第3話 金田少年の事件簿 02

 浜内小学校は海を望む海岸線上にある。校門を出ると道を挟んだ向かい側は堤防になっていて階段で下の浜まで降りることができる。


 真とカオリは懐中電灯で足元を照らし上がら慎重に、でも早足で階段を駆け下りる。2人が目指したのは砂浜を堤防沿いに進んだ先にいある一軒家。砂浜にぽつんと現れる円錐台型の台地の上にある家。

 しかし、砂に足を取られそうになりながら走る真が急に足を止め、前方を持っていた懐中電灯で照らした。

 真が何も言わずに止まるのでカオリがその背中にぶつかった。


「あいたっ! もぅ、どうして急に止まるのよ!」


「いや、だってあれ、見ろよ」


 真が持っていたライトの光で円を描くように“あれ”を照らす。


 カオリは訝しがりながらも同じ場所に懐中電灯の光を当てた。


「うそ!? あれって――!?」


 2人はおそるおそるそれに近づいて、よく目を凝らした。


「女の子……だよな?」


 そこにはピンク色の髪をした小学校低学年くらいの女の子がうつ伏せに倒れていた。浜に打ち上げられたばかりのようで全身ずぶ濡れだった。


「し……死んでるのか?」


 真が問いかけるが返事はない。


「ひっくり返してみたら?」


 カオリが言うと、真はしゃがんで女の子をゴロンと転がした。


「うわぁぁぁぁ!!!!」「きゃああああぁぁぁ!!!」 


 真が叫びながら尻もちをついた。その声に驚いたカオリもまた叫んだ。


 ひっくり返した女の子の口から触手が生えていてそれがうにょうにょと蠢いていたのだ。それが口から触手の生えた化け物のように見えて真は驚いたのだが、よく見るとその触手はタコの足だった。そしてタコの足はチュルチュルと女の子の口の中に吸い込まれていって、


「うま……うま……」


 女の子は口をもぐもぐさせゴクンと喉を鳴らした。


「な、なんだよ……タコ食ってただけかよ。驚かすなよな……」


「いやいやいや。おかしいでしょ! この子生でタコ食べてたってことよ? 踊り食いよ踊り食い!!」


「くいもんが食えるってことは生きてるってことだろ? よかったじゃねぇか」


「そういう問題じゃなくて――」


「なんなんだぞ? うるさいんだぞ?」


 2人の騒がしいやり取りで目を覚ました女の子がムクッと上半身を起こした。


「うお!? 気づいたのか?」


「うん?」起き上がった少女は真とカオリを交互に見て。「知らない子どもがいるんだぞ。マズちゃんたちはどこだぞ?」


 ピンクの髪の女の子はキョロキョロと周囲を見回した。


「お前こんなとこでなにしてんだよ?」


「よくわかんないんだぞ。それよりここはどこなんだぞ? お前たちこそ何してるんだぞ?」


「俺はただ……っていけね! うんち探偵を呼びに行くところだったんだ! カオリとりあえずここは任せたぜ!」


「え? あ、ちょ……うそでしょ!?」


 カオリの反論を聞くことなく真は走り出した。


「うんち? トイレか? うんち我慢してるときに走ると漏れるんだぞ!」


 状況のわかっていない少女は走り去る真に向かって叫んだ。


 …………


 真はプリンのような岩の台地を駆け上り、家のドアに張り付いた。そしてチャイムを連打しながら、家の住人――うんち探偵の名を叫んだ。


 うんち探偵はこの町では知らない人間はいないほどの有名人で、町の人の相談に乗ったり警察と協力して事件を解決したりなどして目まぐるしい活躍を見せている名探偵だ。

 そんな彼にもひとつだけ弱点があった。それは極度の運動音痴だと言うこと。そのことから運動音痴探偵略してうんち探偵と呼ばれ子どもたちに親しまれていた。


「大変なんだ! 学校で事件が起きたんだ! 起きてくれよー!」


「ほっほっほ。そんなに叫ばなくても聞こえていますよ金田君」


 ドアホン越しに聞こえてくる物腰の柔らかそうなゆったりとした声。その声の主こそがうんち探偵その人だった。


「うんち探偵! 聞いてくれよ――」


「わかっていますとも。すぐにそちらに行きますので、その間に金田君は落ち着いてくださいね」


 真は言われたとおりに自分を落ち着かせる。3度深呼吸して、手のひらに人っという字を3回書いて飲み込んで、両手の人差し指に唾を付けその指で頭にグルグルと円を描いてその場で座禅を組んだ。いろいろ間違ってはいるが彼なりの自分を落ち着かせる方法がそれだった。


 程なくして、うんち探偵こと馬場流麗ばばながれが玄関先に顔を出した。彼は紳士服に身を包んだカイゼル髭のよく似合うザ・ジェントルマンという出で立ちだった。そしてなんと言っても特徴的なのは白髪の混じった渦巻のような髪型。チョコとバニラのマーブルソフトのようで、見ようによってはギャグ漫画でおなじみのうんちのような形をしていた。そんなうんちヘアを隠すように流麗は黒い帽子をかぶった。


「金田君。また事件なのですね?」


 日付が変わろうかというこの時間に子どもがひとりで自分の家を訪ねてくる。それが何を意味しているのか流麗は瞬時に察した。


「ああ! そうなんだよ!」


「すぐに連れて行ってください」


 2人は学校へ向かうために砂浜を走る。うんち探偵は運動音痴で走るのが遅く真はグングンと距離を離していき、浜の途中ででカオリと謎の少女の2人と合流した。


「カオリ!」


「もう! いきなり置いてくなんてヒドイじゃないのよ!」


「わるかったって。でも、そんな小さな子だけ置いてくなんてできないだろ?」


「まぁ……それはそうだけど……」


「小さいってあたしのことか? 言っとくけどあたしは19歳だからもうリッパな大人なんだぞ」


「はぁ? どう見たって俺より年下じゃねぇかよ」


 そんなやり取りをしている3人のところにようやく流麗が追いついた。


「ようやく追いつきました」流麗は膝に手をついて呼吸を整える。「あの……ところで金田君。事件が起きたのではなかったのですかな?」


「っと、いけね。そうだった!」


 すると真は再び学校に向かって走り出そうとする。


「ちょっとまって。この子はどうするの?」


「うーん。とりあえず連れて行って、それから考えよう。おまえもいいよな?」


 真が少女に確認すると。


「うん? よくわからないけどわかったんだぞ」


 こうして4人で学校へ向かうことになった。


 …………


 真、カオリ、ビデ夫の3人が学校に侵入したときとは打って変わって、校舎の1階には電気が灯っていた。それから昇降口前には2台のパトカーが止まっていた。


「警察のが速かったみたいだな」


「いやぁ。走るのは苦手でしてねえ……」


 流麗は申し訳無さそうに言った。


「別にうんち探偵のせいじゃないって」


「そよ。こういうのは早いもの勝ちじゃないでしょ。警察と一緒に事件を解決すればいいのよ」


「ほっほっほ。それもそうですねえ」


 4人は学校に入り、事件のあった宿直室に向かうと、部屋の前に立っていた警察が4人に気づいて声をかけた。


「あの? あなた方は?」


「俺は金田真だ。こっちが沢出カオリ。それから――」真が次に紹介しようとして少女を見る。「そういや名前聞いてなかったな」


「ん? あたしか? あたしはコビドだぞ!」


「コビド? なんだ、おまえ外国人だったのか?」


「髪の毛ピンク色なんだから当たり前じゃない」


「そういやそうだな……でも言葉通じてるぞ?」


「……そう言えばそうね。でも変な喋り方じゃない?」


「ああ、あれかキコクシジョか?」


 いつまで続くのかと見かねた警察が苦笑いで「あのね、君たち」と間に入る。


「その話はもういいから。見たところ小学生みたいだし早くおうちに帰りなさい」


「あたしは小学生じゃないんだぞ。19歳なんだぞ!」


 指摘されたコビドが怒ったように言う。


「まだ言うのかよそれ」


「ほっほっほ。ちょっとよろしいですかな」静観していた流麗が警察に話しかける。「私は馬場流麗というものです」


「ええ!? 馬場流麗ってあの探偵の!?」


 馬場流麗の名はこの町一帯に轟いていて、その勇名は警察も一目置く存在となってるが、世間はまだまだ広く、名前は聞いたことあるけど実際に本人を見たことがないという者いたのでこういうやり取りは珍しくなかった。


「ええ、まあ、お恥ずかしながら。――ところで、おそらく警部さんが来ていると思うのですがお話させてくれませんかね?」


「は、はい!」


 警察は宿直室の中に入っていった。そして部屋から出てきたのは眼鏡を掛けた端正な顔立ちの女性だった。 


「おやおや、本件の担当は阿穴さんでしたか」


 流麗は知った顔が現れたことに、話が早いと相好を崩した。


「あら? 馬場さん……と、この子たちは……?」


 訊かれた真たちはさっき警察にやったようなやり取りを繰り返した。


「そう、君たちが馬場さんを連れてきたのね。それはわかったからもうお家に帰ったほうがいいわよ。――親御さんも心配してるでしょうから、警察の人間に送らせるから早く帰りなさい」


「なんでだよ! うんち探偵を連れてきたのは俺たちなんだから協力させてくれよ」


「ところで金田君。私もひとつ気になっていたんですが、どうして夜の学校に?」


「あ、えっとだな。切っ掛けはこの間のお弁当盗難事件だったんだ――」


 流麗に訊ねられた真は、お弁当盗難事件に端を発するこれまでの経緯を流麗に話した。一度それに関する相談を受けていた流麗の理解は早かった。


「なるほど。それでオバケの正体を確かめるために夜の学校に忍び込んだというわけですか」


 流麗は先日真たちが自分の家に来たときのやり取りを思い出し、自分にも否があることを知り少しだけ彼らに同情した。


「そう、警察に提供された映像は君たちが撮影したものだったのね」


「ああそうだぜ! な、ビデ夫……」と、真はそこにいるはずの秀夫に向かって同意を求めたつもりだったが、そこに彼の姿はなかった。「ビデ夫……? あっ!? 忘れてたぜ!!」


 真はようやく秀夫の存在を思い出し大急ぎで秀夫がいる2階のトイレに向かって走り出した。それをカオリとコビドが追いかけた。


「あ、ちょっと君たち!?」


 急に走り出した真たちに心配そうに声をかける阿穴。


「まあ、学校にいる分には安心でしょう」


 彼女と違って流麗はひどく冷静だった。


「――ところで阿穴さん。現場を拝見してもよろしいですかな?」


「そ、そうね。馬場さんだったら特に問題ないと思うわ……とは言っても、もうほとんど捜査は終わってるのよね」


「それでも構いませんよ。では、失礼して」


 流麗は現場に足を踏み入れた。


 阿穴の言う通り、そこには被害者の姿はなく、現場検証もほとんど終わっていた。ただ、畳に染み込んだ血はそのままの状態になっていて、それがこの事件の凄惨さを如実に物語っていた。


 流麗の顔から先程まで子どもたちに向けていた柔和な笑顔が消え、真剣な顔つきになった。


「操作状況を伺っても?」


 流麗が言うと、阿穴はうなずいて説明を始めた。


「被害者の名前は愛知洋和。ここ浜内小学校の教師。年齢は30歳。彼は今晩学校の宿直に当たっていたそうね」


「当たっていた“そう”……というのは?」


「本来は宿直担当者は1人のはずなんだけど、ここ最近この学校で幽霊騒ぎがあったせいで宿直は4人でやるようになったらしいの」


「なるほど。先程の金田君の話とも一致しますねえ。……それで、ほかの3人はまだこの学校にいるのですね?」


「ええ。会議室で待機してもらってるわ」


「ぜひお話をお伺いしたいのですが」


「そうね。私ももう一度話を聞くつもりだったから一緒に行きましょう」


 こうして阿穴と流麗は3人の待つ会議室へと移動することにした。


 その道すがら阿穴は先程の続きを語った。


 事件現場には浜内小学校の備品であることを示すシールが貼られたバットが残されていた。そのバットには被害所のものと思われる血液が付着していてそれが凶器であることは間違いないとのことだった。

 被害者の頭部には執拗に殴られた形跡が損壊の状態はかなりひどい状態だった。一方で頭部以外には外傷がなかった。頭部の状態から判断すれば犯人は被害者に対して相当な恨みを抱いていたことはほぼ間違いない。


 そして現場には凶器の他にノートパソコンが残されていた。死に際まで被害者が使っていたものらしく、そこには被害者の愛知がSNSで女性に対する誹謗中傷を繰り返していた痕跡が残っていた。


 宿直室の戸は障子戸で鍵は付いておらず誰でも自由に出入りが可能であった。それに加え宿直室の窓が全開になっていたとのことだった。また、警察に連絡が入ったのが23時過ぎで22時から20分ほど掛けて教師4人で校内の見回りを行っていたという証言が取れているため、被害者の死亡推定時刻はその間の時間になる。


 内容をあらかた聞き終えた流麗は話題を変えた。


「ところで阿穴刑事。金田君が話していた死んだはずの人間がビデオに映っていた件について警察はどのような見解を?」


 阿穴刑事はお手上げだと言わんばかりに首を左右に振って、


「見解も何もまったくね」阿穴は首を左右に振った。「正直わけがわからなさすぎて警察では保留中よ」


「そうですか。……まあ、無理もないですなあ」


「ちなみに馬場さんはどう思います?」


「いやあ、いくらなんでも情報がなさ過ぎて結論は出せませんよ。そもそもオカルトは専門外ですしねえ」


 2人が話しながら歩いていると会議室に到着した。部屋の扉を開けるとそこには2人の人物がいた。


 ひとりは50代後半の女性で名前は晦日みそかとし子。見た感じではとても落ち着いていた。もうひとりは40代前半の太った男性で名前は大町泰おおまちやすし。彼は机の上にひろげたお菓子をむしゃむしゃと食べていた。


 流麗はまず初めに、同僚が亡くなったというのに2人とも取り乱した様子がないことに若干の違和感を感じた。


「あの、3人のはずでは?」


 1人足りないことに気がついた流麗が阿穴に訊ねた。


「すいません。もうひとりはどちらに?」


 阿穴が部屋にいた2人に訊ねると晦日がハキハキと答えた。


「彼女は、川屋君でしたか? 彼の様子を見に保健室へ行きました」


「警察がここに来る前に彼が階段の下で倒れているのを僕が見つけたんです。それで保健室に運んだんです」


 大町がおっとりとした口調で言った。


「川屋……?」


 首をかしげる阿穴に、流麗が先程会った子どもたちの仲間だと説明した。


「なるほど……どおりで金田君と澤出さんだけだったわけですか……」


 そして、流麗も得心がいったと言わんばかりに大きくういなずいた。


「ところで、この人はだれなんです?」


 大町がお菓子を食べながら流麗を指差した。


「説明がまだでしたね。彼は馬場流麗さんといって、この町では有名な探偵です。いろいろあって捜査に協力してくれることになりました」


「おお! 探偵でしたか! これはもう事件は解決したも同然ですね!」


 流麗が探偵だと知るやいなや大町はほっこりとした表情を作った。


「ほっほっほ。そう言ってもらえると鼻が高いというものです。――では、これからおふたりにお話を聞かせていただきたいのですが、よろしいですかな?」


「もちろんですとも!」


 阿穴が見守る中、流麗による聞き取りが始まった。


「阿穴刑事から聞いたのですが、宿直を4人で行っていたそうですね?」


「はい。最近うちの学校で幽霊騒ぎがありまして。子どもたちだけならまだしも、一部の先生までもが幽霊を見たなどといい始めて……。それで今後は宿直のときに複数の人間で見回りをしてはどうかとわたくしが提案したんです。全員が同じように幽霊を見れば真、何もなければ単なる勘違いだった、で話は終わりますからね」


「なるほど……。ところで今日はその幽霊とやらは現れたのですか?」


 晦日と大町は同時に首を横に振った。


「現れませんでしたよ。今のところはですけど」


「今のところ――というのは?」


「校内の見回りは2回行うルールになってるんです。22時に1回目。日をまたいで2時に2回目です。そのうちの1回目は幽霊は現れなかったという話です。まあ……こんな事が起こってしまってはもう2回目はなさそうですけどね」


 晦日は始終落ち着いた様子で説明を続けた。


「そうですね」


 大町がお菓子を食べながら同意した。


 次に流麗は2人のアリバイについて質問した。


「わたくしは1回目の見回りが終わった後茶道室で休憩していました」


「僕は視聴覚室にいました」


「皆さんは別々の場所で休憩していたのですか?」


「はい。2回目の見回りの時間になるまで4人一緒に休憩しても良かったんですが、僕が1人の時間が欲しいとワガママを言ったんです。そうしたらみんな同じことを思っていたらしくて、その後誰がどこで休憩するかを決めたんです」


「なるほど。それで大町さんが視聴覚室で晦日さんが茶道室と」


「そうです。ちなみにここにいない福岡先生は職員室にいました」


 ちなみに茶道室は新校舎の3階、視聴覚室は2階で職員室は1階にある。愛知が殺された宿直室だけが旧校舎にある。


「ここにいない福岡さんが第一発見者というのは間違いないですね?」


 流麗が阿穴刑事に訊くと彼女は頷いた。


「福岡さんが遺体を発見したころ2人は何をしていたんですか?」


「わたくしは普通に茶道室で休憩していましたよ。仮眠でも取ろうかと思って横になっていたところに叫び声が聞こえてきて、1階に降りた時にちょうど旧校舎の方に明かりが見えて、部屋の前に誰かが立っているのがわかったんです。それで慌ててそちらへ向かったんです」


 新校舎と旧校舎は廊下側の窓が向かい合うように建っているため、新校舎の廊下の窓の外から旧校舎の廊下の様子がわかるのである。


「宿直室に着くといきなり福岡先生に警察を呼んでくれと頼まれてその通りにしました。先生の様子からなにかあったのはわかりましたので。その途中で階段の下に倒れている生徒を見つけ、声をかけたのですが中々起きず、悪いとは思いつつも警察も呼ばないといけなかったので一旦彼をそのままにして職員室へ行ったんです。それから大町先生に声をかけるために視聴覚室へ行きました」


「警察を呼ぶために宿直室を離れたと?」


「はい。職員室から電話をかけたので」


「なるほど。それで、大町さんは?」


「僕は視聴覚室でテレビを見ていたんですがいつの間にか眠っていて。そこを晦日先生に起こされて、事件が起きたから一緒に来てくれと言われて、最初に階段の下に倒れている男の子を保健室に運んだんです。それから宿直室に向かったら先生があんなことに……」


「眠っていたということは悲鳴は聞いていなかったということですか?」


「はい。お恥ずかしいことに……」


 大町は申し訳無さそうに頭をかいた。


「なるほど。だいたいのことはわかりました。――ちなみになんですが、晦日先生は携帯電話はお持ちではないのですか?」


 流麗の質問に晦日は首を縦に振る。


「機械が苦手なもので、普段から持ち歩いていないんです」


「いまどき珍しいですな」


「便利だということは重々理解しているんですが……」


 晦日の言葉に申し訳なさそうな態度を感じ取った流麗は「別に責めているわけじゃないですよ」と言って話を終わらせた。その後2人は福岡のいる保健室へ向かうことにした。

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