第18話 朝の話① 自己紹介カードの解説

 「みんなは、まだ、話を集中して考えながら聞くことに慣れていない。

だから、今から話すよ、準備してねという意味で、始めますと言ったんだ。

聞く準備するための間をとった。その時、私は、みんなの様子を捉えようと表情や様子を観ていた。

聞こうという時は、視線を相手に向ける。

みんなの視線が私に集まってきたので、次へ行こうと考えた。

この時、視線が集まってこなければ、メモにあるように名前を言って見てもらうようにしようと考えていた。

そう、思い通りにいかない時の対応策も考えておいたんだ。」

と言って、柔らかい眼差して教室を見渡した。


「次に、はっきり口を動かし、名前を言った。

「間」をとり、頷くなどの反応があるか、確かめた。

みんなは、もう知っているよといった顔をしている子もいた。

けど、それは聞いていたから出る反応。

温かい目線も優しかった。

聞いているよと語り掛けているようだった。

いいキャッチボールが出来ている。

私は嬉しかったわ。」

と続けた。


そして、

「私の好きなスポーツはで、止めたの。

ここまで私の話を共有してくれたみんななら、「間」をとれば、何かスポーツの名前を言ってくれるはず。

でも、聴き方の練習をしていないから、出てこないかもしれない。

そのために、絵を用意した。

これを出して「間」をとれば、きっと何かのスポーツの名前が出てくるはず。」


「絵の見せ方は、少し工夫した。

人は不完全なものを見ると、完全なものにしたくなる。

四等分した絵を見せれば、その完成形である何のスポーツかにより興味が高まるだろう。

興味が高まるということは、私の話の中に入っているということ。

素晴らしいキャッチボールが出来ている事になる。」


「はっきりしないときは、二等分の絵まで広げる。

「間」をとり考える時間をとる。

それでもはっきりしなければ、全部見せる。

一人でダメなら、隣の子と相談してもいいよと言う。

大事な事は、何のスポーツか当てようとする行為。

それは、私の話の中に入っていることに他ならない。

素敵なキャッチボールになる。」


「最後に、サッカーに入れてねと言い、「間」をとり終わる。

この「間」の間に、誰がどんな行動をしようとするか、動きを見ていた。一緒にサッカーをやってくれることを期待する。

一緒にやってもやらなくても、そのことについての反応が返ってきたら、これもまた素晴らしいキャッチボールになる。」

そう言って解説を終わった。


みんなを見渡しながら、

「 ❶みんなの反応が出やすい技術を使う力。

❷「間」をとって、みんなの反応を観る力。

❸みんなの反応を次の話につなげる力。

(話しながら❶❷❸が書かれた短冊を貼り、みんなの様子を観ていった。)

 この3つの力を使ったの。

 これは、みんなできます。まず、挑戦していこう。」

そう言って解説を終わった。

そんなこと、俺もできるの?と思った。

隣を見ると、石橋君は、何が何だかわかんないという顔をしていた。

みんなを見回している先生は、何を感じているんだろう?

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