第3話 練り羊羹

 洋菓子もいいけど、たまには和菓子もいいですね。


 『練り羊羹ようかん』。一般的には、和菓子の基本とも言える「あんこ」を寒天で固めたものです。裏ごしした甘藷さつまいもを使った『芋ようかん』などもありますが、今回は基本の小豆あずきを使ったものを紹介しますね。


 粒あん派・こしあん派論争もあることですし、両方書きますか。まずはあんこを作ります。


【こしあん】

小豆 450g

砂糖 400~450g


【粒あん】

小豆 450g

砂糖 400~540g

塩 ひとつまみ


 虫食いの豆を除いた小豆を軽く水洗いして、鍋へ。たっぷりの水を入れて茹でていきます。ただ、あとから水を加えるので、その余裕は持たせてあげてくださいね。

 沸騰してしばらくすると、小豆の表面がシワシワになります。そうしたら冷たい水をたっぷり加えて湯温を一気に下げます。『びっくり水』ですね。

 再度沸騰してしばらくすると、小豆表面のシワが消えます。そうしたら火から下ろし、お湯を捨てます。

 再び小豆を鍋へ。水から茹でていきます。沸騰したら水を捨てます。これを2~3回繰り返して『渋抜き』をします。渋抜き回数が多いほど上品な味になりますが、小豆らしい風味も薄れていきます。やっても3回までかな~。


 ここから先は、こしあん・粒あんで若干工程の違いが出てきます。


 まずはこしあん。小豆を鍋に戻して、たっぷりの水で茹でます。

 対して粒あん。たっぷりの水で茹でるのは一緒ですが、粒が暴れないようにキッチンペーパーか布巾をかぶせた状態で煮ます。

 どちらも45~60分くらい。指で軽く触れて、豆が潰れるくらいまで柔らかくなればOKです。

 途中で水がなくなってきたら、焦げないように足してくださいね。本当は大きな鍋でたっぷり水を入れて、蓋すら開けずに温度変化なしで煮たほうがいいのですが、少なくとも我が家にはそこまで大きな鍋はないぞっと。


 煮あがったら、ボウルに乗せたザルにあけて冷水にさらし、水気を切ります。このとき水の勢いが強いと、破れた豆の中身の『ご』が流れてしまうのでご注意を。あんこは『ご』が主役です。


 ボウルに溜まった『ご』を木綿の袋へ。私は手ぬぐいを二枚重ねて半分に折り、袋状に縫い付けたものを使っています。丈夫でサイズもちょうど良く、使いやすい!


 粒あんの場合は、ザルに残った粒をそのまま鍋に戻します。そこに先ほどの木綿袋の『ご』を、水気を絞って放り込みます。さらに砂糖と少量の塩を入れ、火にかけます。

 お店の粒あんは皮がある分、こしあんより砂糖多めですが、我が家では小豆と同量か1割減くらいにしています。そのまま牡丹餅ぼたもちに流用することもあるので、上品な甘さが欲しいのですよ。

 あとは好みの固さまで、木ベラで焦げないようひたすらかき混ぜながら練っていく作業です。


 こしあんの場合は、茹であがったすべての豆から『ご』を取り出す作業が発生します。水をちょろちょろと流しながら、ザルの中で豆をひたすら手で潰し、『ご』と皮を分けていきます。皮は、もったいないけれどゴミとして処理。『ご』は木綿袋にまとめていきます。

 すべての『ご』が集まったら、ボウルの中に袋ごと入れて流水でもみ洗いし、しっかり水を絞って『ご』だけを鍋へ。砂糖を加えて火にかけ、木ベラでかき混ぜながら好みの固さまで練っていきます。こちらも砂糖は元の小豆と同量か1割減くらい。


 こしあん・粒あんとも、ヘラで持ち上げたとき角が立つくらいまで私は練り上げています。

 最初のうちはドロドロの液体になるので、沸騰するとボコボコ跳ねて、笑っちゃうほど熱いです。火傷するので長袖・軍手推奨。

 火加減は中~強火。水分をだいぶ飛ばすので、焦げないように混ぜのスピードをだんだん上げていきます。最後は汗だく。

 練りあがったら、いったん皿やバットなどにおにぎり大くらいの塊をいくつか作り、冷まします。


 さてさて、ここからが本番。羊羹にしていきますよ。


【羊羹】

寒天 12g

水 850cc

砂糖 400~600g

あんこ 1kg以上


 寒天は私の場合、糸寒天を使っています。おごのりを使っていることの多い粉寒天より、天草利用の糸寒天や棒寒天のほうが口当たり良く仕上がるので。

 まずは分量外の水で寒天をふやかしておきます。前夜のうちに仕込んでおくのが理想的。

 その寒天を絞って、分量の水と一緒に鍋へ。まずは寒天を煮溶かします。


 寒天が完全に溶けたらアクを取り、砂糖を投入。溶けきる前に入れると、その先寒天は溶けてくれなくなるのでご注意を。


 煮溶かしている間に、こしあんの場合はあんこを裏ごししておいてください。口当たりが違います。


 砂糖も溶けた寒天液を茶こしで漉して、別の鍋に移します。そこにあんこを少しずつ投入。木ベラで混ぜながら中~強火で煮溶かしていきます。溶けたら再度アクが出るのでアクを取り、焦げないように混ぜながら好みの固さに練り上げていきます。

 激しく混ぜてしまうと「腰抜け羊羹」……つまり、歯ごたえが寂しい羊羹が出来上がるのでご注意を。鍋の底を擦るように、ゆっくり優しく混ぜてあげてください。

 ここでも長袖&軍手推奨。この液体の沸騰する様は、まるでマグマです。広範囲に飛びますので、服も壁も羊羹液で水玉模様になるのを覚悟してやってください。


 羊羹の固さ判定基準。

 混ぜている木ベラを時々、羊羹の海から上げます。満遍なく沸騰すると、木ベラの先についた羊羹が、取り出した木ベラの隅でボコボコと数秒沸騰するように。この辺でやめると「水ようかん」くらいかな。水ようかんにするなら、ちょっと塩を加えてあげることをおすすめします。

 木ベラを上げて羊羹の海の上でくるりと輪を書き、細い羊羹の線が盛り上がって残る。ここでやめると、普通の練り羊羹です。

 もっと練り上げて、太い羊羹の線が盛り上がって残る。ここまでくると高級品『とらや』レベルです。あくまでも固さね。味は別。充分美味しくできますが。


 火から下ろした羊羹は、水で濡らした型に流し込みます。私が使っているのは、羊羹船と呼ばれるもののハーフサイズ(18cm×18cm×5cm)か、一回り大きな21c

m×21cm×5cmの容器です。が、時々ネコのシリコン型に流し込んで「可愛すぎて、食べるのがもったいない!」なんて頭を抱えることもあります。


 寒天は常温で固まりますので、翌朝までそのまま放置すれば、まず間違いなく固まっています。それを適当に切って召し上がれ♪

 棒状に切ってオーブンシートで包んで数日楽しむもまた良し。元々のレシピより砂糖を減らしてはいるのですが、それでも凄まじい量ですしね。日が経つにつれ、外側に砂糖の膜が張っていきます。これがまたサクッという歯ごたえを生んで美味いのですよ。


 羊羹が苦手な方は「後味で残る甘味がどうも……」と仰ることが多いですが、紹介したものは羊羹好きに「飲み込んだらびっくりするくらいスッキリと甘味が消えたんだけど、特別な砂糖でも使ってる?」と訊かれた代物。いやいや、そのとき使ったの普通の上白糖ですよ~。


 あ、それで思い出した。砂糖の種類ですが、上白糖で問題ありません。

 上品に仕上げたければグラニュー糖や白ザラ糖、コクを深めたければ黒糖を使っても。

 ただ黒糖の場合は、風味が強く出やすいので分量を減らしたほうがいいです。後味もバリバリ残ります。まだ実験していないけれど、上記分量の寒天液に対して340~500gくらいが妥当じゃないかと。

 和三盆は? ……聞かないでください……

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