第34話 山中 学 君からスタート?

 俺は、てっきり桐山さんが指名されると思っていたら、先生は、山中君に

「山中君、いい発表のシナリオ書いていたね。

見ながらでもいいから、やってごらん。

止まったら、きっと助けてくれる子がいるよ。

いなかったら、私が助ける。

ねっ、やってごらん。」

と柔らかな笑顔に大きな瞳で言った。

それを見ながら、あの笑顔と眼差しで来られたら、断れねえなあと思った。

案の定、山中君は、小さい声で

「はい。」

と言ってノートをもって黒板の前に行った。

頑張れ、学ぶ!と俺は心の中で言っていた。

山中君は、

「ペンキが1dlで2m²ぬれるんですよね。」

と言ってみんなを見た。

みんな、そう、さっき先生が書いてくれたというように頷いている。

山中君は、ここまではいいなという感じでこちらを見ている。

「もう1dlありました。どこに線を引けばいいですか?」

と聞いて、みんなの方を見た。

えっ、1dlの線を伸ばして2dlにすると思った。

本間君が、

「1dlの線を伸ばして、2dlにする。」

と言った。

みんなも頷いている。

それを観ながら

「そう。みんなが思っているように、もう1dl分伸ばすと、2dlの所になりますね。」

と言って、下の線を伸ばし、数字の2を書いた。

みんな、自分と同じだというように頷いている。

それを見ながら、

「2dlになった時のへいは、どこに描いたらいいですか?」

と聞いてきた。

俺は、

「ペンキが右に伸びたから、面積は上に伸びればいいんじゃないの?」

と呟いた。

すると、一斉に視線が俺の方に集まり、びっくりした。

厳しい目線は、俺に刺さるんじゃないかと感じ、ちょっと怖かった。

それを感じたのか先生は、

「修平君は、思ったことを言ったんだよ。

もし、自分と違っていても、そういう考えもあるのかなと受け止められないと、伸びていけれないよ。

同じ考えだけだと、広がったり深まったり、高まったりできにくい。

それは、みんなの願う授業像に反することだよ。

自分と違う時は、どうしてそう思ったの?と優しく聞いてあげるのがいいんじゃないかな?」

と声をかけてくれた。

先生の話の間にみんなとがった目は柔らかく受け止めてくれる目になっていた。

ほっとしながら下を向き、みんなと違うかもしれないから、もう呟くのをやめようと思った。


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