氷川 新②

「始! やっと着いたか!」

 創高の校門を抜けると、兄の名前を叫ぶ外国人に出会った。勇ましい黒い肌にガタイの良さ。英語の先生か? 

 だがよく見ると周りの生徒と同じ制服を着ていた。だから兄と同級生だということに気づいた。これで一個上先輩なのか。思いっきり勘違いしちゃったよ。


「おっと、始の隣にいるのが弟君か?」

 外国人がすぐさま、視線をこっちに向いた。俺のこともう知ってる感じか?

「そう。創高野球部の事を聞いてこっちに来た」

「入部希望の氷川 新です! 兄がお世話になってます!」

「元気があって何より! 俺の名前はローマン・クック。野球部の副キャプテンで、始のマブダチだ!」

「ローマンは6歳の時にアメリカからこっちに引っ越して来たんだ。今も日本のことを勉強してるから日本語はペラペラだよ。」

 そう言うとローマン先輩は真白い歯を見せ、サムズアップを決めた。やばい。こうゆうタイプのアメリカ人好きだわ。そしてこの人を親友に持つ兄も凄い。学校生活充実してんな!


「とりあえず新のことが知れてよかったし、そろそろじゃないか?入学式」

「あっ時間ですね! ローマン先輩。式終わったら速攻で部室向かいます! 始もまた後で」

「新。ネクタイ気をつけて(笑)」

「もう忘れてくれよう!」

 二人とはここで別れ、俺は駆け足で新クラスへと向かっていった。


 にしても俺の野球人生のリスタート地点がここで本当に良かった。

中学校の野球部のメンツは、経歴がないここを選ぶことはまず無いだろう。あいつらには暫く顔向けできないし。尚更ここで正解だ。

過去のことなんか忘れて、また新しい人と出会って、ただ純粋に野球がしたい。人生にコンティニューは存在しない。だから環境を変えてても絶対に後悔の無い野球人生を送ってやる。



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「そういえばローマン。新とは他の特待生には顔合わせた?」

「まあリストに載ってた奴には会うことができた。なんとか9人は超す!」

「なら良かった。また校長先生に感謝だね」

「あーそれとだな。一般希望者も早速見つけたぞ。俺が野球部所属だと言うことに気づいて話しかけられた」

「もう!? どんな子だった?」

「それがすぐバレるような嘘をつきやがってな… 前の中学校から、投手としてはじめたようだが、自分ストレート160km/h投げられるんですよってとんでもないことを言ってきた。入部は歓迎するが、入れていいものだろうか」

「その子名前は」

「確かそいつ…『火野 勇輝』って言ってたな。全く困ったもんだよ」
















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