幻想的で、悪夢的で、一度読めば忘れられない、奇妙な味わい。

人間の魂から抜き取った『欲望』を飲み比べる悪魔たちの品評会、そこに提出された『夢』。そんな不思議な設定から、この物語は一気に読者を引き込みます。そして現れてくるのは一人の少女。彼女の『夢』は純粋な子どもの『夢』で、ただひたむきで、だから少しばかり、理解を超えている。悪魔はそんな『夢』を、ただ見ているだけでいいと告げられ、困惑しながらも、なぜか少女に惹きつけられていきます。『夢』と『欲望』の差とは? 少女はなぜ悪魔を呼び出したのか? 少女は何を考えているのか? 悪魔は何を思っているのか? 様々な疑問を抱かせながら、いかにも悪魔的なアンチクライマックスで幕を閉ざすやり方は、鮮やかで圧巻です。ほんの数分の内に一生分にわたる白昼夢を見たような読後感。幻想的で、悪夢的で、一度読めばもう忘れられません。この奇妙な味を、ぜひとも味わってみてください。