第22話 凍夜交代!?そして、光一とある約束をする

碧陽のグラウンドで甲子園常連校の風花学園が練習をしている30分後に

練習試合をするので、今は風花が練習をしている。そして、そのグラウンド

の周りにはたくさんのマスコミがいる。もちろん、プロのスカウトも

何人もいる。


練習も終わり、両校選手が一度ベンチに戻る。


「長峰君。わかってると思うけど」

「ああ。無理はしない。する必要はないからな」

「そうね。でも、長峰君以外はしっかりね。この風花に彼なしで勝たないと

甲子園はいけないからね」

「ハイ」


凍夜以外の部員もだいぶ力はつけてきていた。遙はもちろん、凍夜が

独自の練習を部員全員に押し付けたからだ。その地獄の練習を聞いて

最初は嫌な顔をしたが、今では全員が凍夜をしたっているので全員で

その練習をしていた。


時間になり両選手陣が整列する。あいさつをし、試合が始まる。


先攻は碧陽からだが、凍夜は今回は4番にいるので一番ではない。

相手の投手は二年生で来年を任されるぐらいの選手らしい。

その投手から碧陽は三番の遙以外はアウトになり、遙を一塁に置いて

凍夜の打席に回ってきた。


相手は左投手、それにたいして凍夜は右打席に立つ。正直、凍夜は左でも

右でも関係なく打てる。でも、今回は打席ではなにもしない事にしている

ので、バットを振らない。それを見て、ボールをして最悪歩かせようと

していた相手バッテリーはインコースギリで入る所に投げて来た。

それを見て凍夜はストライクになっても何もしないと洋子に言われたが

ついそれを打ってしまった。


でも、力を入れずに打ったので外野フライで終わった。

ベンチに戻るとやはり洋子に怒られる。


「なんで打ったの?」

「悪い、入ってたから反応で打っちまった。次は打たないように

するさ。それに、アウトになったしな」

「まったく」


凍夜はメットから帽子に変えて、マウンドに向かう。そのマウンドには

今回初めてスタメンマスクをかぶる二年生の飯田潤いいだじゅんだ。

今までは凍夜の玉が取れなかったのでずっと控えだったが、最近ようやく

取れるようになり、来年の事を考えて今回初マスクになった。


「じゃぁそれでいいんだね」

「それでいいっすよ先輩。それと、しっかりとってくださいね」

「わかってる」


潤はおとなしい性格なので凍夜にも敬語っぽくしている。

それでも、やる時はやるので、声は出している。

そうして凍夜は潤に向かって投げた。相手の一番は凍夜の玉を

見て、何か違うのに気づいた。


その凍夜の次の玉を相手の打者はヒットにした。それに周りの

ギャラリーやマスコミが驚いた。凍夜が打たれる所を見た

からだ。でも、相手は確実に気づいている。凍夜がいつもより

遅く投げている事に。


「監督」

「ああ。もしかしたら本気ではないかもしれんな。それでもその

状態のあいつを打てなきゃ甲子園はいけんぞ」

「ハイ」


風花のベンチで光一と監督が話していた。その間に凍夜は一人を

アウトにし、もう一人にもヒットを打たれ1アウト一二塁の

状態になり、そこで四番の光一に回って来た。

光一は本気で打席に向かう。でも、凍夜はさっきまでと同じ

様な玉を投げ、光一はそれをカットそ、ファールにする。それが

何球か続き、光一が凍夜に向かって怒鳴りだす。


「本気で来い!長峰凍夜」


その声はグラウンド全体に響き渡った。それを聞いて潤が凍夜の

所に向かった。もちろんタイムを取って。


「どうする?凍夜君」

「ま、あいつ一人にならいいだろう」

「でも、今日は」

「大丈夫っすよ。俺だけが怒られればいいっすから」


そう言って潤を戻らせ、プレイを再開する。そして、凍夜は

振りかぶってそこから体をひねりトルネードを見せた。

それに周りが今日一番わいた。

その凍夜の超速球が来るのをわかった光一はうれしそうに

バットを強く握り、凍夜が投げたと同時に振った。


潤は超速球はまだ取れないので、そらさないようにしようと

体を前かがみな感じで構えたが、その玉はミットに来なかった。


「ぼ、ボールは?」


潤はマスクを取り、周りを見ると、凍夜から声が聞こえた。


「上っす先輩」

「上!?」


凍夜の言った通り、ボールはものすごい高く真上に上がっていた。

どうやら光一がバットに当て、上に行ったのだ。潤はそれを

どうにか見つけボールを取った。


光一は悔しそうにベンチに戻るが、周りはあの凍夜の超速球に

当てた光一を評価していた。

ベンチに戻った凍夜はまた洋子に怒られる。それは洋子だけじゃなく

めぐみも怒っていたので、凍夜はなんと次の回で交代させられた。

それに相手やここにいた全員が驚いた。それからの試合は点の取り合い

で、碧陽の二番手では風花はまだ抑えれずにいて、攻撃でも少しは

返せるが、まだ逆転できる力はなかった。


なので、試合は6対4で碧陽が負けた。当然、凍夜は最初の回

だけしか投げなかった。その事にマスコミは洋子に聞こうと

するが洋子はそれには答えなかった。凍夜の事は風花も気になって

いて、光一も当然気になり凍夜に話しかけて来た。


「どうして交代させられたんだ?」

「俺が約束を守らなかったからな」

「約束?」

「この試合は俺は本気でやらないようにするって事にしててな」

「だから、最初あんな普通の玉だったのか」

「ああ。でも、お前に超速球を投げちまったんでな。監督に

怒られて代えられたんだよ」

「お前を本気でやらせないなんて俺達を舐めてるのか?」

「俺はいつでも舐めてるがな」

「お前はそうだろうが、他のいやそっちの監督だ」

「……なぁ、この後時間あるか?」

「時間?今日はこれで終わりだが」

「じゃぁつきあってくれ」


凍夜は光一を連れ出した。碧陽は片付けや少し練習が残って

いたが、凍夜はめぐみに頼み、光一にあの事を話すと言って

練習を抜けた。


二人は誰もいない公園にやってきた。そして、凍夜は光一に

自分の事を話した。


「ほ、本当なのかその話?」

「こんな事嘘ついて話す内容じゃないだろ」

「そ、それはそうだが。!?だからお前、甲子園の最終回の時に

倒れたのか?」

「ああ。あれは一瞬だが、結果的にはそうなるな」

「……なんでそんな体で野球してるんだよ?治すのが優先だろ」

「治らないんだよ。だから最後に俺が生きた証を残そうと思ってな」

「生きた証なんて。まだ早いだろうが」

「悪いな。俺には時間がないんでね」

「くそっ!これじゃお前とプロで戦えないじゃないか」

「お前、プロに行く気か?」

「当たり前だ。高校球児なら誰でもプロを目指すもんだろ」

「いや、うちの奴らは遊んでたけどな」


凍夜は躊躇せずに当初の部員達の事を言った。


「それに、これじゃ練習試合でも地区大会でもお前に本気で

投げろなんて言えない」

「気にするな。お前の時は本気で投げてやるよ。そうできるように

監督にも言っておく」

「それじゃ中途半端だろ。お前が全力でやれなきゃ生きた証の

証明にもならないぞ」

「……確かにそうかもな。全力でやらないとあとで笑われるかもな」

「でも、それを強制する事はできん。くそ!」


本気で勝負ができない事に怒っている光一。そして、自分の事も

心配してくれてる事にも気づいた凍夜。遙達と言い、光一と言い

野球をやる奴はどれだけ気を使えるんだと思った。


「おい、そう悔しがるな。お前と一つだけ約束をしてやるからよ」

「約束?」


凍夜はある事を光一に約束してその日は光一と別れた。


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