第11話 本題にたどり着かない 2

「犯罪者感ですよ! 幼児に手を出して捕まっていそうなイメージがあります!」

「それロリコンって言いたいの?」

「汚らわしい、近づかないでください!」

「いや違うぞ? 仮にも魔王ともあろうものが幼女に手を出すはずがないだろう」

「ああ、手を出す度胸はなさそうですね」

 

 しれっとした顔の少女。

 表情豊かな娘である。

 性格はこれだが、表情の変化だけは見ていて面白い。

 ……いや、ロリコンなわけじゃないからな?

 そういう意味じゃないからな?

 

「そんな話はいいんだ。それより、状況説明をしよう」

 

 いつまでも話が進まないことに痺れを切らして、くだらない会話を切り上げる。


「図星を刺されると逃げるんですか。まあいいです、私も状況は知りたいですから。で、あなたはいくら持ってるんですか?」

「金の話に戻るの!? 話進んでないじゃないかよ」

「くだらないことにグチグチとこだわる男ですね……」

「それはお前だよ!」

「私が男に見えるんですか? 最初から思っていましたがあなたやはり頭がおかしいですね」

「…………」


 彼女は本当に話を進める気があるのだろうか。

 ツッコミに疲れた俺は、肝心な部分以外は相槌でスルーすることにする。


「くだらない洒落ですね、今どきクラスのバカな男子でも言いませんよ」

「心を読まないでくれるかな!?」


 彼女、本当に人間なのだろうか。

 魔王の心が読めるなんて只者ではない。

 ところで、クラスってなんだろう。

 人間だけで通じる言葉かな?


「あなたの心なんて(顔に出てるので)だいたいの女子は読めますよ」

「人間の女子って(超能力で)俺の心を読めるのか!?」

「言ってることはあってるはずなんですが何か違和感がありますね?」


 首を傾げる少女をよそに、俺は焦りを強めていた。

 王の心が読まれるということは、戦争をしても敗北確定じゃないだろうか。

 力でゴリ押すなら関係はないが、奇襲など作戦立てても全滅である。

 よく親父は魔王領を維持できたな。

 それとも心が読まれるのは俺だけなのか?


「ほら、話を進めてくださいよ」


 俺のもやもやとした心は察さず――無視したのかもしれないが――、少女は話を促した。


「無視したに決まってるでしょう。なんで犯罪者あなたの心を気遣わなきゃいけないんですか?」

「待て、今『あなた』のところに悪意を感じたんだが」

「気のせいですよ。さあ、くだらないことを気にしてないでさっさと話を進めてください――私この台詞何回目ですかね」

「くだらないことか? 俺の人権が脅かされた気がしたんだが」

「答えは二回でした!」

「今の問題だったの!? あといちいち数えてたの!?」

「意外と少ないでしょう?」

「だから何なんだよ?」

「どうでもいいこと気にしてないで、早く話を進めてくださいよ。どれだけ話したくないんですか。カウントが三に増えちゃったじゃないですか」


 自分はどうでもいいことを言っておいて……。

 しかし食ってかかるのも大人気ない。

 

「ところでそのカウントって増えたらどうなるの?」

「百になったら世界が滅亡します」

「大きく出たなぁ。それなら増やしてもいいんだが」


 俺の仕事は人間を滅ぼすことである。


「あなたも死にますけどね。ところで本当に話が進んでいないんですが。この章で分かったのはあなたがロリコンだという事実くらいですよ」

「だからロリコンじゃないから」

「見た瞬間に分かってたから実質内容ゼロですね」

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