第2話 結果

 その時、神栖かみすはそわそわしていた。


 部屋の端っこを行ったり来たりを繰り返し、落ち着かない様子の神栖かみす

 外は肌寒くなっており、出たくもないくらいだ。

 見てみると案の定、一面真っ白になっていた。


「今年も雪がすごいな」なんて、独り言を呟いていると、ふっとに我に返る。


 時刻は十時五十八分。


 あと二分だ。

 あと二分で運命が変わる瞬間が来るかもしれない。


 神栖かみすの努力の成果に対しての評価が発表される。


 カチッ、カチッと秒針が一定のリズムで時を刻んでいく。

 

 それと同じく、秒針とは違うリズムでドキッ、ドキッと鼓動がリズムを刻む。

 秒針の長針と短針が何度目なのか、重なり、また離れる。


そして、カチッ。


「十一時になった!」


 神栖かみすは、恐る恐るWEBページを開く。

 YUHOOから、検索フォームに“イナズマ文庫”とキーボードで打つ。

 そして、エンターキーを押し、検索画面から“イナズマ文庫”のホームページへと飛ぶ。

 結果は……。



 ――『一次審査落ちです』



「あぁぁぁぁぁ!」


 薄々わかっていた。

わかっていたけど、実際に現実を突きつけられると、自分の頑張りをすべて否定された気がしてくる。自分の実力のなさを認めたくないのと同時に、歯がゆくなる。


「お兄ちゃん、うるさい!」


「す、すまん」


 呆れた顔をして、あみが尋ねる。


「で? どうしたの?」


「あみ……。小説、一次審査落ちだって……」


 その返答を聞いた途端、あみは「はぁ~」とため息をつく。


「また?」


「……また」


「これで何回目よ」


「……五回目」


 しょぼんと肩を落とす神栖。そんな落ち込んでいる神栖に、やれやれと手をあげながら、

「ほら、落ち込まないの! イナズマ作家になるんでしょ?」


「うん……」


「作家さんの中には、三十回もダメで、それでも諦めずにひたすら書いて受賞した作家さんもいるんだよ? お兄ちゃんは、こんな簡単に諦めちゃうの?」


「いや……。おれはイナズマ作家になる……」


「でしょ? イナズマ作家になって、その賞金で、あみにハーゲンダッツ(抹茶)を一年分買ってくれるんでしょ?」


「あれ? そんな約束したっけ?」


「したした」

 悪戯っぽく笑う、あみ。


「まあ、ともかく、イナズマ作家になるんだったら、立ち止まってなんかいられないよ?」


「確かに……!」


 そして、神栖かみすは「よしっ!」と気合入れると、



「くっそぉぉ! 絶対、おれはイナズマ作家になってやるからなぁぁぁぁぁ! 待ってろよぉぉぉぉ!」



と叫ぶのだった。



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