彼女と一緒になりたいと願ったら

稲兎谷ぴょん

第1話 惨憺たる出会い

 俺は、よく考え事をする。ただ漠然と、妄想にふけってしまうのだ。だから、学校でみんなが集まって、何かをしようなんていう時も、積極的な発言はできなかった。考えてはいたのに。そんな俺は、この教室では空気のような男だ。だから、空想の中で、クラス一可愛いあの子に声をかけてみたい、と思っても、あるあるなんだろうけど、映画のまねごとを彼女と重ねて時を過ごすだけだったのだが…。映画のような出会いは、ない。ずっとそう思い込んでいた。しかし、こんな事があるなんて。

 未来の可能性は、素晴らしい。彼女が、VRのアイドルみたいな仕事をしていて、俺とこうしてデートできるなんて。まあ、それは妄想。しかし、所詮はVR、俺はもっとまともな付き合いがしたいんだ。俺は、将来の仕事の企画の一つにはなるのではないかと、VR恋愛ごっこについて、メモを取り出した。そりゃ、映画はカッコイイさ。なにがいいって、何気なさか。もっと体感的なものも考えたほうがいいな、空気感とか、気まずさとか。これを実体験するには。首をひねって、放課後の道を歩いていると、彼女の足音が聞こえてきた。性急な感じだ。そうか、足音ってのも悪くはない。立ち止まってメモを取っていると、場所は横断歩道、駆けてくる彼女、そして、2tトラック。「何考えてんの、バカ!」俺のミスで、彼女を死なせた。最悪の俺の人生の最期だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る