第21話 キルカのブルマ気持ちよすぎるだろ!

 9月上旬の朝。


 府愛知ふえち市では、今日も当たり前のように怪人が現れ人々を襲っていた。


「イヤーーッ!!」


 通行人の女性が巨大クモ型怪人を目にし声を上げ逃げようとすると白くてネバネバした糸が彼女の体に巻きついて柔らかな肉質を際立たせる。


 肉欲高まる姿が大衆にさらされ抵抗するも服が乱れ、より淫猥いんわいになり、このままでは町のモラルが崩壊してしまう……そう思われた時。彼女は現れた。


 ふくよかな胸に合わせた大きな体操服に豊満なバストを張り出し、くびれた腰で布地を余らせながらチラリと見える赤い三角形状の生地と黒いニーソックスに太ももを食い込ませた美しきヒーロー……レッドブルマーの到着に誰もが歓喜した。


「やった! ブルマー戦士が助けにやってきたぞ!!」


 しかし、安心したのも束の間。クモ型怪人は、直ぐさま糸を吐き出しレッドブルマーの体を拘束する。


「ああ!? いけないっ!! このままではレッドブルマーのブルマが脱げてしまう!!」


 粘性のある糸から逃れようとすれば着崩れてしまうことは必至。


 この窮地にギャラリーは興奮しながらスマホを構え、レッドブルマーの姿を収めようとする。


 が。


「撮るな」


 周囲に居合わせた女性たちによって撮影機材は叩き落とされ、ついでに冷ややかな目で「見んな」と釘を刺される。


「……ハイ……スミマセン……」


 男は目を反らしながら萎縮しているとレッドブルマーは炎を巻き上げて束縛を焼き切り、その勢いで怪人を燃やし尽くしていた。


「あ……やったわ!!」


 炭クズになって怪人が崩れ落ちていくと女性達を縛りつけていたクモの糸も消失していき捕らわれていた人達は感謝の言葉を贈る。


「ありがとう! レッドブルマー……」


 かくして府愛知ふえち市の平和が取り戻され、赤きブルマーの戦士は何も語らずにその場を立ち去っていった……。



 怪人を倒した後、私が人気ひとけの無い場所で元の姿に戻ると近くに居た紺野こんの よいちゃんが申し訳なさそうに声を掛けてきた。


「ごめんなさい。キルカさん……私がハチマキを……ブルーマーサファイアに取られてしまったせいでアナタに負担ばかりかけさせてしまって……」


「ううん、全然、大丈夫だから気にしないでよいちゃん」


 元々、一人で戦ってたしね……。


「ぅぉぉぉぉぉおおおおおオオオッ!!!! キルカーーーーぁ!!!!」


 私とよいちゃんが話しているとお兄ちゃんが突然、声を上げながら走ってきた。


「な……なにッ!?」


 近づいてくる兄の姿によいちゃんが動揺するとお兄ちゃんは叫んだ。


「さっきの戦い全然、エロくなかったぞッ!!」


 だからなんだよ……。


「コラァ!! お兄ちゃんを軽蔑の目で見ない!! そんな目で見られたらお兄ちゃんの性癖が歪んじゃうでしょうがぁ!!」


 いや、お兄ちゃんの性癖とかどうでも良いし……。


「うぅ……何故だキルカ……以前はあんなにイヤらしいくもエロい反応を見せていたのに……どうして……どぅーして……」


「いや……なんていうか……ワンパターンで成れてきたし……」


「ぬぉおおおおん!!」


 呆れながら答えるとお兄ちゃん両手で顔を抑えながら泣き叫んだ。


「それじゃあ、お兄ちゃんはこれから何をオカズに生きていけば良いんだよーーッ!!」


 まず、妹をオカズにすんな。きもい。


「行こ、よいちゃん」


 私は身内の恥を見せたくない思いから宵ちゃんの手を取ってこの場を後にした。


 そうして、兄、古間ふるま 好希こうきは誰もいない歩道で手をつきながら喋りだす。


「ふ……ふふ……こうなってはアレを使うしかない……待っていろキルカ。お兄ちゃんがキルカのブルマー姿の魅力をもっと引き出してやるからな……」


 ブルマーをこよなく愛する変態おとこの陰謀が人知れず動き出す……。



 はぁ……また怪人退治か……。


 昨日の今日で嫌な気分だが無視するワケにもいかない。


 キルカは急いでブルマー戦士へと変身し現場に急行すると怪人に襲われた男性の声を耳にする。


「い”やぁーーー!!」


 幾多もの腕を使い男の乳首を責める怪人を前にレッドブルマーは毎度の展開にうんざりしながら、やらしい攻撃を仕掛けてくる怪人と戦闘を繰り広げる。


 胸をつつかれ揉まれ、時には秘所にまで手を出されるもレッドブルマーは心を殺しながら淡々と敵を破壊していく。


「なんだ……この感じ……」


 戦況は明らかにブルマー戦士の優勢であったが戦いを見守る観衆は違和感を覚える。


 何かが足りない。そう、大切な何かが……。


 その気がかりはレッドブルマーが勝利を収めても消えることはなかった……。


 しかし、それでも再び平穏が帰って来たことに変わりはない。


「ありがとうレッドブルマー」


 普段よりもテンションは低めだったが住民は幼き英雄に感謝を述べた。


 コレで一件落着……と思われた次の瞬間。巨大な氷柱がレッドブルマーを襲った。


「久しぶりねレッドブルマー」


 突然の不意打ちを退けながらレッドブルマーは見覚えのある青いブルマーを穿いた銀髪の少女と顔を会わせる。


「さあ、今日こそ決着を着けましょうか」


 好戦的に間合いを詰めるブルーマーサファイアにレッドブルマーは戸惑う。


〈どうしよう……別に戦いたくないのに……〉


 ハチマキを奪い取ろうとするサファイアの動きから身を守りながら彼女は逡巡しゅんじゅんする。


「いつまで、そうしていられるかしら!?」


 このままでは自分の正体がバレてしまう。


 レッドブルマーは社会的死を覚悟したその時、自分の胸と相手の胸が急に引き寄せあってくっついた。


「なっ!? 何よコレッ?!」


 不可解な現象にサファイアは顔を赤くしながら叫んでいると唐突に上から巨大ロボが降り立ち言った。


万乳引力ばんにゅういんりょくの法則だ」


「は?」


 ロボットから飛び出た単語にブルーマーサファイアは理解が追いつかない声を上げる。


「地球上において男の視線がオッパイに引き寄せられるだけではなく、この宇宙においては、どこでも全てのオッパイは互いに引き寄せあっている。それが万乳引力ばんにゅういんりょくの法則だ」


 ニュートン先生そんなこと言ってないだろ……。


〈いや……それよりも今の声は、もしかして……〉


 レッドブルマーが、ある人物の顔を思い浮かびかけているとサファイアは叫ぶように問いかけた。


「いったい何者よアンタッ!?」


 するとロボットの搭乗部が開かれ一人の男が姿を表し名乗り上げる。


「私は怪人王!! 怪人達の生みの親だ!!」


 あー……お兄ちゃんだこれ……。


 正体を隠すためかベネチアンマスクを着けていたが間違いなくキルカの兄であった。


〈何しに来たんだよ……〉


 嫌な予感しかしない中。居合わせた人々はざわめいた。


「か、怪人達の生みの親だって!?」


「諸悪の根元じゃないか……」


「ついにラスボスが現れやがった……!!」


 なんか勝手に盛り上がってるし……。


「怪人の王だか何だか知らないが、くだらないッ!! サッサッと消えなさいッ!!」


 ブルーマーサファイアは、いつものように鋭く尖った氷を形成しロボットへとぶつけると二人の胸部にかかった引力が消えて自由になる。


 が!! 直ぐに反撃のビームが飛んできた。


「きゃ!? なによコレッ!?」


 避けきれず光線を受けてしまったサファイアの胸がドンドンと膨らみ青いブルマーが縮んでいった。


「オヒョーッ!!」


 今まで一度も見たこのないブルーマーサファイアの恥ずかしい姿に観衆は鼻の穴を広げて食い入る。


「見るなッ! このクソオス共ッ!!」


 サファイアは下卑た視線を向ける男達に攻撃しようとすると怪人王はそれを阻止した。


「コラコラ。暴力はいけないよ。暴力は」


 そう言いながらヘビのように自在に動くロボットアームを使いブルーマーサファイア捕らえ肉質の柔らかさを際立たせる。


「んん。ナイスブルマー」


 ブルーマーサファイアは怪人王に臀部でんぶを見つめられ激しい怒りを覚えながら剥き出しになった鼠径部そけいぶに走る快感と胸を軽く締めつけてくる刺激で脳内の感情がグチャグチャになり望まぬ声を上げてしまう。


「んぁッ……あ!!」


「良い声で鳴くじゃないか」


 煽るような一言にブルーマーサファイアは今までにないほどの苛立ちを覚え空気中の水分から氷の刃を形成し怪人王に向けて放った。


「死ね!!」


 明確な殺意を持った水の結晶は標的に命中すると砕け散り氷霧ひょうむとなってただよい相手の姿が一時的に視認しづらくなる。


「ふふふ……」


『やったか!?』と言わんばかりのお約束展開に怪人王は期待を裏切ることなく不気味な声を響かせながら無傷の姿を表す。


「バカなッ?! 直撃だったハズなのにッ!? なぜ!!」


「フッ。簡単なことだ。ブルマー戦士の力の源はそのブルマにある」


「ええ、そうよ」


〈そうなんだ……〉


 レッドブルマーは内心、怪人王とサファイアの会話を理解できないまま聞き続ける。


「では? そのブルマを愛する者がブルマの力によって害されることがあり得ると思うか?」


「ま、まさかッ……」


「そう、効かないのだよブルマー好きには、その能力の全てが」


 明かされた衝撃の真実。


 それはブルーマーサファイアにとって残酷な答えであった。


「そ……そんな、じゃあ私たちが全国民にブルマを穿かせて強大な力を与え男性優位社会を打倒するという夢は……」


「無駄だろうな。男は、たちまちブルマーフェチに覚醒し能力を無効化するだけだ」


 そこまで理解するとブルーマーサファイアは野望は崩れ落ち抵抗への意思も失っていく。


「ムホホホッ。抗うことをやめちゃったってことは、しゅきにしちゃって良いってことかな~ん??」


 怪人王は無抵抗な姿を見ておがむように両の手を擦りあわせていると見かねたレッドブルマーが口を出した。


「もう、いい加減にしてよッ!!」


「ククッ、いい加減なものか。まだまだ足りないくらいだよ」


 怪人王は笑いながら大量の蛇腹型ロボットアームを展開してレッドブルマーへと狙いを定める。


「キサマも我がオカズとなれッ!! レッドブルマー!!」


 一斉に襲いかかる攻撃に彼女は炎で機械の腕を焼ききっていくがあまりの数になすすべもなく捕まってしまう。


「緊縛M字開脚。最☆高ッ!!」


 もはや、当然の如く行われる度を越したセクハラ行為にレッドブルマーは冷めた感情を向け、内から涌き出る羞恥心に無関心を貫いた。


〈どうせ恥ずかしがったって、お兄ちゃんを喜ばせるだけだ。なら徹底的に無視してやる〉


「ふぅ……コレだけのことをされてノーリアクションとは」


 全く困ったものだと言いながら怪人王はある液体をレッドブルマーの顔に掛ける。


「感度3000倍薬」


「──ッ!?」


 レッドブルマーが薬の効能を理解すると同時に機械触手が幼くも部分的に熟れた体にまとわりつく。


「おふぉッ!?」


 皮膚に触れられた瞬間。レッドブルマーは骨格筋が収縮するのを全身で感じ抑えきれない声が出た。


〈やば……がま……ん〉


 しようとしたが、胸や秘所が刺激されると途切れかかった理性が白く飛ぶ。


「んッ! うぅんんッ!!」


 媚薬の効果により知的活動は低下し脈拍を上げ呼吸を乱し脳内で幸せのホルモンオキトキシンが分泌され快楽漬けにされながらもハッキリとした意識の中でレッドブルマーは気持ちよさそうに何度も何度も声を上げた。


「ぅぉ! ぉ! ォ……ッ!! おぉん♡」


「エロ……」


 観衆がいっている間にもレッドブルマーの体操服は汗でグッショリと濡れ、骨盤まわりの筋肉が不規則な伸縮を繰り返し粘性のある液体を泡立てて淫猥いんわいな音を奏でる。


「あ”ッ! あ”ッ! アぁァッ!! いグッ!! い”……ぐぅぅ……ッ!!」


 情欲を掻き立てる音色を響かせるモノに成り果てたヒーローを前に人々はどうすることも出来ず、ただ前屈みになっている中、一人の少女が声を上げた。


「さっきから耳障りで気色悪いわね……」


 次の瞬間。操作盤が氷の矢に撃ち抜かれ、メカがコントロールを失う。


「え」


 怪人王が状況についていけずに間の抜けた声を出していると拘束は緩みブルーマーサファイアはそこから逃れ、レッドブルマーは地面へと落ちていった。


「痛ァ!! ……て……アレ?」


 アスファルトに背中をぶつけ痛みで正気を取り戻し顔を上げ混乱していると。


「目が覚めたのかしら」


 ブルーマーサファイアが話しかけてきた。


「あっ……」


 そこでレッドブルマーは何が起きたのか思いだしサファイアに助けて貰ったことにお礼を言う。


「ありがとう……」


「……感謝してるのならアレの始末、貴女に任せるから」


 もう、コレ以上は関わりたくなさそうにブルーマーサファイアは怪人王の存在を押し付け、この場を後にしようとした。


「待って!」


 レッドブルマーに引き留められてサファイアはため息を吐いて振り返りながら聞く。


「なに、不満?」


「ううん、違うのアナタはコレからどうするの?」


 先の戦いで、夢破れた彼女にレッドブルマーはそう問いかける。


「さあ……帰ってから考えるわ」


 諦観ていかんを見せるブルーマーサファイア。


 そんな彼女にどんな言葉を掛ければ良いのかレッドブルマーには解らなかった。


「さようならレッドブルマー」


「もう、合うことも無いでしょうね」と付け加え、青きブルマーは戦いの舞台から降りていった……。


「チッ! サファイアに逃げられたか」


 ロボットを再起動させられたが報復できずに終わったため怪人王は忌まわしそうにする。


「……まあ、良い。本命はまだ残っているしな」


 体育着を乱し未だ薬の作用が残っている彼女を見ながら怪人王は唇を舐める。


「今度こそ終わりだレッドブルマーッ!!」


 再びロボットアームの群れがブルマー戦士を襲い同じ結末に至る……はずだった。


「なっ!? ナニィ!!」


 今までに見たことが無いほどの機敏さに強大な炎を操るレッドブルマーの姿を目にし怪人王は驚愕する。


「ば……バカな。なぜ!?」


 そこで怪人王はある仮説が頭の中に過った。


「ま、まさか3000倍薬のせいでレッドブルマーの能力値までも3000倍になってしまったのでは……!?」


 だが、まだ負けたワケではない。


 怪人王はレッドブルマーを辱しめようと持てる全てぶつける。


 ローションバズーカ。五円玉の使った催眠術。食らえばイヤらしいポーズを取ってしまうビーム……ありとあらゆる攻撃を試すも何一つ成果を上げずロボットは着実に破壊されていった。


 そして……。


「もう、やめにして」


 キャノピーが開けっぱなしになったコックピットの前に降り立ちレッドブルマーは怪人王の降伏を求めた。


「ふっ……勝ったつもりか。私には解っているぞレッドブルマー……お前の弱点を」


 それは優しすぎることだ。


「どんなに酷い目にあわされてもお前は人に暴力を振るえない」


「……そうだね」


 レッドブルマーは否定することなく、その事実を認めた。


 彼女は、どれだけ理不尽だろうと力に訴えかけて解決するようなマネは決してしない。


「ならば私の勝ちだ。なぜならこのロボットには自動再生機能が備わっている。このまま長期戦になればキサマに勝ち目はない。仮に攻撃できてもブルマーの能力は私には効かない……さあ、どうするレッドブルマーよ?」


 勝利を確信する怪人王。


 そんな彼をレッドブルマーは冷たい視線で見下ろしながら彼女は体操服を限界まで下に引っ張りながらブルマを脱いだ。


「ッ!?!?」


 誰も予想だにしなかった展開に怪人王は目を見開いて驚愕する。


「なッ!? 何をする気だ!!」


 問いかける男に見下した視線は、穿きたてホヤホヤのブルマーを指先から離して言った。


「ほ~ら、大好きなブルマーだよー」


 落ちてくるブルマーに怪人王は永遠のような時間を感じると一瞬でブルマの全てが流れ込んだ。


 妹の成分を染み込ませたナイロンの上質な肌触り……かぐわしい匂い……禁断にして男のロマン……。


 処理しきれない情報量が脳内に送り込まれ小宇宙が生まれ、やがて頭の中でビックバンを起こす!!


「くぁwせdrftgyふじこlpッッッ!!!!」


 そうして怪人王は絶頂の果てに気絶した。

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