第30話 合宿開始!

春を制覇し、次の夏に向けて練習をする碧陽野球部。そこに洋子が

やってきて、全員を集め話し始めた。


「合宿!?」

「そう。去年までは正直、人数も少なくやる気もなかったからそんな

事をしても無駄だと思ってたからな。でも、今年は、今はうちも

大所帯になってきている。なので合宿をする事にした。この先、長峰が

卒業し、その先も碧陽野球部が強豪である為に必要な事になるだろう

からな」

「監督」

「なんだ長峰」

「俺は今のポジションでの参加でいいですか?」

「ああそのつもりだ。さすがに私一人で全員を見るのもきついからな。お前が

やってくれると助かる」

「了解。じゃぁいつもの倍でやるか」

「凍夜、壊さない程度にしてくれよ」

「それはお前ら次第だ」


そんな話をしてから練習に戻り、凍夜は練習が終わった後、朱音と黒子に

話しかけられた。


「買い物?」

「ハイ。合宿となると色々そろえないといけないかなって思ったんで」

「そうだな。ま、そういうのは自分らでやると思うが、できない事は

お前らに任せるかもしれないからな」

「だから、先輩に付き合ってほしいんです。あと、合宿の時も料理とか

洗濯とかも」

「そうだな。俺はする側じゃないからな。いいぜ、じゃぁ合宿前の週末に

色々そろえるか」

「ハイ。ありがとうございます」


そうして凍夜はマネージャー達と休日に買い物に行った。めぐみ以外の

女の子と買い物をするのは初めてで、少しどうすればいいかわかって

いなかったが、すぐにいつもの感じで二人と接していた。

途中でファミレスで食事をしたりしながら買い物を済ませ、凍夜は二人を

駅近くの公園につれてきて、自分の事を話した。一年には話してないが

マネージャーの二人には話した方がいいと思ったからだ。


「ほ、本当なんですかそれ」

「ああ本当だ」

「そんな、あと二年あるかなんて」


二人はその話を聞いて当然ショックを受けている。


「じゃぁあの時倒れたのも」

「ああ、本当はその病気のせいだ。俺があと二年ももたずに死ぬなんて

言ったらめんどくさくなるからな」

「先輩、それ、他の皆は?」

「遙達二年は全員知ってる。監督もな。一年にはまだ教えられん。それを

知って、やる気をなくされても困るからな」

「そ、そうですけど、ただの病気じゃなく、死んじゃうなんて」


朱音は泣き出した。黒子も涙目だが、朱音に抱き着き落ち着かせようと

していた。


「悪かった。話さない方がよかったかもな」

「いいえ、教えてくれてうれしかったです。でも、悲しすぎます」

「まぁそうだな。それと、お前らはいつも通りにしてくれよ。マネージャーが

暗くなってたらあいつらも気を遣うからな」

「わかりました。合宿までには落ち着かせます」

「ああ。頼むぜ」


朱音が泣き止んでから三人はそれぞれの家に帰った。


そうして時が経ち、合宿をする前日になった。合宿の間、学校は休む

事になるが、勉強も大事なので全員勉強とレポートを書く時間を

作り、それで補う事になった。


前日の夜、凍夜は家でめぐみ達と過ごしていた。


「合宿か。私も行きたかったな」

「そうだな。お前がいると安心できる」

「ありがと。でも、この子がいるからね。ちゃんと家で待ってるよ」

「ああ。頼むな」

「ええ。それに今度は春夏の連覇がかかってるからね。あなたがどんどん

記録を作ってくれるほうが私はうれしい。それだけあなたが生きた証が

残るからね」

「そうだな。この子が俺をすごい人だって思ってくるようにしないとな」


凍夜は二人を一緒に抱きしめた。そうして翌日、早朝から部員は学園に

集まる。この為に手配したバスが駐車場に待っている。しばらくして

全員が集まり、洋子が確認をする。合宿は三泊四日で行われるので

荷物もそれなりに重くなるが、何より、凍夜の訓練の重りもつけている

ので、全員向かう前からそれなりに体力を削られていた。


「さぁ皆行くよ。暑くなってきてるから水分補給はしっかりね」

「ハイ」


バスに乗り込み合宿先に向かった。そこはとある町にある旅館で

そのすぐ近くに小さいが球場があった。その旅館に頼み、許可が

出たので合宿ができる事になった。その旅館も碧陽の事は知って

いたので、その碧陽が使うという事で快く了解していくれた。


数時間後、その旅館に到着し、入り口で迎えてくれた。


「今日からお世話になります。碧陽野球部です」

「ハイ。こちらこそ皆さんが疲れを取れるようにしますので

皆さん頑張ってくださいね」

「ありがとうございます」


あいさつを終え、部屋に行き、それぞれの班にわかれる。凍夜は

遙や同じ二年のメンバーと一緒の部屋だ。


「結構広いな」

「ああ。これなら窮屈にならずにすむな」

「そうだな。お前にストレスを与えないようにしないとな」

「俺の事は気にするな。ここにいる時は練習の事だけに集中しな」

「そうは言うがな、俺達は絶対お前を倒れさせない。そう言っただろ

だから、お前が嫌でもとことん心配させてもらうぜ」

「わかったよ。勝手にしてな」


少し冷たく言ったが本当はうれしかった凍夜。そうして着替えてから

グラウンドに集まり、合宿が始まった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る