南の島(11)
「おい、嘘をついたな!」
数日後に再び東の小屋に現れたビンディは、以前以上に激しく怒っていた。
「あれからお前のアドバイスに従って、浜辺で一日中考え事をしてみたが、マヤどころか誰にも声をかけられなかったぞ! まったく、時間を無駄にしちまったじゃないか!」
「そうか。それは残念だったな」
勝手に真似をする方が悪い――と内心では思ったが、ムラコフはいかにも済まなそうな表情を作った。
「それなのにお前ときたら、一緒にラム工場の見学に行ったりなんかして、マヤとさらに仲良くなっているじゃないか! これはいったい、どういうことだ!」
「どうと聞かれても、仕方がないさ。ラム工場の見学に行こうとしてたら、向こうの方からついてきたんだからな」
「勝手に抜け駆けした上に、ライバルを油断させるためにそんな大嘘までつくとは、どこまでも卑怯なヤツだな!」
そう言うと、ビンディはちっちっと人差し指を立てた。
「しかし、オレも鬼じゃないからな。どうやってマヤに取り入ったのか本当のことを話せば、お前を許してやらないこともない」
「うーん……」
ムラコフは返答に困って、ポリポリと頭をかいた。
前回とまったく同じ展開のような気がするのは、気のせいだろうか。
「そういえばマヤに初めて会った時、この服装に関心を持っていたな。もしかしたら、こういう格好が好きなのかもしれない」
「そうか。そういう服装か!」
ムラコフの言葉を聞くと、ビンディはパッと明るい表情になった。
「なるほど、サンキュー。それじゃ、またな!」
「え? またなって、おい……」
どんどん小さくなっていくビンディの後ろ姿を見ながら、ムラコフはまたもやあっけにとられてしまった。
「結局、何がしたいんだ? あいつ……」
ビンディの背中が小さくなって消えるまで、ムラコフはその後ろ姿を見守っていた。
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