第8話 再び先生のストップ

 先生は、みんなの不満は無視して

「桐山さん、どうして困った顔をしたの?」

と聞いた。

桐山さんは、

「私が紙を折ったら、みんなも紙を折り始めた。

みんながやってみたいのもわかった。

私は、線対称な図形という言葉まで伝え、一区切りとしたいと思っていた。

両方の気持ちが分かった。

どうしていいかわからなくなったの。

折っている子もいたけど、線対称な図形という言葉を伝えた方が良いと思った。

だから、私は続けて線対称な図形と言った。」

と話した。

この話の最中も、先生はみんなの聞いている様子を観ていた。

「みんなは、桐山さんの発表を聞いて、何かわかったんでしょ。」

と呼び掛けた。

誰かが、

「図形の左側と右側がピッタリ重なることがわかった。」

と呟いた。

「俺もそう思った。」

というつぶやきも聞こえた。

俺も同じだと思った時、先生は、

「なぜ、それを発表者に伝えないの?

今の呟きが聞こえれば、発表者の桐山さんは自分の言いたいことが伝わったことがわかる。

嬉しいと思うけどなあ。

どう、桐山さん?」

と尋ねた。

桐山さんは、優しい笑顔でゆっくり頷ていた。

「じゃあ、図形がぴったり重なることがわかった反応をしてみよう。

桐山さんが、図形を折って重ねました。

はい、反応、どうぞ。」

と声をかけてきた。

俺は、

「本当だ。」

と呟いた。

「重なってる。」

「ピッタリだ。」等、

口々に言った。

みんなと桐山さんの様子を観ていた先生は、

「いろいろな言葉があっていいねえ。

でも、どれもぴったり重なるということだね。

桐山さん、どんな気持ち?」

と言った。

桐山さんは、

「わかってくれたんだ。

嬉しい、という感じ。」

と応えた。

「やっぱり、嬉しいよね。

これが学級みんなで授業を創ることだよ。

そして、その時沸き上がってきた授業に関係ある気持ちを伝える事はさらに重要なことだ。

どんな気持ちが沸き上がってきたんだっけ?」

と聞いた。

何と言っていいか、みんな困っている。

先生が何を求めているか、わからない。

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