第6話 古賀あみ

古河あみは、お兄ちゃんの部屋を後にした後、自分の部屋いた。



 あみにも夢がある。

 それは何かというと、大学の第一志望合格だ。


「この調子でいけば、大丈夫」


 先日、返された模試の結果を見て、ひとり呟く。


 しかし、受験は戦争だ。

 定員がある時点で、誰かが受かれば誰かが落ちる。そんな弱肉強食の世界。今回の模試では、A判定だったが、次回はわからない。


もしかしたら、この瞬間、抜かされているかもしれない。


「油断は出来ないわね」


 そう、油断できない。

 何度も言うが、受験は戦争なのだ。

 それを、あみはわかっている。


「まあ、今はお兄ちゃんのお弁当をつくらなきゃね」


 自分の部屋を出て、台所のキッチンへ向かう。


 ピンクで熊のワッペンが入っているかわいらしいエプロンを着ながら、今日のメニューは何にしようかと考える。


そう、あみは古賀一家の料理担当なのだ。主に、朝、夜と料理を作っている。


「あ、タコとエリンギが余っているわね」


 タコとエリンギ。なんの料理がいいだろうか。

 ふと、調味料の棚に視線が向く。

 そこには、塩、ラー油、胡椒、豆板醤、味噌と並んでいる。

 そのなかで、目を引くものがあった。


「あ、これ賞味期限が迫ってるわね」


 あみが手に取ったのは、“オリーブオイル”だった。

 かなり余っている。これは使わなくては。


「タコとエリンギとオリーブオイル……」


 少し考えると、あみは「あ!」と声をあげる。


きっと、メニューを思いついたのだろう。

 あみは「よしっ」と気合を入れると、



「今日のお弁当は、タコとエリンギのコンソメバター炒めよ!」



 と、張り切るのだった。



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