第27話 授業の発表へ 応用編 誰を中心に話す?

 いよいよ授業での発表を変えていくらしい。

今日、全員の自己紹介が終わった時、先生が、

「これで、全員自己紹介を通して、相手の様子を受け止めるために「間」をとること。

そして、聴き手の反応を引き出す方法のいくつかを体験してきました。

これからは、自己紹介で身に着けた力を授業の発表で使い、応用力を付けていきましょう。」

と言った。

言葉はわかるけど、具体的に何をするんだろう?と思った。

今までだって、発表してきているし、…。

そんなことを思っていると、先生が、

「翔平君、何か質問がある?」

と聞いてきた。

この人は、人の心が読めるのかなあ。

隠すのは嫌だから、正直に

「具体的に何をすればいいのかわからない。

どこで「間」を作るの?

「間」の場所がイメージできれば、聴き手の反応も予想できるかも。

そうすれば、聴き手の反応を引き出すどの方法を使えばいいかも考えられるかも。」

と応えた。

先生は、

「具体的に考えようとしているのは、わかろうという表われです。

あなたのやる気が感じられて、とっても嬉しいわ。」

と言いながら、みんなを観て

「みんなも同じ気持ち?」

と問いかけていた。

みんなは、とりあえず頷いている感じだった。

「まず、大事な事は、どんな状態の子に対して発表するかということかな。」

と話した。

それを聞いて、俺は、どういうこと?

目を寄せ、首を斜めにして考えた。

発表って、自分のやったことを話すことじゃないの?という考えから変わらなかった。

先生は、

「あなたと同じ考えをしている人に分かってもらう発表をするのですか?

あるいは、あなたと違う考えをしている人に分かってもらう発表をするのですか?

それとも、自分の考えが持てなくて、苦しんでいる人に向かって発表をするのですか?」

と聞いてきた。

「手を挙げてもらいます。

同じ考えの人に発表する。」

間をとって教室を見回す。

みんな困った顔をしている。

誰に対して発表するなんて、今まで考えたことがなかったから。

それでも先生は挙手している人の人数を確かめていく。

「0人」

「違う考えの人に発表する。」

「5人」

一人が

「違う意見の人と話し合って、もっといい考えを一緒に創っていく。

と呟いた。

「素晴らしい考え方ですね。」

と先生は応えた。

それを聞きながら、なるほどねえと俺は思った。

でも、俺は仲間が欲しいなあ。

もし、みんな違う意見なら、怖いもんと思った。

みんなの様子を観て、

「困っている人に発表する。」

「残りの人、全員ですね。」

優しい眼差してみんなを観ている。

「みんな、誰に発表したらいいか。

自分の聴いてもらう人のイメージを持っているじゃないの。

困っている人が自分の考えを持ってくれたら、

その子にとって、他の惜しい授業に近づく。

違う意見の人と話し合い、もっといい考えにする。

もちろん、同じ考えの人に話して、もっとしっかりした考えにするのもいいね。

どれも、みんなの授業像に近づくことだよ。」

と言ってきた。

そうか、誰に向かって話してもいいんだ。

誰を意識しているかが大事なんだ。

でも、具体的には、どうすれば、いいんだろう?と思った。


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