試験2日目 《教室》

長くなったので2つに分けました。


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村田陽side




 時刻は朝7時。試験の2日目を迎えた。試験、とは言ってもまだ試験は始まっていないのだけれど。


「あ、村田くん!おはよ〜」


 そう声をかけてくれたのは清水さんだった。僕も笑顔でそれに応える。


「うん、おはよう。それにしても早いね、どうしたんだい?」


 ゲームが始まるのは8時だ。僕以外の人たちは7時30分頃に来ると思っていたので、そう尋ねる。

 一体どうしたのだろうか?


「いやぁ〜、なんか早く目が覚めちゃってね…、えへへ。それと、昨日のことが心配で…ね?」


 昨日のこと。それはDクラスによる妨害についてだろう。矢島くん、そして桜井くんの活躍によって上手く回避をできたものの、いつバレてしまうかはわからない。

 もし獅子くんが、僕たちEクラスの状況が順調だと知ったら…、一体どうなってしまうんだろう。その不安を清水さんも感じていたのか、彼女の表情はどこか不安げに映る。


「大丈夫だよ。僕に任せてくれれば、何とかするからさ」


 桜井くんが僕を頼りにしてくれている。桜井くんから指示を受けているのは僕なのだ。クラスのためにも、桜井くんの頑張りのためにも僕がもっと頑張らなくちゃいけない。

 そう思っていると、清水さんが先ほどの不安げな顔とは打って変わって、真剣な眼差しを向けていた。

 いつもは見ることのないその雰囲気に、僕は思わず息を呑む。


「村田くん。私ね、一昨日の夜に学からメール貰ってたの。そこにね、『陽は何かと責任を負ってしまう傾向にある。自分を責めて、自分を追い詰めてしまう癖があるんだ。だから、陽にそういう傾向が見えたらあいつを救ってやって欲しい』って書いてあったんだ」


 それを聞いて、「やっぱり彼はすごいな」なんて思ってしまった。僕が学みたいになれるわけがない。いっそのこと、学と柊さんがこのクラスを率いれば良いとさえ思ってしまったのだ。


「村田くんはさ、十分凄いと思うの。でもね、やっぱり1人じゃできないこともあると思うんだ。だからさ、もっと私たちを頼って欲しいな」


「…1人じゃできないことがある…なんてことは、僕だってわかっているよ。でもね、リーダーが僕みたいに情けなくて弱い人間じゃ、みんなを守ることはできないんだよ。だから、もっとみんなのために僕が…」


「違うよ、そういうことじゃないと思う」


 そういうと、清水さんは大きく一歩を踏み出す。そして僕の顔を指差すと、こう告げたのだ。


「みんなのためって言っておいて、それが本当にそうなっていると思うの?みんなのために君が頑張ることは良いことだと思う。でも、私たちは別に君に守ってほしいわけじゃないんだよ」


「…結局君は、何が言いたいんだい?」


「わかりにくかったかな?まぁ簡単に言うとね…




 君はこのクラスを1番信用しているように見えて、実は1番信用していないんだよ」








 僕自身、今回の試験は何事もなく無難に乗り切れれば良いと思っていた。そうすれば、夏休み明けから楽しい学校生活を送れる。そう思っていた。


 でも、その考えは改めなければならない。


 たとえこの試験を乗り越えたとしても、その次、またその次で結局そのツケが回って来るのだ。


 だから僕はこの試験で成長しなくちゃいけない。さっき気づかされた僕の欠点。僕の弱さ。これを克服しなくちゃいけないんだ。


 みんなのため、と言って、僕がやってきたことは結局みんなのためになっていなかった。

 適材適所と言うように、人にはそれぞれに合った役割がある。僕が何でもかんでもやることは決して良いことじゃない。みんなの成長を妨げると同時に、戦略の幅が格段に狭まってしまう。

 僕がやらなくちゃいけない役割は、みんなをまとめることであって、守ることじゃなかったんだ。


 僕が守るんじゃなくて、みんなで力を合わせて進むんだ。


 そのことに気づかせてくれた清水さん、そして学に感謝しつつ、脱出ゲーム2日目を迎えたのだった。








 

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