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「あなたは貴族の祝宴を見たことがある

 まるで夢の世界よ あなたにも見せてあげたい」

「あなた 町に行ったことがある

 素敵なところよ 綺麗な物がたくさんあって」


「あなたは何着洋服持っていて

 わたしのお母さん 洋裁が上手なの

 この服も作ってくれたの 素敵でしょう

 よそ行きの服で わたしは死ぬのね」


「わたしがいなくて あの人はどうなっちゃうの

 わたしなしで 生きていられないかもしれない

 あなたは それほどまでに愛されたことがあって

 あなたは まだ 本当の愛を知らないのね」


自分よりも幼い少女を憐れんで

思い思いに言葉をかけては

次々と 自分の毒玉を飲み込み

次から次へと 重なるように倒れて行った


苦しみ藻掻もがくくその姿に

少女は驚き怯え 呆然とした

が 微かな声に引き戻された

高熱に伏す少女の絞り出す声に

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