第10話 Girls feeling

「そうだ、蘭堂らんどうさんだったよね。こんな所で会うなんて偶然ぐうぜんだな。」


「ええ、本当に。ミカドさんはこれから何処どこへ?」


「画材屋に行くつもりなんだ。ところで俺に何か用?」


「いえ、あの・・・」


まさかいきなり本心ほんしんかす訳にはいかない。


友梨佳ゆりかは頭が真っ白になり、都合つごうの良い口実こうじつが何も思い付かなかった。


「とにかく足がなおったみたいで良かった。それじゃあ俺はこれで・・・」


友梨佳ゆりかは立ち去ろうとする御門みかどそで反射的はんしゃてきつかんでしまう。


「あ、あの・・・」


「?」


ここでこのまま別れたら、今度こそいつ会えるか分からない。

友梨佳ゆりかは二度と後悔こうかいしたくなかった。


「あの、一緒いっしょについて行っていいですか?」


「画材屋に?別にいいけど。」


友梨佳ゆりかは自分の提案ていあん不自然ふしぜんに思われないかときもを冷やしたが、御門みかどはあっさりと受け入れてくれた。


「でも蘭堂らんどうさんは車で来たんじゃないのか?」


「あっ!」


気が動転どうてんしていた友梨佳ゆりかは、御門みかど指摘してきされるまで、そんな事すら忘れていた。


「少し待ってください。ぐにもどりますから。」


友梨佳ゆりか早足はやあしで車にもどると、運転手に何かを話しかける。

しばらくして、手ぶらだった彼女は自分のバッグを持ち、御門みかどの元へともどって来た。


「もう大丈夫だいじょうぶです。車は帰しましたから。」


「車で送り迎えなんて、おじょうさんなんだな。」


「そんな事ありませんわ。普段なら新宿であれば電車を使うのですけど、足の怪我けがを心配した両親が車を用意してくれただけです。」


「そうなんだ、じゃあそろそろ行こうか?」


「はい!」


2人は並んで話をしながら、画材屋のある四ツ谷よつや方向へと歩き始めた。

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