第19話 A rendezvous with him

デート当日の日曜日


朝の6時半に起きた私は、シャワーをびると、ただちに行動を開始した。


今日着ていく服は、前日までに決めてある。


白を基調きちょうとした花柄はながらのワンピースだ。


靴はバッグに合わせてボルドーレッドをチョイスする。


白がメインで、赤をいろとして使うという、女性ファッションの教科書のようなコーディネートだが、あまり冒険ぼうけんこのまない友梨佳ゆりかのファッションセンスには合っていた。


アクセサリーも散々試さんざんためした結果、高価こうかな物をゴテゴテ付けても、かえって下品げひん印象いんしょうを与えてしまうように感じたため、細いピンクゴールドのネックレスだけにした。


ネックレスの中心には、0.5ctのピンクダイアモンドが光っている。


ネックレスを構成するピンクゴールドやダイアモンドは全て本物だ。


下着は新品にしたが、深い意味は無いと自分に言い聞かせる。


身支度みじたくを終えた私は、特別に早く開けてもらった、行きつけのヘアサロンに飛び込む。


ヘアカットとカラーリングは昨日きのうの内にませてあるため、今日行うのはヘアセットとメイクだけだ。


信頼しんらいするプロの手で入念にゅうねんにヘアセットを行ってもらった後、うすめのメイクをほどこしてもらう。


後はレース生地きじのハットをかぶれば準備完了じゅんびかんりょうである。


私はトラブルをけるため、車で待ち合わせ場所まで送ってもらう。


道はいていたため、約束の30分前には、きたまる公園の駐車場に到着とうちゃくした。


そこからは徒歩とほで待ち合わせ場所である東京国立近代美術館とうきょうこくりつきんだいびじゅつかん正門前せいもんまえに向かう。


車を降りた私はハットをかぶると、汗をかかないようにゆっくりと歩いていく。


汗臭い女と思われては、これまでの努力が台無だいなしだ。


こうして私は約束の20分前に、待ち合わせ場所に到着とうちゃくした。


待ち合わせ場所に彼がまだいない事を確認して、私は安心する。


ここまでは全て予定通りだ。


彼が待ち合わせ場所に来たのは、約束の時間の10分前だった。


私の姿を見た彼は、感想を聞かせてくれた。


「おはよう、蘭堂らんどうさん・・・今日は一段いちだん綺麗きれいだな。見違みちがえたよ。」


「そうでしょうか?」


私はとぼけてみせるが、内心では狂喜きょうきしていた。


その一言が欲しくて、今まで努力してきたのだ。


私のデートは最高のスタートを切った。

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