第14話 婚約者と成長

 こんにちは、トラウです。

 八歳になってから一か月ほどが経ち、婚約の顔合わせの前日となった。


「かっこいいわよトラウ!さすが私たちの息子ね!」


「ああ、その服とても似合っているぞ。さて、明日遂に明日が顔合わせの日だ。気張って行けよ。」


 僕は今、母上がデザインした、前世でいうところの、スリーピーススーツのようなものを着ている。明日の婚約者との顔合わせに備え、着こなしの練習をするためだ。因みに、貴族風の服で行く案もあったが、それは却下した。まだ八歳のちんちくりんが来てもカッコよくはないが、あまり好きではない貴族風の服よりましだと考えたためだ。

 因みに、僕は八歳にしては身長が低い方だ。多分六歳ぐらいの平均身長ぐらいだと思う。逆に、一番下の妹は成長が早い。今八か月ごろなのだが、すでにつかまり立ちをしたり、話したりする。今四歳の妹の時より、かなり成長が早いのだ。しかも、双子として、ほぼ同時に生まれたはずの弟はまだ話したりできない。こんなにも個人差があるのかと思い、全知の書庫アカシックレコードで調べたところ、前世基準だと、上の妹や、弟の成長が遅いという事になるらしい。

 前世では妹も弟もいなかったし、小さい子供と接する機会もなかったので初めて知った。

 ただ、こちらの世界では普通のことらしく、「魔力親和性」というものに応じて成長の仕方が変わるらしい。魔力親和性というのは、その名の通り魔力との相性のようなものらしく、これが高ければ高いほど、成長が遅くなる傾向にあるらしい。

 ファンタジー定番種族、エルフもこの世界には存在しており、例にもれず長命種族なのだが、それもこの魔力親和性に起因するものなのだとか。なんでも、魔力親和性が高いと、精霊などの魔力生命体に近い体になるらしく、この世界全体血の相性が良くなり、老化が遅くなって寿命が延びるとのこと。生まれつき魔力が高い生物は、この魔力親和性が高く、成長が遅いらしい。

 勿論、僕もそれが高いため成長が遅い。ただ、魔力を小さいころから操れたため、それのおかげでかなり早い時期から歩いたり、話したりできたわけだ。因みに魔力親和性は後天的に成長することがある。僕のように魔力を増やす特訓をしたり、職業によっても変わるらしい。これを高めることで、寿命が延びるほか、魔力操作が上手になったり、より効率よく魔力を魔法にできるようになるらしい。

 僕のいまの魔力親和性だと、二百年以上生き続けられるのは確実だと思われる。この話から、僕は自分がより生きやすいように、日本の知識も活用して自分の領地だけでなく、この世界をどんどん発展させることを決意した。長い時間過ごす世界は便利な方が良いからね。しょうがないよね。

 話が逸れてしまった。まぁ、つまり僕がちんちくりんなのは仕方のない事なのだという事だ。今後も魔力は伸ばしていく予定なので、どんどん成長が遅くなるかもしれないが、そんなもんは無視だ、諦めよう、うん。だって魔法で無双は男のロマンじゃないか。それに勝るものはない。いざとなったら意地でも成長する方法探すというか、全知の書庫アカシックレコードで調べたら出てきた。魔法薬ポーションの一つに、体を成長させるものがあるらしい。魔法薬ポーションは錬金術が使えたら作れるはずなので、必要になったら意地でも素材を集めて作ろうと思う。

 まぁ、そんなこんなで顔合わせが気が付いたら夜になり、数時間後に迫っているわけで、気持ちはお祭り状態である。明日に備えて早く寝よう、と思っても寝れないのだ。遠足前の小学生状態だ。なので、改めて会って何を話そう、などと考えながら二時間ほどすると、やっと眠気が浮ついた気持に勝り、意識が薄れていくのであった。


                 ♢

「今日はお招きくださり、誠にありがとうございます。」


「いえいえ、我が子息が貴方のご息女と婚約することになったんです。お招きせぬ方が失礼に当たるというものです。」


そんな会話から顔合わせが始まった。

親同士が面倒くさそうな話をしていて少し暇なので、魔力を放出して操って遊び、ついでに、魔力操作の練習をする。魔法にはせず、そのまま放出する。その状態なら、魔力感知を自分の意思で起動して感知するか、とんでもなく高い制度の魔力感知をパッシブで起動しておく必要がある。それに、魔力操作の練習の一環として、指向性を自分の周囲だけに絞っているのでこれが見つかることはほぼないと思われる。




、、、、、、、、、、、?あれ、なんか見られてる気がする。


「あのっ、それどうやってやってるんですかっ?」


oh......見えてるのね、珍しい人もいるもんだ。勇者の末裔だからだろうか、かなり高精度な魔力感知系のスキルを持ってるんだろうな。気になるのでスキル含め、ステータスを見せてもらう。


名前:サクラ・ツー・ハルミヤ 年齢:8 性別:女


job:勇者 Lv:3 加護:創造神


HP:270

MP:541

魔法属性:風、嵐、無 個人属性:光


STR:185

DEF:33

INT:784

RES:32

DEX:32

AGI:183


スキル:剣術 魔力回復速度増加 礼儀作法 不屈 希望の徒スぺース


勇者のステータス補正…HP,MP,STR,INT,AGI×3

創造神の加護補正…job補正のかかるステータス×2



なんと、まさかの勇者自身!たまたま同世代なんだろうか?テンプレならこれは魔王復活の予兆だろうけど、どうなんだろ?まぁ、それは考えても仕方ないから一旦置いといて、知らないスキルの詳細を見ていこう。


不屈…勇者の専用スキル。HPをMPから変換できる。また、老衰以外で死亡した時、残っているMPの全てを使い、完全に再生し生き返る。


希望の徒スペース…勇者の専用スキル。魔力回復速度増加、魔力操作、魔力完全感知、魔力倉庫のスキル効果を併せ持つ。


やっぱりチートだよね。多分魔王討伐の伝承に残ってるジョブが幾つかあるけど、それぞれに専用スキルがあると思われる。因みに、希望の徒スペースの効果の一つの魔力完全感知は、一種の魔眼のようなもので、魔力を完全に可視化して捉えられるらしい。まぁ、こんなの持ってたらそりゃ見つかるわ。あと、魔力倉庫はその名の通り、自分の余剰魔力をためておいて、必要に応じて引き出すことができるスキルなのだとか。便利そうなスキルだ。こちらの全知の書庫アカシックレコードが完全に後方支援に特化したスキルなら、希望の徒スペースは、前線で戦うためのスキルといったところか。どちらにせよ、チートな事には変わらんだろう。

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