彼は盛大に
「……何を考えてんだよオレ……。
そりゃあ……装備どころか、食料もまともにないって分かったこの状況……!
困ってそうだったから助けたモノの……この状況を考えるとそれ以上は……。
あぁぁぁぁあぁぁぁぁ……ッ! 何を考えてるんだよッ!? オレェッ!?」
……自身の無力さと焦燥感が、
彼女に背を背けながら、思わず
しかしながらも……イイのか?
いい加減、黙れよッ!
さっきから真面目にやってたと思えば、急におちょくるような発言をしやがってッ!? テメェは喋ってばかりで、
……なくはないですよ、助ける”体”がないだけで……。
じゃあ、今すぐにでも作れよッ!
オレの
……そうだったら、既に作っていますよ……。
……お前、マジで分かってんのかこの状況ッ!?
食料もねェ! 医療品もねェ! ハッキリとした現在地も分からねェッ!
「
……
……ハァァァァァァ……アホらしくなって来た……。
……ようやく、ご理解出来ましたか?
あぁぁ……テメェが、「実況」とか言う……喋るしか能のない、
えぇぇ……私は役立たずです。
……しかし、私が”クソ野郎”ということは訂正させて頂きつつも……。
私と
……。
……助けるだけ助けといて、後は
……
……。
――私の言った事に、何を思ったのか……彼は焦燥と
「……あり…が……と…う……」
……
腹の青痣によって、大分体力を
だが、彼女は再び目を閉じ……糸が切れたかのように、僅かに上げていた首でさえも地に
〜ザッザッザッバシッ! ザッザッザッグイッ!〜
「クソォォォォォォォォォォォォォォォォッ!」
――しかしながらも、絞り出した彼女の一言は……それまで「
そしてそして、聞いた瞬間に
……数十分後……。
「邪魔だぁぁッ!
~ キンッ! シュボッ! ズバンッッ!~
「プギァァァァイィィィィッ!?」
〜グンッ、ドゲシャアァァッ! ザッザッザッザッザッザッ……〜
「ハッ、ハッ、ハッ……頑張れ……! 絶対、助けてやるからな……ッ!」
「……」
――走行中の射撃……。
これは、”現役の軍人”や”銃火器のプロ”が行なったとしても、中々綺麗に命中させる事は難しい物なのである。
しかしながらも、これが”主人公補整”という物か……はたまた、必死故の”偶然の奇跡”という物なのか……!? 走行中の彼の反対側から迫っていた、
それも「フリピス」を、片手かつ走行中に不安定になる照準で、魔物らしき”三つ角の巨大猪”が
しかしながら、彼は勝ったのだ……! それも片手間と見間違われんばかりに、眉間付近に銃弾を受け、倒れ
……本人は必死故、気付いてないかもしれないが……地味にカッコイイ物である。
必死でも、
……黙ってろって、言っただろうがッ! クソがッ!
おっと失礼。
……しかし、何故に唐突に
当てがないって……さっきの
……はて? 何であっただろうか……?
あぁぁぁもうッ!
これ以上は、転びそうになるから話しかけんな! クソ野郎ッ!
「……ごめん……ゴメンね……ゴメンね……!」
「ッ?」
――私の発言に、しかめっ面をしていた彼だが……そんな表情も背中から唐突に聞こえた彼女の弱々しい”謝罪”の声に、急に戻ってしまう……。
……だが、それだけではない。
〜グッ! ギュッギュウゥゥゥゥゥゥ……ッ! 〜
「ッ!? ちょッ、ナッ!? くッ、苦しい……ッ!」
――なんと!
彼女は唐突に謝り出しつつも……唐突に彼の首に回していた腕で、彼を
片時も休まずに走り続けていた彼だったが、流石にこれにはたまらず足を止め……何とか彼女の腕を振り解こうと、両手を掛けて力を込めるが……!?
「ッ!? まっ、マジかよ……! はっ、外れねェ……ッ!? うぅぅ……!」
「……ゴメンね……ゴメンね……ゴメンね……!」
――だが、予想外に強い彼女の力の前に……一向に、首に絡みつく腕が外れる気配は全くない……! それどころか、ジョジョに彼女が腕に込める力は増していくばかり……!
【……このまま……後ろに倒れて、叩きつければ……!】――走り続けた疲労により両脚が震え続け、彼が
唐突だが……これは彼の奇妙かもしれない”癖”、あるいは”信念”かもしれないのだが……。
【どんな事をされても、理由が分からない限りは
この世界に訪れる以前、その”巨体”と”顔のとある特徴”により……何かと「誤解」される事が多かった彼は、「確認」する事を欠かさなかった……。
自身の姿を見て怯える人がいれば、【に……睨んでないよ! ちょっと……き、気になっただけさ……】――だとか。
アルバイトをしている際に、指示された事に不安を持てば、【すっ、すみません……宜しければ…もう一度、説明をお願いします……】――だとか。
このように主に「
だからこそ……【……イヤ、理由も……何も聞けてないのに……叩きつけるのは……ッ!】――と、
「あっ、安心しろ……ハァハァ……大丈夫、大丈夫だ……ハァハァ……絶対に……! ハァハァ……
――【どんな理由があれど……オレは……
……<
しかし、現在進行形で首はドンドンと締まっていたためか……半ばヤケ糞気味に、彼は賭けと思っていた
首が絞まり、途切れに途切れになる言葉……
「……ゴメン…ね……」
――先程とは打って変わった、
「……ゲホッ! ゴホッ! ゴホッゴホッ!
ハアァァァッ! ……ハァハァハァハァ……だ…ダメかと思った……ッ!」
――解放された
「スキャン」はしていなかった彼だが、【……出来れば見たくないな……】――と内心、
そして……粗方呼吸を整えた彼は、深呼吸も
「ハァハァハァハァ……ハァァァァ……。
おい……何でオレの首を
「……」
「おいッ! しらばっくれてないで答えろッ! 何でオレを殺そうとしたッ!?」
「……痛い……痛いよぉ……」
「……ハァァ……それが
――【……これ以上の追求は止めとくか……助けられなくなるのは絶対、嫌だし……】――呆れきったタメ息を吐きながら、彼は気持ちを入れ替えるために彼女を背負い直すと、【よしッ!】――と小さく気合一髪! 再び、道なき森の中を駆けて行くのであった……ッ!
「……」
――しかしながら、森の中を駆けて行く中……彼はどうしても”
これは、彼が
では、その声と彼女の声を比べてみると……?
「憎悪や軽蔑」ではない……只々、「悲痛」……というのが彼の見解であった。
しかも、これは彼の
だが……彼は
元から彼は”名探偵”でもある訳じゃあなく……それ以前に、名探偵であろうと「彼女の過去」を知らねば、それ以上に「彼女の過去に何があったのか」と言う事を推理する事は、到底不可能なのだから……。
推理に必要な”判断材料”が極端に少ないが故に、彼は小さく頭を振った後……再び目的となる「トルガ村」を求め、道なき森の中を駆けて行くのであった……!
……数十分後……。
〜ドサッ! バンッ!〜
「クソッ! 何でどの家も、助けてくれねぇんだよッ!?」
――荒々しく座り込み、もたれ掛かった”とある家の壁”を右手の
ここまでの脚の疲れは何処へやら……そこからの行動は早く、
彼が軽いノックをした後、中から村人らしき男が出てくると彼は……。
「すみません! 急に押し掛けるようで申し訳ないのですが……怪我人がいるんですッ! どうか
「……何だよ急に? ……ッ!?
そ……その背中の
……彼の会話の最中、一瞬彼の背中を見た途端――村人は一瞬、”バツが悪そうな表情”をした後……この一言切り出し、早々に扉を荒々しく閉めてしまったのである。……勿論、彼が再度ノックするも反応ナシという徹底ぶりで……。
「あぁ……クソォォッ!
ここを断られたら、他の何処にアテがあるって言うんだよ……ッ!?」
――
しかし、
「あぁ……マジでどうしたら……!」
〜 ……ギィィィィィ…… 〜
「……誰だい? ウチの入り口のドアを壊そうとした
――【本格的に手の打ちようがねェ……!】と、半ば諦めの境地に達していた彼が、顔を俯けたその時……! 彼が傍にあった扉が、年季の込もった音と共に一人でに開き……”ヌッと”、中からシャガれた声の老婆らしき女性が顔を
彼女の言葉を察するに、彼が
「あぁ、良かったッ! すみませんッ! 助けてください!
そこで寝ている彼女が怪我をして、今にもヤバイ状態なんです!
ですから……どうかお願いしますッ! 彼女に”薬”と……”寝る場所”を提供して下さいッ! お願いしますッ!」
――【……頼むッ! もうこれ以上、断らないでくれェェッ!】――そんな
しかし、扉の隙間から見える老婆は彼の言葉を聞いた途端……顔を
「……うるさいねぇ……! アタしゃ、歳食ってもそれなりに耳が良い自信があるってのに……。なんだい!? 扉を壊そうとした上に、そんな怒鳴り声みたく
「(……えっ、わ……「ワサ」? 口癖か……
あぁ、すみません……扉を強く叩いてしまった事は謝ります……。
……なんせ、今までこの村の家中に頼み込んでも……誰も助けてくれなかったモノで……。それで……つい……
……一瞬、”失礼な発言”を
しかし、老婆は彼の発言を聞いても
「……フンッ……そりゃあ、オマエさん……そんなの
アンタみたいな”
ただでさえ、人を襲う”魔物”が居て……人を騙して奪い犯す、”盗賊”だって道を歩けば
そうだってのに……オマエさんみたいな
……って、アタしゃ程じゃあなくても――誰だって、変に
「……えっ!?」
――【……そういえば、中世の王国とかの国内でさえ……村々や街が日本の”戦国時代の国”みたいに孤立したようになって、
しかし……そう思えるのなら、先程の服はやはり
そもそも……<ボロボロの女性を背負った、見慣れない奇妙な服を着た男が、急に助けを求めに来た>……という絵面を見て、即座に”助けよう”と思う心優しき人がどれだけいるであろうか……?
……お気に入りなんだよッ! この服はッ!
「……んで? なんだい? 急に黙りこくって……? 用がないなら、アタしゃもう寝させて貰うけどねェ……」
「ちょちょちょちょッ!? ちょっと待って下さいよッ!
まだ夕暮れ時ですよッ!? 陽が沈みきってないじゃあないですかッ!?」
「……何言ってんだい? オマエさん?
――呆れたような声で、「ヤレヤレ……」と首を左右に振りながら話す老婆。まぁ、彼女の言い分も分からなくない。
一方、彼はというと……急に煮え切らない態度で、小馬鹿にされた事に腹が立ったのか……少し怒気を含めた口調で言い返すのであった……。
「……分かりましたよ……それも謝りますから……。
それよりも、本当にお願いしますよッ! 今にでも彼女が危ないんですッ!
だから……少ないですけど……報酬も払いますッ! ですから、彼女に”薬”と”寝る場所”を……」
――と、先程撃破した”野党共”からチャッカリ
「……後、その
「えっ?」
「知らないワサ? この国じゃあ……奴隷に登録されていない”亜人”を連れている事は、
……そうすると何だい? オマエさん……どこ出身なんだい?
教国? 帝国? それとも……アタしゃも知らない辺境かどこかかい?」
「……いや……そうじゃあなくて……知らない間に……」
――【クソッ! また奴隷かよ……!? しかも、国が奴隷を……ッ!?】――内心、怒りが爆発しそうになるが何とか
「知らない間に? ……ふ〜ん、言えない事情か何かでも? まさか……次には、”
「……お恥ずかしながら、そうなんですよ? お婆さん……?」
――面倒臭くなったのか……はたまた、無駄な問答をしている暇はないと判断したのか……。怒気を含ませた――多少イラついたような声で、彼女の質問に答える彼。
一方で、老婆の方は面喰らったように
「……だから、何処出身か? ……と聞かれても……答えられないんですよ。
――覚えてないと言えば嘘になる。
……だが、彼はその家族や友人の”体格”や”顔立ち”、”性格”などは、全くと言って良い程――僅かどころか、朧げにでさえ覚えていなかった……。
そんな
「……家族や……友人……もしかして……
「えっ? ……はい……多分……」
「……そうかい。……オマエさんも……私と同じ……「はぐれ者」になっちまったってぇ……訳だワサか……」
――一方で、頭の上に大量の
もう一方で、勝手に何処か過去に思い
余りにも突拍子な展開に彼は一瞬、怒りを忘れてしまっていたが……後ろからの呻き声に”ハッ”と気付くと、何としてでも彼女の家に上がらせてもらおうと、閉じ掛けていた扉に一層、力を込めようとしたところ……!?
〜 ギィィィィィ……バタンッ! 〜
「ッ!? 痛ッてェェェェェェッ!?」
――彼が両手に力を込めるよりも早く、両手を掛けていた
「……な〜にやってるだワサ?」
「……な〜にやってるだワサ? じゃねェよッ!? 何しやがんだよッ!? このクソババアッ!?」
「おぉ〜お? 良いのかい、オマエさん……?
せっかくオマエさんらを
――【……どう見ても、お前は”ババア”だろうがッ!? 後、下手クソな”泣き真似”しやがって! テメェの方が舐めてんだろッ!?】――と、心の中で散々な”悪態”と”暴言”を撒き散らす彼。
無論、老婆を見上げる際の口角も不自然にピクつく……! しかし、ここで彼が怒りに任せ……”拳”も”腰の銃”も老婆に向けないのは、老婆の”助けてくれる”という発言があったからだ……。
それに、背後の彼女の声も……彼の理性に対する”
「……あぁ……すまない。助けてくれるってのに……怒鳴ったり…しちまって……」
――服の汚れを払い、踊り場の床に強打した顎を擦りつつ……起き上がりながら、しどろもどろに言う彼。
「……おや? お貴族様のボンボンにしちゃあ、
「おい、オレを試したのか?」
「いいや? 初めにオマエさんが転んだ事以外はね……?」
「……いけ好かねェなぁ……」
「悪かったワサ……。けど……今みたいに小馬鹿にすると、大抵の
「……オレがホントの”バカ貴族”だったら、どうしたんだよ……?」
――”馬鹿貴族”と話したあたりから、まるでイタズラを始めようとする
目に目えて、小説などでよくある「貴族とのトラブル」や「貴族に因縁がある」……と言った展開が、この
それ故、彼は再び怒りを忘れて”
「……アタしゃ老い先、短い身……。例えオマエさんが、本物のバカ貴族でアタしゃを八つ裂きにしようとも、心残りは……【畑が無事か?】――って事ぐらいの、どうしょうもない”ババア”だよ、アタしゃ……」
「……」
「……さっ、それよりもお入り。さっさとそこの獣人の嬢ちゃんも、早く入れてやるんだワサ。
そこで死んで……アタしゃが3年掛けて作った、この家自慢の入り口を、
――【……このババア……】――と、老婆の何処か食えない態度に、呆れたコメントとタメ息を心の中で漏らす彼……。だが実際、彼女が助けてくれた事は「地獄に仏」でしかなかった……。
だからこそ……渋々ながらも、背後の彼女を再び背負い――玄関内で出迎えてくれる老婆の元へ向かおうとするのだが……。
「……そうそう、そう言えば名乗ってなかったねぇ……。
アタしゃは、「ベルガ」。しがないババアだワサ……。兄ちゃんの名前は……?」
「えっ? あっ、オレか……? オレは……ッ!?」
〜 ズッキィィィン!!! 〜
「あ゛……ッ? か……ッ!?」
――突如、彼の後頭部辺りに走る……
その余りの痛みに、彼は膝から崩れ落ちそうになってしまうが……根性を振り絞ったのか、一歩手前で踏み止まり、何とか背中の彼女を落とさずに済んだ。
しかしそれでも尚、右手で抑える頭の痛みが消える事はなかった……!
「だ……大丈夫かい、オマエさん!?」
――痛みの余り、大きく目を見開きながら、全身を震わす彼に心配するベルガ……。
「……だ、大丈夫だ……。
た……ただ……どうやら……名前も……
――彼は何となくだが気づいていた……! 自身が
「……今すぐ、ポーションでも持って来こようだワサか?」
「いや! あるなら……すぐにでも……彼女に……!」
「……そう。なら、早くお入り!」
――そう言うと、老女……もとい”ベルガ”は、その歳の見た目よりもしっかりとした足取りで、今まで見上げていた彼の背に手を添え、彼を家の中に入るよう促すのであった……。
……そして、これは余談だが……三人が家の中に入り、体を休ませた頃……。
「何で……
……と、彼が
「何でかって? そりゃあ……アタしゃも、
そんな物好きだからこそ……老後の退屈
……と、カラカラと笑いながら答えたそうな。
<異傭なるTips> 応急処置
物語内で、
青痣の治療法……それは、
……だが、より詳しく説明するなら「
これは、「
病院やクリニックに患者を運ぶまでの間やっておく、応急処置の「
<”P”
目的:安全確保。
最も最初に行うことは、ケガ人の保護、受傷部位の保護に努め……ケガ人を迅速に
<
目的:内出血や腫れ、痛みの抑制、損傷部位拡大の防止。
安全な場所に移動させた後は、負傷部位を動かさずに楽な体勢で安静を保とう。
「寝かせる」または、「座らせる」等して体を安静にさせる。
このようにして、<できるだけ内出血・腫れを最小限に抑えることが早期治癒のポイント>となるのだ。
休めせた後は、怪我人を余計に動かすような事は極力避け……体内の自然治癒システムを最大限に生かすためにも、患部を動かさないように、体重が掛からないように、安静を保つように。
<
目的:内出血や
筋緊張緩和、患部
物語内では、すでに手遅れであったが……<ケガの直後から行うのがポイント>である。
これは、患部や周辺を氷で冷やすことにより、血管を収縮させて”内出血”や”腫れ”を抑え、痛みを
基本的には冷却後、「患部の感覚がなくなる」まで冷やし……その後「患部の痛みが振り返してきたら」再び冷却をし始める……事の
これを”やる
ただし、就寝前にやるのは(大袈裟かもしれないが……)”凍傷”の危険性があるため、なるべく
<“C”o
目的:内出血や腫れの抑制。
”包帯”や”テーピング”などを使用して
冷却と同様、
傷や出血がなくとも、”打撲”や”捻挫”をしたその患部の深部では、組織がダメージを受け
<冷却は断続的に(休憩あり)、圧迫は継続的に行う>。
また、圧迫する際、
ただし、強く圧迫しすぎないように。
患部周辺が
<“E”
目的:内出血や腫れの抑制。
<患部を心臓より高い位置に保つ>事で、内出血や腫れを防ぐ。
アニメや漫画などで、大怪我をしたキャラが”腕”や”足”を
(一応、必ず吊り上げなくとも、台座などに患部になる部位を置いて高くしておけば、十分代用にはなるハズ……)
<“S” tabilization / Support(安定・固定)>
目的:痛み・腫れ・炎症の抑制。
患部を固定して安定に保つことで、<筋肉、腱、
骨折、
ただし、必要以上にやると何かしらの
そして注意事項になるが……応急処置をした後に
これは、<いずれも血管拡張作用や
簡単に言えば……<温っためるのを我慢しないと、痛みが増したり、治る怪我も治りにくくなるぞ〜?>……と言うことである。くれぐれも注意されたし……。
最後に、これは”異世界に行ったり”、”サバイバルをする羽目”になった際は勿論……
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