年上女性の余裕

自意識

　自動販売機の機械音が嫌に耳につく。

　男女のグループ笑われながら男性が辺りに散らばっている物を

　雨に背中を刺されながら回収している。

　見ていると心が痛む。

　男性は雨で禿が目立ち不潔感を増しているが

　本人はそんなことは気にも留めず歩き去って行く。

　その後ろ姿は小さく厳かな雰囲気をまとっていた。

　雨が強くなり帰る気にもなれず近くのマックによる

　店内は冷房が効いており薄着では肌寒い

　コンセントで携帯を充電しながら、検索ワードに名前を打ち込む。

　さっき出来事の中でチラッと名前が記載されているカードが目に入ったのだ

　興味本位で検索をかけると何個かの投稿が引っ掛かる。

　犯罪まとめサイトが上位に来ている

　URLをタップすると更新された上位10件だけが

　まとてあるスクロールが画面中央に表示され

　その上に検索欄がある。

　そこにもう一度先ほど打ち込んだ同じ名前を

　打ち込むとサイト内でもヒットした。

　情報を見てみると過去に住居侵入罪と窃盗罪で捕まっている前科があった。

　気が付けば粟立っており思わず腕を摩った。

　犯罪を犯したことのある人間がこんなに近くに

　存在しているなんて考えもしなかったし現実的でなかった。

　前科ある人間と烙印が押されている男に対して

　いくら刑務所で改悛の情が芽生えたとしても何かの拍子で

　押さえつけていた感情の鎖を引きちぎり魂が暴れだす危険性だってある。

　プラトンは肉体は魂の牢獄であり、その獄屋の中に魂は

　自分の罪をそそぐまでは、神によって閉じ込められつづけるのである。

　と言及しているがそれはある意味

　ある程度肉体が自制を保ってくれているかもしれない。

　よく見てみると不定期に更新されている。

　古い日付順でページをスクロールさせる。

　-2009年12月25日-　被害女性宅にて現行犯逮捕

　-2009年1月13日-　住居侵入罪と窃盗罪にて懲役5年との判決

　詳細:当時被害者の18歳女子大生が1人暮らししていたマンションに住居者不在の際

　女性の下着や歯ブラシなどを何度も侵入し窃盗をした疑い。

　加害者の当時30歳男性と被害者女性との直接的な接点は特には無かったものの

　関節的接点(同じ喫茶店にいるところが監視カメラにて判明)により

　計画的犯行とみなされた。

　加害者男性は「なんとなくやった」と犯行を認め有罪判決が下された。

　-2014年2月1日-　懲役延期は無く釈放。

　被害女性は神奈川県に引っ越しを男性と同居している。

　-2015年9月5日-　長野県で土木関連の仕事に就き慎ましく生活を送っている。

　誰が更新しているのか分からないが以降更新は途絶えていた。

　暗晦な世界は暗くなる一方だった。

　帰るために夜の街を歩る

　町はまだ夜が始まったばかりと言うこともあり

　各所で盛り上がっている声が聞こえる。　

　嫌なことなんて何もかも忘れてただ今楽しい時間を過ごしている。

　気分が高揚しいつもだとできないことにもその場のノリでできてしまう。

　アルコールが入っていなくても徐々にできるようになっていくようになることが

　大人になると言うことなのかもしれない。

　酔っ払いを避けるようにして道を進む

　煙草の臭いにむせ込みながら、楽しそうな姿を横目で見ながら止まらずに進む。

　まだ大人になれていない僕は今日もゆっくりと歩む。