第13話 婚約者と挑戦

 こんにちは、トラウです。

 やりました、私は遂にやりました。これまで3年間文通を続けた一目惚れの人と、婚約をすることになりました。やったぜ。そこで今一度あって話をすることになったのだが、その準備にてまどっている。やっぱり好きな人の前なので、おめかししたいじゃん?ただ、僕は前の世界でも、この世界でもオシャレに無頓着だった。つまり、どんな格好をすればいいのかが全くわからない。

 ということで、やって参りました、母の元へ。少なくとも僕よりはオシャレに詳しいはずだ。


「母上、今度のハルミヤ家の方との面会の時、オシャレしたいんですが、そういう文化に疎く全く分からないので、手を貸していただけませんか?」


「あら、トラウもそういうの気にするようになったのね。嬉しいわぁ!お母さんに任せてちょうだい。トラウをカッコ良くしてあげる!」


「ありがとうございます、助かります。」


 流石母上だ。こういう時は頼りになる。


「じゃあ、こういうのはどう?」


 そう言って母上が出てきた服はどう見てもドレスだった。


「わたしが子供の頃着てたのー。サイズはほぼ同じなはずよ。」


「母上、ふざけないでください。こっちは真剣にたのんでるんですからぁ。」


 母上は頼りになるのだが、こういう茶目っ気があるので、任せっきりにはできない。


「しょうがないじゃない、トラウ綺麗な顔してるし、しっかりと着付ければ絶対似合うとおもったのよぉー。」


「はいはい、それはわかりましたから、真剣にお願いします。」


「わかったわよ、じゃあこんなかんじはどう?」


 母上は1枚の紙を渡してきた。そこには綺麗な服の絵が書かれていた。何気にうまい。母上は大体のことをそつなくこなすので、尊敬する。

 そこに描かれているのはワイシャツにベストと、ネクタイのようなもの、そしてスラックスのようなズボンだった。


「私がデザインしたのよ、どうかしら。」


「はい、かっこいいと思います。」


 母上のデザインとは驚いた。前世の学校の制服に似ていて見慣れているのもあり、いいなぁと思ってしまう。こちらの世界の服はまさに中世貴族ような服が主流だ。それと比べると、着慣れているし、多少気が楽だ。


「じゃあ、これでいいかしら?」


「はい、大丈夫です。」


「じゃあこれにするわね。知り合いの腕のいい仕立て屋に仕立ててもらうから、あとで採寸だけさせてね。あと、お母さんはこれも着てほしいな。」


 そうやって出してきたのはやっぱりさっきのドレスだった。


「着ません‼」


 そう語勢を強め宣言すると、少し残念そうな顔をする母なのであった。


   ♢ 

 僕は今訓練場にいる。魔法の練習中だ。いつもは一丁しか持たない拳銃型の杖を両手に一丁ずつ持ち、二丁拳銃スタイルでやってみている。一丁ならほぼ百発百中というレベルまで鍛えたのだが、今回は全く的に弾が当たらない。跳弾と近距離なのに精密射撃まで使って的に当たるかな?という感じ。浪漫にかられ、二丁拳銃を試したものの、全く駄目だったので、とりあえずあきらめることとする。


 次は、魔力操作の練習。多分魔力操作能力は国内最高峰の技量を持っていると思われる。先生が国内五指に入る魔力操作能力を持っているらしく、それを上回る僕の技量はトップだろうとのことらしい。ただ、僕はまだ納得できていなかったりする。新しく開発した魔術刃は、発動自体にかなり精密な魔力操作を要するのだが、それ故、僕はまだ発動までに六秒以上かかる。これではいざというときに使えなくて困る運命がみえる。という事で、いまだに訓練を続けているのである。もちろん、魔力増強の訓練も兼ねているが。

 因みに、今日の訓練の内容は、魔法の並列起動である。勿論のごとく、並列起動にはかなりの魔力操作能力と、潤沢な魔力が必要となる。つまり、訓練にはうってつけな方法なのだ。練習しているときの、魔力弾バレットが背後にずらっと並ぶ様相は、どこぞの英雄王の王の〇宝ゲー〇オブバビロンさながらである。オタクとして、この技術は見逃せなかったのだ。因みに、魔力弾バレットは自由に形を造形できるので、ほぼ完全に王の〇宝ゲー〇オブバビロンの再現もk脳だったりする。


 そんなこんなで、訓練をしていると、後ろから先生が近づいてきた。


「トラウの魔法制御能力はいつ見ても化け物だな。私がこんなのに魔法を教えているのかと思うと、何とも言えぬ気持ちになってしまう。」


「先生、こんにちは。もう訓練の時間ですか?」


「ああ、今日は魔法適正の進化について教えておこうかと思ってな。私と比べても魔力量は多いし、制御能力も上だ。そんなお前ならできるんじゃなかろうかと思ったのだ。」


「魔法適正の進化とは?」


 気になったので聞いてみることにする。


「トラウの魔法適正は水、氷、無、創造だな?水は上位属性が出てるからいいとして、無はまだ上位属性、入手できてないだろ?その場合、基本属性の魔法に対し2~5倍の魔力を注ぎ込んで起動すると、上位属性が発現するんだ。まだ理由はわからないがな。」


 そんな方法があったとは、まったくもって知らなかった。全知の書庫アカシックレコードで調べたとしても、インターネットのように関連検索はできない。そこが若干不便だなと考えていた。すると、先生から


「それで、やってみないか?かなりの技量と魔力量が要求されるがゆえに、成功する奴が少ないんだ。因みに私はその方法で音属性を使えるようになったぞ。」


「火属性はやらないんですか?」


「うむ、やろうとしたのだが、成功しなかった。もしかしたら、無理やり増やせる量には限りがあるか、一回ごとに必要とする魔力量が増えていくかだな。」


 ふむ、試してみたいが、基本属性で上位属性の適正なしの属性は、無だけだしなぁ。まぁ、とりあえず音魔法の適正を得ることにしよう。


「因みに、失敗するとこのあたり一帯吹き飛ぶ可能性もあるから、しっかり気張っていけ。まず、トラウの制御能力で失敗することは無いだろうがな。」


 とんでもなく不吉なことをサラッと言い放ったが、信頼の現れという事にしておく。


「分かりました、じゃあ行きます。」


 無属性の基本魔術、魔力誘導弾マジックミサイルを発動する。無属性では珍しい攻撃用の魔法だ。お手軽で、牽制用によく使われる魔法、魔力操作次第でホーミングさせることもできる。

 その魔法に、いつもの何倍もの魔力を注ぎ込む。すると、急に魔法が変質し始めた。魔力誘導弾マジックミサイルが、膨れ上がっていく。


「おいおい、魔力込めすぎだろう。」


 そんなことを先生は言っている。

 魔法を発動すると、


 周囲にとんでもない衝撃波が放たれた。


「あれ?また僕何かやっちゃいました?」

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