第三章一幕 悪魔に呪いを

ここは科学が発展したのも関わらず、未だ妖術が信じられる時代、大正時代。

その時代の中心地、龔都の馬熊市には、

この時代の真実を突き止めようとする探偵が一人、いたのであった・・・




千馬探偵事務所は意外にも、町外れの洒落た喫茶店の上にある。今日も難事件を解くはずである。

『はあぁー』

タバコを吸い、あたりをホワイトアウト状態になってる中、ふとため息をつく。

『仕事・・来ないなぁ〜・・』

全く仕事が来ないので、白い霧を手で追っ払って、遠くにそびえ立つ不二山を見る。

そしたら、ドンドンと、二回ノック音が聞こえた。そのまま、扉の方へ向かい、

『は〜い、どちら様でしょうか?』

と、扉の前に立ち、そう言う。

『俺だよ!赤坂だよ!』

『なんだ・・赤坂か・・』

少し呆れて、ドアを開ける。

そのドアを開けたら、僕の幼馴染みで、都市警察の刑事である”赤坂栄治”。そして見慣れない人が一人。

『ん?その人は誰だ?』

純粋に疑問を持った。

『あゝ彼は俺の後輩の”小川清廉”だ。』

『初めまして』

簡単な挨拶を交わして、

『一体、今度の事件はなんだ?かなり真剣な感じするけど・・』

馴染みは少し黙ってから、話してくれた。

その話の内容は、

バンブランドの森に異界な服を着た5人の死体が発見。その第一発見者が行方不明になったとのこと。

『そうか・・で、第一発見者の名前は?』

その質問が馴染みを凍らさせた。

その代わりに、後輩君が言ってくれたが、それはかなり衝撃のあるものであった。

『・・花沢美咲先輩とその弟さんです。』

僕は、頭が真っ白になった。花沢美咲は馴染みの後輩で、その弟である拓坊は、僕の弟子なんだ。

『・・・嘘だろ?・・嘘だと言ってくれ!赤坂!』

彼の胸ぐらに掴み、言った。

『・・・すまない・・本当に・・すまない・・』

彼が涙ぐむ表情を見て、一気に体の力が抜けた。

『そんな・・・』



その時、意味不明なセリフがどこからか、飛んできた。

『・・ん?』

僕は、涙ぐみながら、周りを見渡した。僕の事務所を出るとすぐに急な階段がある。

その階段の途中あたりに謎の老人がいた。

『汝、森に行かば、願い叶わんとす。さあ、行くのだ、勇気ありし、者よ。』

その老人はそう言うと、消えた。もともとそこに誰もいなかったように・・

6つの目は、その出来事で水気を消させた。

『先輩・・!見ましたよね、見ましたよね。』

『あゝ、もちろんさ!おい、千馬は今の聞いてたか?』 

二人も階段を見てた。おそらく、あの老人を見ていたみたいのようだ。

『あゝ、いた。その老人・・・』

『森に行けって言ってたよな。』

もしかしたら、あの二人を助けられるかもしれない。だから、僕は覚悟を決め、

『・・行くか・・バンブランドの森へ!』

二人も覚悟を決めた顔になる。


この龔都市は古きある仏閣や神社、そして西洋色に満ちた洋館がたくさんある。

最近、その建物を襲い、利益を得ようとする罰当たりな奴がいるらしい。

でも、そのような事件は、千馬探偵事務所では、一切報告がない。別の探偵が担当してるからだ。

その探偵の名が、”小西洋”。僕のライバルだ。

彼は、そのような事件を追ってたはず・・なんで、ここにいるのだ?バンブランドの森に。


『知るかよ!俺は事件を追ってきたら、この屋敷にたどり着いたんだ。お前こそ、なぜ、ここにいるんだよ?』

赤髪の奴が言う。

『いやいや、僕は弟子とその姉が行方不明になったから、ここにきただけだ!君こそ、事件、まだ解決してないのだね。』

少し嫌味を言ってみた。

『なんだよ!この事件、意外とややこいのだ!お前ごときが絶対に解けるはずがない事件だね。』

さらに嫌味を被せてきた。

この様子を見ている刑事二人は、

『先輩、この二人いつもこうなのですか?』

『あゝ、こいつら中学の時から、この調子なんだ。』

『中学・・・え!先輩ってこの二人と同じ中学なんですか?』

『あゝそうだが・・知らなかったのか?』

『はい、知りませんでした。』

『そんな、笑顔で言わなくても・・・』

口喧嘩がヒートアップしてきそうに感じた。

『おい!お前ら、喧嘩するな!千馬は弟子と俺の後輩を見つけて、洋は奇怪な事件の解決をするんだろ?さっさと、屋敷の中へ行くぞ!』

『僕としたことが、こいつのせいで、脱線してしまった。』

情けなく感じてると、

『あぁ?』

もうすぐキレそうだった。

『洋も落ち着け。』

洋は不機嫌そうに、愚痴を言いながら、屋敷の大扉を開け、中に入った。

『あいつ、なんだよ・・・まあいい。二人とも、中に入るか。』

二人は呆れた顔になってるのを僕は感じることはなかった。

3人も、彼に続けて中に入った。


これが恐怖の始まりだったとは、知らずに・・・


一行は、この屋敷に入ろうとした。


ガチャガチャ・・


玄関口が開かない。

『閉まっている・・・なあ、鍵持ってないか?』

赤坂刑事が答える。何も持ってない、と。そこで、千馬は考えたが、先に小西が答えた。

『勝手口とか、ないのか?』

後輩の小川が答える。『いや〜わかりませんね。』

赤坂刑事が後輩君のセリフに補足で答えた。裏口がある、と。

赤坂刑事に連れられ、館の外周を半周、した辺りに小さな赤い扉があった。

少し相談した挙句、後輩君が開けることとなった。

かなり、ビビりながら、ドアノブに手をかけ、一周回した。開いてる・・・

扉を押し込む。暗い。厨房のようだった。4人全員が入り切った、その瞬間、後ろのドアが閉まる音がした。

『おい、どういうことよ。なぜ・・閉まる?』

『ひいいい、本当に閉まっててているのですか?』

小西と後輩君が反応を示したのに対して、なぜか、何もなかった様子でいる赤坂に疑問を感じた。

『・・・先に進もうか。』

赤坂がふと、一言放った。

その一言がきっかけで、あんなことになるとは、誰も予想はしなかった。


この厨房から出ると、外ではついてなかったのに、廊下の電気が、なぜか付いていた。

道順通りに進んでいると、おそらく、玄関先と思われる大広間があった。

そんなところに死体が五体あった。

『先輩!これって・・・』

赤坂が黙々と話した。これらが館の近くにあった死体であることを。

その時、どこからか時計のチャイム音が聞こえてきた。

それが終わったの同時に、何かが聞こえた。

『ここは、あの世とこの世をつなぐ架け橋、汝たちは、ある大きな運命という名の、糸の上に立つ。糸を渡りきれ、さもなくば、汝は生きる。しかし、糸から離れたり、落ちたりすると、死ぬ。』

大広間の階段の踊り場に飾ってある絵がおかしくなり、そこから・・・・




絵の中から、その絵にいた紅い鬼の仮面を被った黒い人?が現れた。

僕たちは、恐怖のあまり、そこに立ち止まってしまった。先に動いたのは小西の奴だった。

『うわああ!!お”に”い”い”い”!!!』

そのまま彼は来た道の反対側へ行った。あの黒い人?はその逃げた小西を追いかけた。

『マテ。』

この屋敷の壁を使いながら、俊敏に動いた。あの黒い人?が見えなくなったのを見計らい、

僕たちは来た道を急いで戻った。なぜ気づかなかったのか、わからない。

ようやく、厨房に着いた時に気づいた。裏口が開いてない・・・

『え・・なんで?なんでだよ?なんで、開かないんだよ!』

焦りの感情を見せる後輩君であった。

僕は事を落ち着いて、考えることにした。


今、屋敷に入るために裏口を使った。そしたら、閉じ込められた。誰に?

僕の予想はあの黒い人?だと思うが・・・あれは僕らが玄関ホールに着いた時に絵の中から出てきた。

そう考えると、ありえない。

ということは、僕たちの中に閉じ込めた犯人がいる!いや、本当にそう考えていいのか。

とはいえ、この事件は今までの事件を忘れて、解くべきだ。そうでないと・・・


僕が自分の世界に入った時、赤坂が後輩くんに代わってドアを思いっきり突進した。開かない。

僕が現実世界に帰って、一言。

『無理矢理にせず、鍵を探しに行くか?』

二人ははっと気づいた。

『その手がありましたか、それでは、その案で行きましょう』

後輩くんは目をキラキラさせた。

この子は一体・・・




一方その頃、小西は、

2階の子供部屋?にいた。

『ったく、なんだよ・・あいつ・・・』

逃げ切れたらしい。

息を整え、周りを見渡した。床に数個、おもちゃが転がっている。積み木から人形まで・・ん?数個あるうちの1つの人形が違う、明らかに違う。

それが気になり、おそるおそる近づいてみた。

それは・・・

長い髪の女の首だった。


小西は、驚いた。

『なんだ・・・』

勇気を振り絞り、首を触ろうとした。その瞬間、俺の反対の方向を向いていた首が回り、こちらを見た・・・

『ユルサナイ・・』



そこで目が覚めた。

『なんだ、夢か・・・ん?なんで、俺は寝ているんだ?』

周りを見渡すと、子供部屋であった。夢と同じように、床を見ると、積み木とか、体のある人形があるだけで、

一切あの首はない。一体、どういうことだ・・・

『あれれ、あいつらは・・やべ、はぐれた!どうしよう・・・』

少し悩み、

『こんなとこでクヨクヨするな、漢だろ!俺は変わったんだ、あの時から。』

彼のある過去を思い出した。

彼は元々こんな性格ではなかった。彼が高校の頃、あいつに会うまでは・・・

その懐かしい思い出を思い出し、この部屋を出た。

左壁を伝いながら、廊下を歩いた。

『確か、こうすれば迷路っていつかは解けるんだろ?』




一方その頃・・・

千馬らは、厨房を後にして、廊下をひたすら歩き、地下への階段があることに気づいた。

『なんですか・・』

『これは・・・地下だな』

『まさかですけど、この下に行く気ではないでしょうね。』

先輩と千馬さんは首を縦に振った。行くらしい・・・

内心、とても恐い。こんな暗闇。

おそるおそる、階段を下る。下りきった頃、なぜかカミナリがピカーん、ゴロゴロと鳴り響いた。

『ヒャ!!』

後輩くんは情けない声を出した。

『お前・・・』

ただ一瞬見えた。カミナリの残光で見えた。この先に赤い札がたくさん貼られた扉と牢獄を・・・


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