青色

 「これってどうやって解くんですか?」と田口ミクが聞く

 「これは、一回全てまとめてしまった方がいいよ。

  そして作ったまとまりをお互いに比較してみると

  答えが見えてくると思う」と簡単に答えると田口ミグは

 僕に感心したみたいで無邪気に笑顔を向け「流石です」と言ってくれる。


 1時間ほど勉強を続けている。

 少し休憩させるために1ページ終わったタイミングで話かける。


 「どうして南大に入りたいの」と聞くと

 田口は持っていたペンを置き喉を潤してから話始める。

 「深い意味は特に無くて一番家から近くて

  国立大なのが南大だったって言うだけですね」

 「確かに家から近いと言うのはいいよね。実家から通えるし」

 「でも、本当は都会に出て1人暮らしに憧れているんですが

  まあでも憧れなので。それに就職するときに都会の企業を

  選べばいいかなって思ってて」

 「都会は確かにいいよね。なんか惹きつけられる気持ちわかる」


 都会は人が多くプライドが高い人が多いイメージがある。

 全員何かにこだわりをもって行動しているように見え

 気後したこともあったな、などと昔のことを思い出す。


 実際はそんなことない事なんてわかっているけど

 成功している人たちを見ていると東京に上京することが

 ステージに立つ上で前提とされているような

 気がして自分には歓迎されないと言う印象が強い。


 田舎にいる事で自分はまだ、人と巡り合っていないからだ。

 と自身に対する可能性を捨てたくないのかもしれない。


 まだ、僕の青色は薄れつつあれど確実に残っている。


 「田中さん、早めに切り上げて帰りにショッピングモールに

  寄って文房具見に行きたいんですけど一緒にどうですか?」と田口は聞く。

 「いいよ。特にすることないし」

 「大学生って暇なんですね」といじられる。

 「そんなこと無いけどね、バイト頑張ったり、バイト頑張ったりしてる」

 「どんなけバイトしているんですか。

  と言うかバイトしているんですね」と驚かれる。

 「まあね」と余り自慢できるものでも無いため

 深堀りして欲しくないなと考えるが、こう言う時の感は嫌に働く。

 「どんなバイトしているんですか??」

 「いや、まあコンビニでバイトしてる」

 「いいなーバイト」と予想外の返事が返ってくる。

 「バイト禁止なの?」

 「そうなんですよ!バイトするにも許可が必要で。

  でも許可が通った人いないんですよ」と熱烈に田口は言う。

 「そうなんだ」と返事を返す。


 自分が通っていた学校も校則でバイトは禁止されていたけど

 隠れてしている人もザラにいた。

 自分もその例外ではない。

 きっと田口ミクはノリは軽いが真面目な子なのだろう。


 「まあ受験があるし、もう諦めてますけどね」と田口は言う。

 「大学生になってからだね」と諭すように僕は言う。


 僕はできればバイトしたくないし働きたくもない。

 働いていても辛いだけだしお金を得る手段でしかない。

 それを進んでやりたいと言うのはバイトをした事が無いからだろう。

 やった事がないから楽しそうに見える。

 無知の好奇心ほど行動を起こす上で重要な物はない。

 そこで勢いづくことが出来れば余り不要な不安なく

 暮らしていくことができるのだろう。


 

 「これ可愛い」といい田口はスカートを手に取っている。

 文房具を見に来たついでに服も見たいと言うことだったので

 一緒に回ることになった。

 「この白いロングスカート可愛くないですか?」といい手に持っている

 白いロングスカートの腰の部分を自分の腰の位置まで持っていき

 僕に向かって、どう?とアピールされる。


 「似合ってると思う」

 「さっきから殆どそればっかじゃないですか

  ちゃんと見てますか?」といい田口は

 グイッと僕に顔を覗くように顔の距離を近づける。

 

 僕はついつい顔を背け

 「本当だよ。基本的に田口はスタイルいいし

  顔も整っているからなんでも似合うんだよ」

 と言うと今度は田口が顔を背けてしまう。

 「田中さんはどう言うのがタイプなんですか」と聞かれ戸惑う。

 「多分ナチュラルな綺麗系が好きなんだと思う」と答える。

 「男子ってそう言うの好きですよね」

 「一番受け入れやすいから」

 「なるほど」といい、

 手に持っていたロングスカートを元の位置に戻しそのまま店を出た。

 そしてしばらくの間、2人でウィンドウショッピングを楽しんだ後にゲームセンターに寄った。

 UFOキャッチャーに1500円注ぎ込んで取れた

 大きな猫の縫いぐるみをプレゼントしたり太鼓の達人をしたりした。

 最後にプリクラで写真が撮りたいと言うので

 初めてプリクラも撮った。


 「画面に映っているポーズをとってみよう」とアナウンスされる。


 「田中さん、はいポーズとってポーズ」と急かされる。

 3、、、2、、、1 カシャっとフラッシュがたかれる。

 数枚ポーズの違う写真を撮り終わり場所を移動し

 田口は画面に向かってペンを走らせる。

 「田中さん。4/6目瞑ってますよ。不慣れですか」

 タッチパネル横の台をパンパンと叩き笑う。

 「そんなに言うことなくない、初めてだったんだよ」と言う

 自分の目とは思えない程大きくなり骨格や肌も綺麗に自動で補正され

 自分の顔でも美男に見えないこともなかったと言うこともなかった。


 出来上がったシールの半分をもらう。

 「画像データ後で送っておきますね」と言った後に

 「なんかこうしてると彼氏っぽいですね」と

 後者の方はゲームセンターの中では聞き取ることが困難な声量で反応に困ったが

 とりあえず「ありがとう」と伝えた。


 帰りの際に2人で見上げた空は厚い雲に覆われていたが、雨は上がっていた。

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