第4話 両想いの重力球

 俺と彼女は、闇の中でひとつになっていく。融合し始めたのだ。

「何から、知ろうかなぁ。」

 俺は、人生最後のことだからと、半ばヤケだったのであるが、彼女の方は、自分のことをいつも見てくれていた彼の記憶に興味が深々だったのだ。

「質問形式の方がよくない?」

 俺は、女については疎かった。面食いだったのかな、俺?

「若いうちはそんなものよ~。」

「あ~、思考読まれてるし。融合します。」

 そこで、初めて俺が入手した情報は、彼女の独特のピッチの足音と、大型トラックのブレーキ音だった。俺は、流せぬ涙を流し、この感情をどうしようか、と悩んだ、悔いた。

「もう、やめよう!」

 言い出したのは俺だった。

「でも、体が焼かれちゃってたらねぇ~。」

「そうか、まだ、意識不明とか、そういう可能性もあるのか。」

「だけどさ、もう少し、一緒にいようよ。」

「合わす顔がないよ。見せられる顔も、物理的にも不可能だけど。」

「じゃあ、融合しきっちゃおう。」

「それで、何が変わる、の?」

「わかんないときは、わかんないようにすればいいじゃん。」

「でも、失敗したら、元に戻れなくなるし。」

「元に戻って、私に、謝りたいんでしょ。命令よ!」

「そうか、でも文字通り、イチかバチかに賭けなきゃならない局面だ。なんでも、やってみよう。」

 そうして、闇はブラックホールへと収束し、ブラックボールを生成してから、思念を両端に引っ張るイメージで引きちぎろうとした。その結果・・・・・・・。

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