19頁

「私は無理 もう駄目 限界よ

この荒れ野を歩くなんて

だからお願い それを頂戴ちょうだい

河から引き戻された少女が言った


二人連れだって逃げようとしたものの

一人は死んで 自分は生きて

さりとて そのむくいからは逃げきれず

高熱にむしばまれて 今や虫の息


どうせ儚い身の上ならば 早く逃れたい

その少女のみならず どの少女にもよぎること

仲間の死は 少女たちに現実を見せつけて

それでも 尚 留まる理由があるのだろうか


死んでしまったら お父さんや お母さんに会えない

さりとて 生きていたって 会えやしない

あちらとこちらを隔てる河を

もはや 渡ってしまったのだから


生きていることに何の意味があるのだろう

どこに希望があるというのか

あとは 痛みと孤独だけ

次は わたしかもしれない

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る