第21話 迷宮攻略2


 ◇side ダンジョンマスターの???



 目を覚ますと、薄暗い天井が見える。

 寝床で横になってたら寝ちまったのか。

 そういや風呂入ってねぇな。

 迷宮ポイントで部屋を改造して風呂でも作るか。

 そう思ってダンジョンコアを確認するが……。



「はぁ!? なんでポイントが入ってねぇんだよ!」



 どういうことだ?

 まさかあの学生服の団体は帰ったのか!?

 とんだ腰抜け野郎どもだ。

 俺は床に唾を吐き捨てる。



 これからどうするべきか。

 外を探索するか? いや、危険だ。

 俺の身体能力は全く変わっていない。

 猛獣にでも襲われたらひとたまりもないだろう。

 おそらくあの学生服の連中が町とかでここの迷宮の事を話して回るはず。

 その噂を聞いた連中が来るのを待った方がいい。



 待つしかできないなんて退屈だ。

 仕方ない、もうひと眠りするか。

 そう思って寝床に横になった時、妙な音が聞こえることに気づいた。

 なんだ? この音は?



 部屋の中に、言葉にするならゴリゴリという音が絶え間なく響き渡る。

 一体何の音だ?

 俺は音の発生源を探し、部屋をウロウロと歩き回る。

 すぐに見つかったが、そこは何もない壁だった。

 壁に手を当てると、僅かに振動を感じる。



「なんでこんなところから……?」



 異音に首を傾げる俺を、凄まじい衝撃が襲い、部屋の中央までぶっ飛ばされた。



「痛ぇな!? 何が起きた!?」



 痛みに顔を歪める俺が顔を上げると、壁が崩れて、そこから学生服の連中が飛び出してきた。

 その中で一人のガキが俺を見下ろし、ドヤ顔で口を開いた。



「見たか! これが天才の力だ!」


 な、なんなんだ! このガキどもは……?




 ◇side 秀也



「これが天才の力だ!」



 ついに見つけたダンジョンマスターの前で、俺は高らかに叫ぶ。

 道に罠が敷き詰められているならば、通らなければいい。

 そう、壁をぶち破ってド真ん中を突っ切ればよいのだ。



 安室の直感によると、目的地まで直線距離で30mほど。

 ならば馬鹿正直に道なりに来る必要なぞい。

 こちらには安室がいるのだから、目的の位置はだいたい分かっているのだから、安室の指示通り壁を壊していけば、目的地につく。



 天才ならではの発想だろう。

 俺は得意げな顔で、尻餅をついた小汚ない男を見下ろす。

 こいつがダンジョンマスターか。

 慌てて逃げ出そうとするそいつの足に投げナイフを命中させる。



「ぎゃあぁぁっ!!?」


「心配ない、峰打ちだ」


「クソガキィっ! 峰打ちの意味分かってんのか!?」



 血まみれの足を抑え、怒りで真っ赤にした顔で男が怒鳴る。

 失礼な!

 たまに時代劇で峰打ちを見たから何となく意味は分かるぞ。

 たぶん死にはしないって意味だろう?

 そんなことよりも俺には聞かねばならんことがある。



「お前には聞きたいことがある!」

 

「お、おい! 秀也、こいつ……」



 ダンジョンマスターを押さえつけた毒島が驚いた声をあげる。

 どうしたのだろうか? まさか知り合いか?

 何事かと近づいた俺がダンジョンマスターの顔を確認した俺は驚きで固まる。



「お、お前はテロール槍人(やりひと)!?」


「げぇ!? お、お前らは獅子堂の悪魔!?」



 この男は、獅子堂学園の宿題で俺たちが追っていたテロリストの一人だ。

 あまりの手口に、メディアからは日本の恥、他のテロリストには『アイツとだけは一緒にして欲しくない』と名指しで言われるほどのゴミだ。



 普通のテロリストと違って、この男は政府の要人など狙わない。

 こいつの獲物は、罪のない民間人なのだ。

 民間人のみを狙い、被害にあった人々をビデオカメラで笑いながら撮影する史上最低のテロリスト。

 俺たちは、かつて地球で相まみえた最低なテロリストと再会したのだった。


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