宮田はなと山根真衣
こんな夢をみた。空は暗かった。辺りは田んぼや畑に囲まれている。一本の道を真っ直ぐ歩いていたはなはどこかで見たことのある景色のようにも思えた。きっと家からそう遠くはない。
急に周りが霧のような、煙かもしれない、そのような白いもので覆われる。はなは怖くなった。それは直ぐに晴れ、そして目の前に鳥居が現れる。それを見上げたところで目が覚めた。
しばらく目をパチパチさせながら先程まで浮かんでいた光景を振り返る。なんだか変な、不気味な夢だなと思う。あの歩いていた所は見たことある、もしかしたら一度、行ったことがあるような気がしたが思い出せない。確か、家の近く、どこかにあったはず、何も根拠はなかったが直感的にそう確信めいたものを持つ。そんな夢で見た光景をもう一度、忘れないように何度も復唱するように頭の中をそれで埋め尽くした。周りは田んぼや畑がある、神社でよく見る高いもの……。
気持ちを切り替えて起き上がる。今日はたまたま公園でバッタリ出会い仲良くなった新しい友達と遊ぶ日。楽しみだと朝からワクワクしていた。
修学旅行生が泊まっているホテルの一室。とうに消灯時間は過ぎており生徒達は眠りにつかなければいけなかったが中には電気を消しながらでもこそこそと遊んだり、話し込む生徒が必ずいる。
「ねぇ、怖い話でもしない?」
中心になっている女子がこんな提案をした。他の4名の女子は面白そうと賛同するが
「学校の近くにさ、神社があるでしょう? あそこの階段の途中にある道に行くと人が消えて戻ってこれなくなるって噂、知っている?」
「えっ、なにそれ。知らない」
初めて聞いたと誰もが口々に言う。出だしで聞き手の心を掴んでしまったようだ。山根はもう話すしかないと心に決めた。適当に、あの周辺で遊んでいた子供二人がその神社にも足を踏み入れて遊んでいたら、一人の子がその道を歩き始めて、もう一人の子もその後を追おうとした時には姿を消していたと咄嗟に脚色した。
「それ、本当の話? 誰から聞いたの?」
「お姉ちゃんから。いつの話かは分からないって」
「場所が場所だし、なんかそういうことありそう」
「うん、もうあの神社には入らない方がいいかもね」
思いのほか好感触で乗り切った。しかし山根はなんともいえない気持ち悪さがじんわりと胸に広がっているのを感じた。あの日の事はもう忘れようと思った、それでも不意に浮び上がってくるあの日の記憶。山根は部屋が暗いのをいいことにその気持ちを隠すことなく表情に表していた。
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