第3話 兎未、帰宅する

なんと、兎未はしゅとーれんになってしまったのだ。


『さぁ、うみちゃん!行くよ!』

相変わらず、頭の中にしゅとーれんの声が響く。

「い、行くの!?行っちゃうの!?けど、どうやって!?」

やる気満々のしゅとーれんに対して、兎未はあわあわとパニック状態。

『うみちゃん、うみちゃん。まずは、ぴょんと飛んでみて!そしたら、みょっとやって、あの狼の顔に直撃させてみて!』

「え、ぴょん?みょっ?それに、顔に直撃!?」

『ほら、うみちゃん!やってみて!!』

なんだか、体がほわほわ、そわそわし始める。

(えぇい!やってみなくちゃわからないんだから、やってみちゃえ!!)

兎未が覚悟を決めたその時、狼の化け物もまた、兎未としゅとーれんを狙う。


兎未は、ぐっと足に力を込める。

ぴょんと跳び跳ねて、みょっと片足を出して、狼の顔に向ける!

ゲシッ!

「ギャウッ」

狼の顎にキックが直撃し、狼は後ろにのけぞる。


すると、腰に着けたポシェットがぽわっと光る。

『うみちゃん!!ポシェットからネイルを取り出して!』

「え、ネイル!?何でそんな物が?」

『必殺技を出すためだよ!ほら、出して!』

しゅとーれんが急かすので、兎未はポシェットからネイルを取り出す。

小瓶の中のネイルはキラキラのピンク色。

『さぁ、うみちゃん。そのネイルを爪に塗って!』

「え?塗るの!?ウサギの手で!?」

今、兎未はしゅとーれんの姿だ。

『大丈夫、塗れるから安心して!ほらほら!』

しゅとーれんはそう言うが、兎未は不安でいっぱいだ。

しかし、狼の化け物もやられっぱなしと言うわけにはいかない。

グルル、と低い唸り声をあげる。


(お願い、ちゃんとネイルが塗れます様に!)

兎未は、一瞬そう願うと、ネイルの小瓶の蓋をぎゅっとウサギのもふもふした手で掴む。

すると、簡単にきゅぽっと蓋が外せた。

後は、もふもふの毛に隠された細い爪に、ネイルを塗るだけ。

すぅっとネイルを塗れば、ネイルはキラキラとより一層に輝く。

あっと言う間に全ての爪にネイルを塗り終わる。


「ガウゥッ!!」

狼が灰色の涎を垂らしながら、兎未としゅとーれんを襲いにかかる。

『さぁ、うみちゃん!今だよっ必殺技のミラクル☆うさパンチ!!』

「わ、わかった!いっけぇええっ!!」

兎未は片手にありったけのチカラと想いを込める。その兎未の想いに反応する様に、爪に塗られたネイルはキラキラと光り輝く。


『「ミラクル☆うさパンチ!!」』

兎未としゅとーれんの声が重なる。


ぴょんと跳び跳ねた兎未は、きっちり狼の額に狙いを定める。

そして、ネコパンチならぬ、うさパンチを狼にくらわせる。


しゅぱーんっ!!

狼の額に兎未の、しゅとーれんのうさパンチが決まると、狼の化け物はキラキラ、ふわふわの淡いピンク色の光の粒子に包まれる。

そして、しゅわしゅわとラムネの様に溶けていく。


狼が溶け消えていく様子を見届けた兎未は、ぽわんっと、再び光りに包まれ、気がつくと人間の姿に戻っていた。

腕にはウサギのしゅとーれんを抱っこして。


「お、終わった・・・」

『やったね、うみちゃん』

ふと、兎未は公園内の時計に目をやり、はっとした顔になる。

「た、大変だよ!しゅとーれん!!アニメがもう始まっちゃう!」

『わぁ、本当だね。急いで帰らないとね』

兎未はしゅとーれんをしっかり抱っこして走り出す。

兎未のウサギみたいなツインテールがぴょこぴょこと揺れる。

しゅとーれんの耳の様に。

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魔法兎少女 天石蓮 @56komatuna

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