第26話 自分達の自己紹介 俺の自己紹介カード

 俺は、自己紹介を一番にやることになった。

だから、急いで先生の真似をして翔平の自己紹介カードを作った。

家族からのアドバイスは付け足した。


 <翔平の自己紹介カード>

① 俺の名前は、翔平です。 前に出て、礼をする。その後、にっこり笑ってみんなを見回して目を合わせる。

目が合わない人には、優しく声をかける。 

② 好きなスポーツは、 ここで止める。みんな「サッカー」と言ってくれるだろう。

「ピン・ポーン」正解。 ちょっと笑いが起これば成功。だめでもそのまま進める。 

③ 好きな理由は、 ここで止める。今度は、正解が出てもピン・ポーンはやらない。

相手を抜くプレーが大好きです。トラップ、ドリブル、パス、そしてシュート。

もっと上手になって、いろいろなプレーに挑戦したいです。

どんなプレーか質問が出たら、メッシやロナウジーニョのようにダブルタッチが

上手になりたいことを言う。

ボールを引いて方向を変えたり、ルーレットをやったりしたいことを言う。

④ これで僕の自己紹介を終わります。 みんなを見回して、にっこりして終わる。


 <翔平の自己紹介>

 先生の

「今日は、翔平君の自己紹介です。

翔平君、お願いします。」

の呼びかけで前に出た。

黒板の前に立ちと、みんなの目が全部俺に注がれている。

今まであんまり意識したことなかったけど、目って怖い。

発表が怖いってどういうこと?と思っていたけど、一つにはこの目力かもしれない。

でも、負けてはいられない。

自己紹介カードを見て頑張ろうと目をやると、笑顔でみんなを観ると書いてある。

そうだ、俺、まだ笑っていない。

俺らしくないなあ、緊張しているのかなと思った。

無理に笑顔になろうとすると、ほっぺがちょっとこわばった感じになる。

くそー、緊張何かに負けるもんかと思った。

大きく息を吸い、

「俺の名前は、修平です。」

と大きな声で言った。

言い終わったら、言葉と一緒に緊張も口からどこかへ出ていったようで、何か心が軽くなった。

自然と笑顔になった。

「俺の好きなスポーツは?」

で止めると、案の定、

「サッカー。」

「サッカーしかないジャン。」

と言った反応がそこかしこの明るい表情をした口から聞こえてきた。

俺の話でキャッチボールしているんだと思えた。

思わず、

「ありがとう。」

と言ってしまった。

でも、予定と違ったので、

「ごめん、ピン・ポーンだった。」

と言い直した。

かける君が

「そんなの言い直さなくていいよ。

ありがとうでも、ピン・ポーンでも受け取ってくれたのは、わかるよ。」

と支えてくれた。

こう考えられることが、反応に応じて話を進めることなんだろうなあ、

先生ならうまくできるんだろうなあと思ったが、気を取り直して話を進めようとした。

「サッカーが好きな理由は、」で切った。真剣な表情でこっちを見ている。

さっきのようにつぶやきはないけど、俺の話を集中して聞いている。

目が、早く言ってと光っているように感じた。

慌てて

「シュートした時の感覚、ゴールした時の気持ちが最高だからです。」

と言っていた。

みんなは、わかるわかるというように頷いている。

違うこと言っちゃったけど、いいやと思った。

「これで、俺の自己紹介を終わります。」

と言うと、拍手が起こった。

かける君が

「翔平君、みんなを観て間の取り方が先生みたいに上手だったよ。」

と言った。

悪い気はしない。

思わず笑顔になった。

先生も、

「間をとった時、ちゃんとみんなを観ていたね。

上出来です。

翔平君の自己紹介カードも印刷して分けます。

書いてあることと違うところもあるけど、良いんです。

みんなの反応に合わせて変えたんです。

翔平君の力です。

みんなも書いたことに縛られず、その時のみんなの反応、キャッチボールを大事にしてください。」

と言った。

俺は、褒められたんだよなあと思いながら席に着いた。


順番に全員自己紹介を行い、その時の自己紹介カードが印刷され配られた。

みんなできるじゃんと、俺は思った。


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