フィナーレ ~用意はいい?~

 少し休んだら脚の痙攣は収まった。


 いきなり久しぶりの動きをハードに行ったから筋肉がびっくりしたのかもしれない。もう少しやっていたら、安静を余儀なくされていたに違いない。寺坂顧問はそこまで見越して、ダンスの余力を残してくれたのかもしれない。


「うわー、ついにだね! 緊張するなあ」


 辻さんはそう言いつつも、何だか楽しそう。佐々木さん、上巣さんとともに制服姿で動きの確認をしている。男子陣も全員制服。男女ともブレザーは脱いでワイシャツのみ。


「やっぱり青春といったら制服だよなあ」


 深川はそう言って動きの度にひらりと舞う女子陣のスカートをエロそうな目で……。


「先輩」と岡本。「動きづらいですよこれじゃあ」


「岡本。お前はジャージで踊る女子が見たいのか?」


「僕は……別にどちらでも」


「ダメだよ岡本。未来の伊野神先生が言っていたのをもう忘れたのか? 『恋愛をしろ。異性に興味を持て。抱け。キスをしろ』って言ってたろ?」


「やめい深川! 未来のキズ口を広げるな! 何気に恥ずかしい。しかもそんなこと言ってないし! そういえばバレー部はソロパート誰がやるんだ? 新城か?」


「いや、朝倉だ」


「え、まじで!?」


「いや……うーん、やっぱやめない? 僕、自信ないよ」


 よりにもよってこいつとは。


「大丈夫だって! ファイトー朝倉くん!」


「うーん……」


 これはこれで楽しみだ。俺だって人の事言えたもんじゃないけど。


 とりあえずやってみよう。


 平田先輩に笑われるようなことは断じて避けなければならない。責任重大だ。


「よーし、準備はいいか?」


 と、そこへ。寺坂顧問がやってきた。手には栄養ドリンク。さすがに徹夜は辛いみたい。それでも声を張り上げる。


「これより! バレー部陸上部選抜メンバーによるダンスの合同予行練習を行う! チャンスは一度きり! 心してかかるように」


「はいっ!」


「いいダンスを期待している。お前らの青春を見せてやれ!」


 そして。


 体育館中央に移動し配置につく、制服姿の俺たち計八名。


 青春のダンスが今、静かに開演する。

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