第23話 みらいとイラスト

 時刻は水曜日の十時半。季節は冬。


 みらいは絵を描いていた。もともと感情が爆発すると、絵にするという性格だった。だから、フラストレーションが溜まった時や、楽しくてワクワクしているときなど、絵に感情をぶつけていた。


「ふぅ~、休憩しましょう」


 一段落し、絵を描くのに疲れたみらいは、SNSで流れてくる絵を見ていた。

 そこで、運命的な出会いをする。


「このイラストは……」


 それはかわいらしい女の子が描かれているイラストだった。それはとあるイラストレーターさんの絵であり、どうやらこの人の絵が新人賞を受賞して、とある本の挿絵になるらしい。


 調べてみるとその本は“ライトノベル”というものらしい。


「……ライトノベル? ライトノベルとはなんでしょうか……」


漫画やアニメに触れてこなかったみらいにとって、ライトノベルなんてもってのほかの代物だ。


 調べてみると、十代~二十代男性向けの小説らしい。


「試しに一冊買ってみようかしら」

 そうと決まれば即行動。


 というわけで、自転車に乗り約十分ほど。本屋に着いた。

 ライトノベルコーナーというところに行ってみた。そこでは、たくさんの人たちがごったがえしていた。

 年齢層は幅広く、中学生もいれば高校生もいて、大学生、社会人の人もいる様子だった。


「どこでしょうか」

 本をキョロキョロと必死に探すみらい。

「あ! あれですわ!」

 目当ての本を見つけ手に取る。これだ、このイラストだ、私が求めていたのは。表紙に、みらいが惚れた絵を描いた人の表紙があり、その表紙をめくるとその人が描いたであろう挿絵がフルカラーであった。


 その絵に再び心を射抜かれるみらい。


「……えちえちですわ」と時にはきわどい絵に翻弄されつつ、その絵によってこんな感情を抱いている自分に気づきハッとする。


 この本に魅了されているのは、みらいだけではなかったようだ。

 同年代くらいの男の子だろうか、第二巻を買っていった。この人もこのイラストレーターさんが好きなのだろうか。


「だとしたら、お友達になりたいですわね」


 みらいはふふっと笑い、第一巻を手に取る。裏にあらすじが載っていたので読んでみると、青春群像劇らしい。


 これは面白そうだ。帰ったら読んでみよう。

 そして、そこには『〇〇万部突破! アニメ化決定!』というキャッチコピーと共が帯に書かれてあった。


「アニメですか。この機会ですし見てみることにしましょう」


 楽しみですね。その眼を輝かせた少年と共にその本を買うみらいであった。

 それは、だんだん暖かくなってくる高校一年生の春の出来事だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る