子の心親知らず。患者の心、歯科医知らず!

太宰治にごめんなさいするよりも
歯科医の先生にごめんなさいするべきでは?笑

太宰治の独特の表現が
抜歯への恐怖の際に咄嗟に出てくる程の
太宰好き。そんな作者が地獄へ足を踏み入れました。

恐怖に対する太宰の表現、考え方。
僕の個人的な感想なんですけど、
彼は嫌な目に遭えば遭うほど、逃げ、葛藤、苦しみ、昇華、諦め、先延ばし、正当化……。なんとかして人間くさくもがいて、結果生き生きと見えるんです。生き生きとは正反対っぽいですけど。

歯が痛い時の歯医者って、虫歯が出来たことの無い人以外は皆、経験があると思います。
あの恐怖。抜かなければ改善はしない。それが分かっていても、分かっているからこそ、あの独特の恐怖への対処は流れに身を任せるしかありません。

でも太宰、彼は違います。
流れに身を任せる? いいえ。彼の周りに流れが出来るのです。逃げも葛藤も無様さも、全てが彼の生き様なのですから。

長くなりましたが、この『患者失格』も、とても読み応えがあります。
僕は彼や、この作者のように、流れを作り出すことはできません。

ただ、その作り出されたハチャメチャな流れに巻き込まれてみたい。
キケンな『恐ろしさ』がこの作品にはあると思うのです。

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